2021年 3月15日公開

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改正高年法で企業に求められる対応とは

著者:岩野 麻子(いわの あさこ)

「人生100年時代」に向けて。
人生100年時代には、若者から高齢者まで全ての国民が活躍できる場をつくり、元気に安心して暮らせる社会を実現することが重要とされています。60代、70代が当たり前に働くことのできる職場は、今後増えるのでしょうか。

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1. 高年齢者雇用安定法の改正

高年齢者雇用安定法(以下、高年法)は、2021年4月1日から65歳までの雇用確保義務に加え、70歳までの就業機会を確保するため高年齢者就業確保措置を講ずる努力義務が新設されることとなりました。

65歳までの雇用確保義務

高年法は、65歳までの雇用を義務付けています。

60歳未満の定年禁止【義務】
事業主が定年を定める場合は、その定年年齢は60歳以上としなければならない。
65歳までの雇用確保措置【義務】
定年年齢を65歳未満に定めている事業主は、以下のいずれかの措置を原則として希望者全員に講じなければならない。
  1. 65歳までの定年引き上げ
  2. 定年制の廃止
  3. 65歳までの継続雇用制度(再雇用制度・勤務延長制度等)導入

70歳までの就業機会の確保

今回の改正では、上記の点に加え、当該労働者を60歳まで雇用していた事業主について以下の措置を講ずる努力義務が新設されました。

65歳から70歳までの
高年齢者就業確保措置
【努力義務】
以下のいずれかの措置を講ずるよう努力しなければならない。
  1. 70歳までの定年引き上げ
  2. 定年制の廃止
  3. 70歳までの継続雇用制度(再雇用制度・勤務延長制度)の導入(他社での雇用を含む)
  4. 70歳まで継続的に業務委託契約を締結する制度の導入
  5. 70歳まで継続的に以下の事業に従事できる制度の導入
    a.事業主が自ら実施する社会貢献事業
    b.事業主が委託、出資(資金提供)等する団体が行う社会貢献事業

70歳までの高年齢者就業確保措置は義務でないため、3~5の場合は、労使で協議し対象者を限定する基準を設けることも可能です。

高年齢者就業確保措置の導入例

比較的導入しやすい例としては下記のようなパターンが挙げられます。
なお、今回の法改正を機に、定年年齢の引き上げや70歳以上も対象とした継続雇用制度の導入などをあわせて検討してみてもよいでしょう。

~60歳定年制度全員を対象としたもの
60歳~65歳継続雇用制度原則として、希望者全員が対象
~60歳定年制度全員を対象としたもの
65歳~70歳継続雇用制度労使協議のうえ、対象者を限定することも可能
例:過去2年間の定期健康診断結果を産業医が判断し、業務上支障がない者 など

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2. 高年齢者を雇用する際に、配慮すべき点とは

実際に高齢者を雇用するうえで配慮すべき安全の確保と健康管理について、三つのポイントをご説明します。

1.勤務時間への配慮

年齢を重ねるとともに、筋力や運動能力が低下し、個人差もより大きくなります。そのため、小まめに個々人の体調をヒアリングするなどして、労働時間の調整を行う必要があります。また、作業内容だけでなく休憩時間の長さや間隔によっても疲労感が大きく変わります。小まめに休憩を取れるよう配慮し、仕事から離れてしっかりと休息できるスペースなどがあるとよいでしょう。

また、高齢者は昼から夜、夜から昼への勤務時間の変更に体を慣らすのが難しいといわれています。従って、夜勤者へは十分な配慮が必要になるでしょう。また、何らかの疾病を抱えながら働く方も増えるため、通院のための時間を取れるようにすることも働きやすさにつながります。

2.ゆとりのある作業スピード

高齢者は、複数の業務を同時にこなすマルチタスクや長時間にわたって注意力、集中力、判断力を要する作業について、過度の負荷がかかるといわれています。特に建設業や運送業などでは、素早い判断やとっさの行動ができないと労災事故やけがにつながる可能性があります。適性を考慮するなどして、労働災害を未然に防ぐようにしましょう。

また、デスクワークにおける即応的な能力も、若年者に比べて低下している傾向にあります。従って、時間に追われるような仕事には慣れにくく、またミスを誘発する原因にもなります。自分のペースで計画的に作業できるように配慮することが重要です。

3.健康への配慮

65歳を過ぎても長く働き続けるためには、健康と体力が最も重要だといわれています。全ての高齢者の方に必ず定期健康診断を受診してもらうなど、普段から労使ともに健康管理に気を配るようにしましょう。

また、高齢者の中には持病を抱えている方もいます。屋外作業や一人で行う作業に不安がある場合などは、ウェアラブルデバイス等を利用するのも一つの方法です。それらを装着して仕事をすることで、心電図や酸素濃度に異変が起きていないか、転倒していないかなどを測定することができます。万が一のことがあれば、すぐに家族や周囲の人が気付くことができます。

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3. 高齢者が生き生きと活躍できる職場に

長く続く職業人生において、20代は気力・体力ともに十分な時期、30代~40代は能力・スキルを熟達させていく時期に当たります。50代~60代は徐々に体力等が低下していきますが、それまでに培った経験や技術を蓄積し、その能力を研ぎ澄ませていく時期だといえます。

また、仕事に対するやりがいや満足度は、年齢を重ねるごとに高くなる傾向にあるともいわれています。年齢に関係なく働く意欲のある方には、その能力を十分に発揮できる活躍の場を提供することで、人も企業も成長していけるのではないでしょうか。

  • *本記事中に記載の肩書きや数値、社名、固有名詞、掲載の図版内容等は公開時点のものです。

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