2025年 9月10日公開

一歩先への道しるべ ビズボヤージュ

あなたの知らない大塚商会・第5回

企画・編集・文責:日経BP総合研究所

なぜ大塚商会が災害対策に取り組むのか
自治体への「現場密着」だからこそ見える課題

「あなたの知らない大塚商会」の第5弾のテーマは「災害対策」。オフィス向けソリューションを提供する同社とは距離があるように感じるテーマに、なぜ取り組むことになったのか。これまでの取り組みから、どのような課題を感じているのか。災害対策事業を推進する渡邊賢司上席執行役員に聞いた。(聞き手は、菊池 隆裕=「一歩先への道しるべ」編集長)

――なぜ大塚商会が自治体の災害対策に取り組んでいるのでしょうか。

渡邊賢司氏(以下、渡邊) 大塚商会はもともとIT関連の製品だけでなく、「たのめーる」を通じて災害対策製品を販売してきました。2021年からは創業60周年記念事業の一環として、14自治体に災害対策製品を寄贈しています。

寄贈したのは非常用LPガス発電機「RAYPOWER 3kVA」とWOTA社の「水循環型システム」です。実際に寄贈を始めてみると多様な災害対策製品が存在していることがわかり、この分野でも事業展開できる可能性が見え、本格的に取り組みを開始しました。

――当初はどのような反応があるのか不安もあったのでは?

渡邊 そうですね。まずは当社で公共・自治体向け事業を担当する部門へ相談するところから始めました。ただし当社の営業が訪問している窓口がIT部門だったため、自治体の災害危機管理対策担当者とは接点がなく、訪問しても誰にも取り次いでもらえない状況が続きました。そのためメーカーであるLPガス発電機、水循環型システムの担当者と私の3人で、自治体を直接訪問することにしたのです。

自治体向け災害対策事業は「訪問しても誰にも取り次いでもらえない状況」から始まった
(撮影:加藤 康)

――ある意味、飛び込みに近かったのですね。

渡邊 はい。当社の商圏ではない地域も多く、中でも四国はこれまでまったく手をつけていませんでした。ほとんど認知がない状態からメーカーの方に担当者を紹介してもらい、その担当者と話を進めるような状態です。実際に訪問し、現場の担当者は理解を示しても、そこからボトムアップで提案をエスカレーションせねばならず、なかなか進展しないことがほとんどでした。

宇和島市長との出会いが転機に

――潮目が変わったきっかけがあったのでしょうか。