この記事は全2回シリーズの後編です。前編は下記よりご覧ください。
ペーパーレスなど、できるところからまずやること
――IT化を進めるにあたり、具体的にはどこからどのように手をつけていけばよいのでしょうか。
角田 中小企業の方々に、すぐにでも着手してほしいのが、情報セキュリティ対策とバックオフィス業務の高度化です。
情報セキュリティ対策としてすべきことは、PCを常に最新の状態に更新することと、PCにウイルス対策ソフトを導入することです。この二つの対策を実行するだけで、マルウェアを99.999%防ぐことができます。
バックオフィス業務の高度化については、ペーパーレスや脱ハンコ、キャッシュレス、ワークフロー化、電子保存といった業務について、できるところから順次、対応することです。
IT施策は、実装して初めて分かることも多いですから、まずはあれこれ考えずにできそうなところからやってみることです。そうすれば、自然とその次にやるべきことが見えてきます。
IT施策の結果を受けて社内体制を整理したり、役割を見直したり、社内に浸透させたりといったことを繰り返す中で、社員が「ITによって会社が変わっている」と徐々に実感できる雰囲気にしていくことが、実はとても大切なのです。
IT化のためのコストは、補助金や助成金の活用をおすすめします。国を挙げてIT化を推進している昨今、IT関連の補助金や助成金が多数ありますから、これを利用しない手はないですね。
申請は少し複雑ですが、自治体や商工会議所、市役所などで申請をサポートしているので、積極的に活用すべきです。
――デジタル人材として中高年社員を活用することについて、どのようにお考えですか。
角田 本人が望まない限り、中高年の社員にプログラミングやデータ分析などのリスキリング教育をする必要はないと考えています。なぜなら、彼らが活躍できる領域は別のところにあるからです。
実は、中小企業がIT化を推進する上で最も重要なのが、「専任のシステム担当を置くこと」ですが、この役割にこそ適任なのが中高年のベテラン社員なのです。
システム担当は、社内のIT化の旗振り役、そしてアウトソース先との窓口となることが主たる役割です。必ずしもプログラミングなどのスキルを持っていなければならないわけではありません。社内にITの導入による効果を語り、使ってもらうよう説得する役割なので、シニア層やベテラン社員が向いているのです。
システム担当というと、「ITに詳しい若手」というイメージがありますが、IT化には反対する人もいますから、時に「嫌われ役」になる場合があります。若手には骨が折れる仕事であり、社内に顔が利く中高年の社員の方がうまくいくケースが多いですね。
ITベンダーに頼るのはありだが丸投げは絶対NG
――中小企業が「2025年の崖」問題に対応するための組織を内製化するのは現実的ではないとのことでしたが、ITベンダーとはどのように連携して進めるのがよいのでしょうか。