この記事は全2回シリーズの後編です。前編は下記よりご覧ください。
まずは「知的財産のニュースに目を通す」ところから
――知的財産戦略に取り組む際に、経営者はどのような役割を果たせば良いのでしょうか。
﨑山 企業経営において知的財産戦略の重要性は高まっていますが、「法律の話は難しそう」「学ぶ時間がない」と感じて、つい後回しにしてしまう経営者も少なくありません。しかし、経営者が興味を持たなければ何も始まらないので、身近なところから知的財産について知ってほしいと思っています。
経営者に求められるのは、細かい法律の知識ではなく、「これは知的財産の視点で考えた方がよさそうだ」と思える嗅覚を養うことです。
例えば、経済誌やビジネス誌を読んでいるなら、「特許」「商標」といったキーワードを登録して、知的財産関連のニュースを目にする機会を増やすのは一つの方法です。それだけでも知的財産の重要性が分かってきますし、「こんなところに知的財産が関係するのか」といった視点が養えます。
知的財産は、専門家に任せる類いのものではなく、経営戦略の一部です。知的財産をうまく活用すれば、競争優位性が確立でき、市場でのプレゼンスを強化できます。
社内を見回して、自社の技術や事業の独自性を再確認し、知的財産をどう活用できるのかを考えてみましょう。自社ならではの技術やノウハウに興味を持つことが、知的財産戦略を経営に生かす第一歩になります。
――これから知的財産戦略に取り組む場合、まず何から始めれば良いのでしょうか。
﨑山 知的財産戦略をゼロから始める中小企業にとって、最初に必要なのは、知的財産に興味を持つことです。経営者だけでなく会社全体でその意識を共有したい。社員一人一人が「知的財産とは何か」「自社でどう活用できるか」を理解することが求められます。
最初の段階で有効なのは、事例に触れることです。知的財産の事例には興味深いニュースがたくさんあります。
例えば、せっかくヒット商品を生み出したのに、権利に関する知識がなかったために他社に商標を取られてしまった、といった「しくじり系」のお話です。また、人気のアニメや戦隊もののタイトルが、シリーズ開始の半年ほど前に商標登録されていることから、次のシリーズ内容や関連商材を予想して盛り上がるSNSもあります。
まずは自分の興味に合う分野の事例に触れることで、知的財産が身近なテーマであることを理解しやすくなります。
その上で、得た知識を共有する機会をつくることが重要です。社内で定期的に勉強会や事例を共有する場を設けましょう。そうすることで、自然と「この新商品は商標を取っておいた方がいいのでは?」といった意識が生まれるはずです。

勉強会で知的財産戦略に関するニュースや事例を共有。定期的に開催することで、会社全体に少しずつでも必要な意識を醸成していける。
知的財産戦略を成功させるコツは、「完璧を求め過ぎないこと」
――知的財産戦略に取り組む際にはどのようなスキルを持つ人材が必要になりますか。