2026年 2月17日公開

有識者に聞く 今日から始める経営改革

コミュニケーション不全を解決する「哲学対話」(後編)

企画・編集:JBpress

HowではなくWhyの視点を。まずは課題に対する解像度を高めることから

課題を「どうすれば(How)」という視点で考えるのではなく、「そもそも~とは(What)」「なぜ(Why)」と問いを立てて考えることで、コミュニケーション不全の解決につながる「哲学対話」。社内に取り入れるためには、どんな点に配慮し、どこからスタートするべきか。「哲学」と「対話」によって組織力の最大化を支援するコンサルティングも手掛ける東京大学共生のための国際哲学研究センター上廣共生哲学講座特任研究員の堀越耀介氏に聞いた。

この記事は全2回シリーズの後編です。前編は下記よりご覧ください。

現場が納得する導入の進め方

――組織に「哲学対話」と「共通言語化」を取り入れるに当たって、経営層・管理層にはどのような心構えが必要ですか。

堀越 まずは経営層・管理層自身が、哲学的にさまざまな前提や意義を問い直すことの必要性や切実さを自覚する必要があると思います。

経営者が「この取り組みは本当に必要だ」と心から納得していなければ、哲学対話は一時的なイベントで終わってしまい、文化として定着しません。導入に当たっては、ミッション、ビジョン、バリュー、パーパスといった企業の根幹に関わる要素を問い直すくらいの覚悟が求められます。

――まず何からスタートすればよいですか。

堀越 大切なのは、自分たちが抱えている課題の解像度を上げることです。私は企業からその会社が抱える課題について相談を受ける機会がありますが、丁寧に話を聞いていくと、表面に見える課題の奥に、より根本的な問題が隠れていることが少なくありません。だからこそ、最初に行うべきは、課題を解きほぐすことなのです。

そして、その課題をすぐに「どうすれば(How)」で解決しようとするのではなく、「そもそも~とは(What)」や「なぜ(Why)」という問いに置き換えて考えることが重要です。例えば新規事業のチームであれば、「新しいものをどうつくるか」ではなく、「そもそも新しいとはどういうことか」「つくるとはそもそも何をすることか」と問いを立てていく。こうして抽象度を少しずつ上げながら、哲学的に考えるための土壌を整えていくことが出発点になります。

ただし、そのためには、なぜ哲学的に考える必要があるのかを丁寧に説明することが欠かせません。現場の方々は日々忙しく、「哲学なんて意味があるの?」と感じる人も多いでしょう。トップダウンで強制するのではなく、理解を得ながら進めることが大切です。

もう一つ重要なのが、「場のデザイン」です。哲学対話は、会議室ではなく、ラウンジやカフェスペースのように、リラックスして考えられる環境で行うのがおすすめです。会議室は、課題を短時間で解決する場所として認識されやすく、参加者の思考が日常モードのままになりがちだからです。

また、座り方にも工夫が必要です。上座・下座のない円形の配置にすることで、誰もが対等に発言でき、自然と安心感のある対話が生まれます。哲学はそもそも、誰かが特権的に答えられるような正解のないものだからこそ、哲学対話では、新入社員も経営者も同じ立場で「考える」という営みに参加できます。

こうした誰もが対話の一部になれる構造こそ、哲学対話の最大の価値です。組織に導入する際は、まず、フラットで安全な思考の場を意識的につくること。それが哲学的思考を組織に根付かせるために不可欠なのです。

導入に効くフレームワークとは

――共通言語を構築するために役立つフレームワークがあれば教えてください。