2026年 6月16日公開

有識者に聞く 今日から始める経営改革

収益力と企業価値を高める「デザイン経営」の可能性(後編)

企画・編集:JBpress

品質だけでは勝てない。知っておきたい日本のデザイン事情と実践のヒント

「デザイン経営」は企業価値を向上させる経営手段として、世界的に注目されている。しかし、日本ではマーケティング主導の製品開発が横行し、消費者も、“かたち”より壊れにくさなどの品質に固執する傾向が強い。こうした中で、デザイン経営を実践していく意義は何か。デザイン経営の実践において障壁を越えるヒントや継続するためのポイントを、前編に引き続き、中部大学人間力創成教育院講師の小山太郎氏に聞いていく。

この記事は全2回シリーズの後編です。前編は下記よりご覧ください。

「デザイン経営」を始めるための具体的なステップ

――デザイン経営を実践するに当たって、まず何から始めるべきでしょうか。

小山 いきなりデザイン経営と言われても、自社単独で手掛けるのは容易ではないかもしれません。そういう場合は、行政が推進しているデザイン経営支援プログラムに参加してみるとよいでしょう。経済産業省の出先機関や地方自治体などが、各地でデザイン経営支援事業を展開しています。

まずはそういう場で基本を押さえたうえで、デザインプロジェクトを走らせ、記録を取ってアーカイブすることです。その後も同様にデザインプロジェクトを立ち上げ、回していってアーカイブが蓄積されていけば、それが将来の製品開発の種になっていきます。

――デザインプロジェクトを回していく際に留意すべきことはありますか。

小山 デザインプロジェクトを独立させて、その責任者に全権を委任することです。特に日本では、企業の中で強い権限を持った営業や製造部門の意見を反映したモノづくりが一般的です。デザイン責任者やデザイン部門に権限がないと、当初のデザインコンセプトがねじ曲げられて最終製品に反映されません。デザインを重視する組織へと変えていくためには、経営者自身がデザインやアートに関心を持ち、さらにデザインが分かる中間管理層も育てていく必要があります。

もちろん、最初は外部からデザイナーやコンサルタントを招いて、徐々に社内のデザイン人材を育成するのもよいでしょう。最近では、モノづくり企業と外部のデザイナーが従来の発注者と受注者という関係を越え、パートナーとして開発を推進してこれまでにないデザインを生み出す事例も増えています。

3次元の感覚に疎い日本のデザイン事情

――日本企業がデザイン経営を推進していくに当たって、どんな障壁がありますか。