この記事は全2回シリーズの後編です。前編は下記よりご覧ください。
あうんの呼吸、暗黙知はもはや通用しない
――チームワーキングに実際に取り組むには、どのように進めればよいですか。
中原 自らのチームをチームワーキングの状態に導くには、三つの行動原理があります。
一つ目は「ゴール・ホールディング」、目標を握り続けることです。チームを動かすためには、最初にゴール(目標)を設定します。しかし、いったん目標を設定し、安心していると、日々刻々と環境が変化する中で、メンバーの認識にブレやずれが生じ、次第にゴール・ホールディングがなされていない状態に陥ります。
目標を握り続ける状態をつくるには、例えば、会議の最初や最後に毎回、目指すゴールは何か、実現したいことは何かを全員で確認し合うことが必要です。
私もマネージャーの経験があるので分かるのですが、リーダーはついつい「この間、言ったよね」と言いたくなってしまいます。しかし、「この間、言ったこと」は全部忘れ去られているという前提に立ち、辛抱強く言い続けることが大事なのです。
二つ目は「タスク・ワーキング」、動きながら課題を探し続けることです。チームで目標を設定したら、次は、目標を達成するための課題解決を行うフェーズに入ります。ここで言う課題とは、設定された目標(理想)と現状とのギャップを指し、そのギャップを埋めることが課題解決です。しかし、「解くべき課題」を見つけることは容易なことではありません。
「解くべき課題を設定したら、あとはアクションあるのみ」とばかりに取り組んでも、課題が間違っていたら、目標とずれた方向へ進んでいってしまいます。多くの場合、メンバーは「何となく、このやり方だと駄目だろう」と気付いているのですが、「言うのが面倒くさい」とか、「言うと怒られるから、言わない」となり、いつまでたっても課題解決に至らないチームを数多く見てきました。
タスク・ワーキングとは、最初は“仮決め”でもいいので大まかな課題の方向性を定め、何らかの探求を行ってみて、折に触れて振り返り、修正して、またやってみるという、仮説検証を繰り返すプロセスです。
そして三つ目は「フィードバッキング」、チーム全員で相互にフィードバックし続けることです。チームの状態や各メンバーの行動、成果などについて思っていることを、耳の痛い話も含めて伝え合うことです。
日本の職場にはもともと、長期的に形成された人的ネットワークの下、必要以上のコミュニケーションを取らなくてもチームの暗黙知が共有され、お互いを理解し、察し合う文化があり、あうんの呼吸で作業をすることができていました。
しかし、同質的な人材が集まり、あうんの呼吸や暗黙知で仕事を進めてきた日本のチームが機能しなくなっている現状を見れば、双方が思っていることを相手に伝え合い、お互いにフィードバックし合うべきだと考えるのは当然のことです。
わずか5分のフィードバックで、チームは大きく変わる
――三つの行動原理に基づいてチームワーキングを実践するに当たり、注意点やポイントなどがあったら教えてください。