2019年 9月

仕事効率を上げるパソコン手帖

Wi-Fi 6、メッシュWi-Fi、MU-MIMO……最新無線LAN用語に詳しくなる

テキスト/芝田隆広

スマートフォンやタブレットの普及で、無線LANはいまや誰にとっても必須といっていいほどのインフラとなっている。それだけにさまざまな新製品が続々と登場しており、技術の進歩も早い。そこで今回は、最新の無線LAN事情を知るために押さえておきたいキーワードを紹介していく。

最新技術が続々登場! 無線LAN最新事情

無線LANは、いまやパソコンだけでなくスマートフォンやタブレットのほか、AIスピーカーなどのスマート家電に至るまで、ありとあらゆる場面で必須のものとなっている。既に日常の一部となっているので、あまり意識しないで使っている人も多いだろう。

今回は無線LANの最新事情について解説していくわけだが、無線LANの基礎の部分については過去の連載(知ってるようで知らない? 無線LANの基礎知識)でも紹介しているので参照してもらいたい。当該記事は2015年のものなので、今回はそれ以降に一般的になってきた事情や用語を取り上げていく。

知ってるようで知らない? 無線LANの基礎知識

なお、無線LAN機器を見ていると「Wi-Fi」という用語をよく見かける。「無線LANとWi-Fiって違うものなの?」と疑問に思うかもしれないが、この二つは若干異なる。無線LANは、「ケーブルなしでLANを構築するシステム」全般を指す。「Wi-Fi」は無線LANの規格の一つで、「Wi-Fi Alliance」というアメリカ合衆国に本拠を置く業界団体が認定したもののみを指す。

現在販売されている機器のほとんどが「Wi-Fi Alliance」の規格を満たしているため、「無線LAN」=「Wi-Fi」と考えてもほぼ問題はないのだが、厳密には違うものだということを覚えておくといいだろう。

「Wi-Fi」は、「Wi-Fi Alliance」という組織による無線LANに関する登録商標。「Wi-Fi Alliance」の認証を受けると、画面のようなWi-Fiロゴを使用できる。Wi-Fiの認証を受けていない無線LAN製品は、機能的には同じでも「Wi-Fi」を名乗れない

引用元:Wi-Fi認定|Wi-Fi Alliance(https://www.wi-fi.org/ja/certification)

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より隅々まで電波が届く「メッシュネットワーク」

最近の無線LANルーターでもホットなトレンドが「メッシュネットワーク」(メッシュWi-Fi)への対応だ。これは建物内などで、電波がより隅々まで届くようにする技術のことをいう。

自宅などで無線LANを使っているときに「リビングではよくつながるけど、自室では電波が弱かったりつながらなくなったりする」といった現象を体験したことがある人は多いだろう。これは無線LANルーターの電波が、家具などの障害物にジャマされたり、ルーターとの距離が離れたりするなどして、電波が弱くなっているために起きる現象だ。

メッシュネットワークでは、無線LANルーターを家や建物内に複数個設置し、ルーター間で相互に通信をすることにより、網目状のネットワークを構築する。これにより電波を届きやすくしてくれるのだ。

メッシュネットワーク対応の無線LANルーターは、親機と子機がセットになっており、親機をインターネットに接続する。そして例えば親機を1階に、子機Aを2階の書斎、子機Bを玄関……などというように配置しておき、親機や子機同士がそれぞれ通信し合うことで、より広い範囲をカバーできる。

メッシュネットワーク対応の無線LANルーターでは、親機と子機がそれぞれ相互に接続することで、網目状のネットワークを構築して、より広い範囲をカバーする

従来は、スマートフォンやパソコンなどの端末を直接無線LANルーターに接続していたが、これだとルーターの設置場所によって、どうしても電波が届きにくい場所ができてしまう。メッシュネットワークであれば、親機の電波が届きにくい場所でも子機がカバーしてくれるため、どこからでも快適に接続できるわけだ。

また、従来も無線LAN中継機と呼ばれる機器はあったが、これらは中継機と親機の間でしか通信できない。そのため中継機と親機の距離が離れると、接続した端末でも快適な通信が行えなくなる。メッシュネットワーク対応機器の場合は、子機→子機→親機のような形で、子機を経由して通信範囲を広げられるため、より広いエリアをカバーできるのだ。

写真はバッファロー製無線LANルーター「WTR-M2133HP/E2S」。メッシュネットワークを構築するための親機(WTR-M2133HP)と子機(WEM-1266)がセットになっている

バッファロー 無線LAN AirStation connect トライバンド親機1台 中継機2台 WTR-M2133HP/E2S 1セット(オフィス用品の通販サイト「たのめーる」が開きます)

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端末が複数台あってもスムーズに通信できる「MU-MIMO」

「MU-MIMO」は、複数台の端末から無線LANを利用しても、より高速かつ安定した通信をするための技術だ。

MU-MIMOでは、「ビームフォーミング」という技術が使われている。通常の無線LANルーターは、ルーターから電波を全方位へと放射する。これだとその電波を利用する機器が存在しない場所にも満遍なく電波を飛ばすため、電波干渉が起こりやすかった。「ビームフォーミング」を使うと、ビームフォーミング対応の端末へ集中的に電波を放射する。これによってより効率的な電波の送受信が可能となった。

