2022年 9月20日公開

【連載終了】読んで役立つ記事・コラム

変わりつつある、雇用契約とフリーランスの違いとは

著者:岩野 麻子(いわの あさこ)

かつて、雇用契約は働く時間と場所が決まっている契約、フリーランスは時間と場所にとらわれない、自由な働き方ができる契約と捉えられていましたが、働き方改革や新型コロナウイルスの影響で、この概念は変わりつつあります。

1. 法律上は異なる点が多い契約形態

働き方改革による多様な働き方を選択できる社会の実現と、感染症対策のための急速なテレワークやオンライン会議の普及で、特にオフィスワーカーの働き方は大きく変化しました。勤務先によっては、会社員だけれども、始業、終業時刻に自由度が増し、会社に出社しない働き方も選択できるようになるなど、時間と場所の制約がなくなりつつあります。

雇用契約と業務委託契約・時間とお金に関する主な違い

雇用契約とフリーランスなどの業務委託契約において、時間とお金に関する主な違いは以下の通りです。一見して双方に大きな違いはないように見えますが、契約形態の違いにより法律上の取り扱いは大きく異なります。

雇用契約
(正社員、派遣社員、
アルバイト、パートなど)
主な条件など業務委託契約
(フリーランス、個人事業主、
ギグ・ワーカーなど)
割増賃金が支給される
時間外労働には上限がある
法定時間外労働
(いわゆる残業)
労働基準法の適用がないため、時間外労働という概念がそもそもない
(割増賃金や上限は無い)
最低賃金を下回る給与は、
設定できない
最低賃金最低賃金法は適用されず、
報酬は契約によって決まる
毎月1回、定期に支払われる給与・報酬の支払い時期契約内容による
(長期の案件は半年後の
支払いという場合も)
給与所得
(会社で年末調整)
所得税の取り扱い事業所得
(自分で確定申告)
会社の経費で購入業務に必要な経費の負担契約内容による
(自己負担となる場合もある)
労災保険で治療費が賄われる
休業時の所得補償などもある
業務上、通勤途中のケガ特別加入などの制度を
利用しない限り、
労災保険は適用されない
原則として、労働時間を
会社が把握する義務を負う
勤怠管理原則として、労働時間の
管理は行われない

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2. フリーランスで働きたい人は

雇用契約とフリーランスの境界線があいまいになっているとはいえ、会社という枠組みを超えて、自ら自分の興味のある分野の仕事に関わっていけることや、自由度の高い働き方ができることは、依然として魅力的であると感じる方も多いと思います。もし、フリーランスで働くことを選んだ場合、どのようなことに気を付ければよいのでしょうか。

フリーランスで働くときに確認したいポイント

  • 交通費やソフトウェアの購入費用など、経費はどこまで依頼者に負担してもらえるのか
  • 納期やスケジュールに無理はないか
  • 報酬はいつ支払われるのか
  • 追加の作業が発生した場合、追加の費用は支払ってもらえるのか、など

フリーランスは、業務の進捗(しんちょく)管理だけでなく、自分でいろいろなことをマネジメントする必要があります。定期的に健康診断を受けるなどして、自分で自分の健康管理をしたり、過労にならないようにしたり、自分で働く時間の管理をすることも重要です。同じフリーランスとして働く仲間がいると「こんな時どうすればいい?」などと情報共有もできて励みになり、場合によっては業務で協力し合うこともできます。

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3. 契約形態にかかわらず、全員が気持ちよく仕事をするために

以前はよく経営者や人事担当者の方から、「フリーランスより自社の社員のほうが忠誠心が高い」という意見も聞かれましたが、最近では、フリーランスでも自社の経営理念に共感し、熱意を持ってプロジェクトに参加してくれるメンバーがいるなど、契約形態による熱意やモチベーションの差が無くなってきていることも多いようです。もちろん、業務によっては守秘義務や競業避止義務との兼ね合いで、雇用契約であるべき場合も多くありますし、雇用契約のほうが安心して働けるという方も多くいます。それぞれの契約の特性を理解したうえで、自分の価値観に合った働き方を選べることが一番ではないでしょうか。
また、契約形態にかかわらず、会社がそれぞれの働き手を大切にすることも重要です。働き手同士が、お互いに程よい距離感で協力し合える関係があると、皆にとって働きやすい環境となるのではないでしょうか。

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