2025年11月 4日公開

有識者に聞く 今日から始める経営改革

AI時代にこそ最強の学問! 統計学をビジネスにどう生かすか(前編)

企画・編集:JBpress

統計学で企業はどう変わる? 経験からデータへと進化する経営の今

経験や勘では読みきれない複雑な市場の動きを可視化し、検証するための手法として統計学が有効だ。統計学を学ぶとビジネスはどう変わるのか、意思決定にどのような形で役立てられるのか。シリーズ累計50万部超というビジネス書では異例のベストセラーとなった「統計学が最強の学問である」の著者で、データサイエンスの第一人者としても知られるソウジョウデータ代表取締役の西内啓氏に聞いた。

この記事は全2回シリーズの前編です。後編は下記よりご覧ください。

  • ※ 11月18日公開予定:AI時代にこそ最強の学問! 統計学をビジネスにどう生かすか(後編)

これからのビジネスに統計学が必要な理由

――なぜ、企業にとって統計学が重要なのでしょうか。

西内 統計学は、一言で言えば、意思決定の精度を上げるための方法です。ビジネスの現場では常に難しい選択を迫られます。こうした場面で、経験と勘に頼るのではなく、データに基づいて選択肢を検証できるのが統計学です。

統計学にはデータを通じて人の行動や思考を読み解き、企業の課題を見える化し、改善の方向を示す力があります。膨大なデータを収集できるようになった今、課題解決の方法をさまざまな視点から探り、事実に基づいて判断できるようにするために欠かせない学問が統計学なのです。

統計学を使うことで、例えば今まで注目してこなかった販路が実は有望であることが分かったり、これまで思いつかなかった勝ちパターンを発見したりといったことが可能になります。

――生成AIなどの技術の進化によって統計学の導入のハードルは下がっているのでしょうか。

西内 生成AIの登場によって、そのハードルは大きく下がっています。統計学やデータ活用が進まない背景には、これまで「分析できる人材がいない」という構造的な課題がありました。生成AIを使ってプログラムを書けるようになったことで、やる気さえあれば中小企業でもデータ分析に取り組める環境が整いつつあります。

一方で、技術の進化が進んだ結果、より重要性を増しているのが「問いを設計する力」です。これからのデータ分析では、経営者や意思決定層が「何を知りたいのか」「何を改善したいのか」を明確に言語化し、分析に落とし込む力が求められます。過去の経験から得た「粗い問い」を勘で立てて、部下に丸投げして調べさせているようでは、過去の経験を納得させる答えしか返ってこなくなります。この「問いの設計」と「分析の理解」の双方で役に立つのが統計学の知見です。