MU-MIMOは、複数台の端末と同時に通信できる技術だ。従来の通信(SU-MIMO)は、「端末A→端末B→端末C」といった具合に、電波干渉が起きないよう、端末1台1台のタイミングをズラしながら通信していた。要するに、同時に通信できるのは1台で、それを高速に切り替えながら通信を行っていた。一方、MU-MIMOだと電波干渉が防げるので、複数台の端末と同時に通信しても大丈夫。そのため、複数台の端末が同時に通信しても、それぞれの端末に待ち時間が発生せず、よりスムーズな通信が行えるようになったわけだ。

MU-MIMOでは「ビームフォーミング」によって電波干渉を防ぎ、複数台の端末と同時に通信できるようにしている

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3種類の電波帯で安定した通信を実現する「トライバンド」

「トライバンド」とは、名前のとおり「トライ(三つの)バンド(周波数帯)」で通信を行う技術のことだ。

これまでの無線LANは、「2.4GHz帯」「5GHz帯」と呼ばれる2種類の周波数帯の電波を使った「デュアルバンド」が主流だった。これを3種類に増やしたのが「トライバンド」だ。例えていうなら「道路を2車線から3車線に増やす」ようなもの。車線が増えれば多くの車が快適に通行できるのと同じように、通信もよりスムーズになる。

トライバンドでも、デュアルバンドと同じ2.4GHz帯と5GHz帯を利用するのだが、5GHz帯については「W52・W53」と、「W56」という2種類を使う。細かな電波の知識までは必要はないが、要するに、ここでは「トライバンドの方が、よりたくさんの機器をつないでも安定した通信が行える」と覚えておけばいいだろう。

トライバンドに対応したルーターでは、3種類の周波数帯を使って、よりスムーズな通信を実現する

「メッシュネットワーク」「MU-MIMO」「トライバンド」は、いずれも無線LANの通信をよりスムーズに行うための技術なので、同じように思えるかもしれないが、それぞれの概要や効果などは異なる。整理すると以下のようになる。

無線LAN概要効果
メッシュネットワーク親機と複数の子機間で、お互いに通信して網目状のネットワークを作る建物などの隅々まで電波を届きやすくする(電波の届きにくいエリアを減らす)
MU-MIMOビームフォーミングで電波を対応端末に集中的に送信、複数台と同時に通信できるようにする複数台の端末が同時に通信できるようにすることで、それぞれの端末の通信をスムーズにする
トライバンド3種類(2.4GHz帯×1+5GHz帯×2)の電波を利用して通信を行う電波帯を分けて、電波帯ごとの通信量の集中を緩和し、複数台の端末とスムーズに通信を行う

無線LANを快適に使えるようにするための技術は幾つかあるが、それぞれ行っていることは異なる

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通信する電波帯を自動で切り替える「バンドステアリング」

最近の無線LAN機器は、「2.4GHz帯」「5GHz帯」の周波数に対応したものが増えている。このうち5GHz帯を使うほうが、2.4GHz帯より快適に通信できる場合が多い。「バンドステアリング」機能とは、通信の混雑状況を判別して、空いている周波数帯へ無線機器を自動的に誘導する機能のことだ。

2.4GHz/5GHz両対応の端末が2.4GHz帯で接続していると、2.4GHz帯が混雑してしまい、2.4GHz帯しか利用できない端末の通信が遅くなってしまう。そこで両対応の端末を検出した場合に、空いている5GHz帯に誘導すれば、2.4GHz帯の混雑が防げる。

例えていうなら、歩行者と自転車が両方とも歩道を歩いていると混雑するので、自転車を「自転車専用道路」に誘導するような仕組みだ。これによって歩行者と自転車の干渉が防げる。同じように2.4GHz/5GHz両対応端末と、2.4GHz用端末の利用する周波数帯を分散させることで、より快適に通信ができるようになるというわけだ。

バンドステアリング機能は、端末を適切な周波数帯へ自動的に振り分ける機能だ。

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次世代の無線LAN規格……速くて省電力な「Wi-Fi 6」

「Wi-Fi 6」は、2020年に策定されるといわれている無線LANの通信規格のこと。これまでの無線LANの規格はIEEE 802.11acのように「IEEE 802.11」の後に「b」「g」「a」などの記号をつけて区別されていたが、分かりやすくするために新規格から「Wi-Fi 6」という名称になる。あわせて、これまでの規格も以下のように名称が変更される。

  • Wi-Fi 4→IEEE 802.11n(2009年)
  • Wi-Fi 5→IEEE 802.11ac(2014年)
  • Wi-Fi 6 IEEE 802.11ax(2020年)

Wi-Fi 6では、最大通信速度が従来のWi-Fi 5の6.93Gbpsから、9.6Gbpsへと向上。テレビなど、4K解像度の映像も快適に見ることができるようになる。また、MU-MIMO利用時の最大同時接続数も4台→8台へと増える。さらに省エネ化も図られており、より快適な通信が実現できるようになるといわれている。

このように無線LANの世界も、年々進歩してきている。無線LANは日々使うものだけに、最新機器でより快適な環境を構築したいという人は多いだろう。今回の用語解説などを参考に、ぜひ自分に合った製品選びを行ってほしい。

一部のメーカーからは、既にWi-Fi 6(IEEE 802.11ax)対応の無線LANルーターが市販されている。写真はASUS「RT-AX88U」

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