この記事は全2回シリーズの前編です。後編は下記よりご覧ください。
コロナ禍を境に、社会全体はデジタル化の大きな一歩を踏み出した
――企業規模を問わずDXへの注目は高まっていますが、特に中小企業はその取り組みに苦労している部分が多いと聞きます。森戸さんは実態をどう見ていますか。
森戸 DXを進めるという観点では、3年ほど続いたコロナ禍が大きな転換点になったと思います。一例として、地方の中小企業と地方自治体や金融機関などとの関係が挙げられます。
コロナ禍前には、自治体や金融機関はコンプライアンス等を理由に、デジタルの活用にあまり積極的ではありませんでした。自治体や金融機関は、地方の多くの中小企業にとってやりとりする機会の多い取引先です。このような環境では、仮に中小企業の経営者がデジタル化の重要性に気付いていたとしても変革はなかなか進みません。
しかし、コロナ禍に入り仕事の仕方は大きく変わりました。その最たるものは、打ち合わせです。対面で話すことができなくなり、誰もがいや応なしにオンラインを活用するようになったのです。しかもやってみたら「オンラインでも問題なく打ち合わせができる」ということに、多くの人が気付く結果となりました。
私はこれからの時代のビジネスにおいては「共有」や「連携」が重要なキーワードになると考えています。今や多くの人が持っているスマートフォン。専門的な知識がなくても扱えるWeb会議ツールやSNS。これらを使いこなすことが、共有や連携を進める一歩となるのは間違いないでしょう。
――とはいえ、情報処理推進機構(IPA)が発表した「DX推進指標 自己診断結果分析レポート(2022年版)」によると、自社のDX推進指標を「具体的な取り組みに至っていない」と自己評価した企業が調査企業486社中の19%を占めたそうです。
森戸 多くの人は、自然に生活の中に浸透したスマートフォンをデジタルツールだと認識していないのかもしれないですね。実際にはスマートフォンをある程度使いこなせるレベルのリテラシーがある人は、既にそれなりの取り組みをしているはずなのですが。
ただし、多くの人が、データを共有・連携した後のビジネスへの展開がイメージできていないという課題は確かにあります。この点については、コミュニティーの中で誰かがリーダーシップを発揮して取り組みを進めていく必要があるのだろうと思います。
共有と連携が中小企業の飛躍のきっかけに
――DXの進み具合は、都市部の企業か地方の企業かによる差もありそうです。