1. アフターコロナと総務業務
新型コロナウイルスは、2020年初頭からパンデミック(世界的大流行)として世界中に大きな影響を及ぼしました。ウイルスの感染だけでなく、感染拡大予防のための休業要請や外出制限などで企業活動も停滞を余儀なくされました。日本においては、少子高齢化の観点から従来、推奨されてはいたテレワークが一挙に浸透し、多様な働き方に対応する企業が増えています。このような変化は、就業規則の改定や出退勤などの労務管理、IT・ネットワークインフラの整備など、総務部門の仕事量を増加させる要因となっています。
その結果、「テレワークを推進する立場の総務部門のスタッフがテレワークできない」とやゆされるような現象が起きている企業もあります。しかも、これからもDXなど全社的な対処が必要となる大きな変化が待ち受けていますので、企業のかじ取りを行う総務部門の重要性は高まり、業務量も増大傾向が続くことが見込まれているのです。
では、どのように対処すれば業務の軽減が図れるのでしょうか。通常、業務で問題やトラブルが発生する場合は「業務改善」もしくは「業務改革」を実行して課題解決を図ります。
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2. 業務改善と業務改革の違いとは
業務改善と業務改革は同様の意味と思われがちですが、部分的な対処と根本的な解決というように大きな違いがあります。
- 業務改革:既存の業務プロセスを廃し、新しい業務プロセスを構築する
上記の図で例えたように、業務改善はリフォームのように建物の使い勝手を良くするためにドアや壁の位置を変更したり、部屋の装飾を変えたりするといった部分的な手直しを施すことです。基本構造を変えることはありません。一方、業務改革は、建て替えと同じように既存のルールや習慣を廃止し新たな環境を構築することです。
- 業務改善
業務改善は、社会環境や業務環境の変化とともに日々最適化を図るために継続的に行います。例えば、従業員の何らかのミスでトラブルが発生した際に、間違いが起きた原因を究明し業務プロセスを変更することが業務改善となります。ほとんどの企業では、業務環境を向上する目的で日々業務改善に取り組んでいると思われます。一般的には、業務改善の頻度の高い企業は環境の変化に柔軟に対応し、高成長を実現する企業といわれています。 - 業務改革
業務改革は業務プロセスの一部もしくは全てを新しく創ることです。そのためには、全社的に検討を重ね、従業員に対しても改革の趣旨とスケジュールを周知して行うことが望まれます。古いプロセスを廃して、新しいプロセスを構築するため、従来のプロセスに慣れた従業員にとっては、抵抗や混乱が生じる可能性があります。全ての従業員が新しいプロセスがもたらすメリットを十分に理解することが不安の払しょくにつながり、改革が成功するための大きなポイントとなります。また、業務改革の実行後は、継続的に検証と業務改善を行い、改革効果を高めることが必要です。
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3. これからの総務に求められる業務改善/改革
前述したようにパンデミックや戦争、温暖化を含む環境変化など、世界的規模で変化が加速しています。国内では、少子高齢化による労働人口の減少をはじめとして、景気の停滞や物価高騰、為替の急変などの経済問題が企業経営を圧迫しています。また、首都直下型地震や南海トラフ地震、温暖化による洪水などの自然災害リスクも日々高まっています。
このような社会的なリスクに対応するために、IT技術の進化や多様な働き方の浸透など、企業の労務環境も大きく変化しています。特に、コロナ禍以降はこのような変化を実感している方も多いのではないでしょうか。そして、企業を取り巻く環境の変化に対処する総務部門には大きな負荷がかかっているのです。
例えば、テレワークのように働き方が多様化すれば、就業規則の改定はじめ、雇用契約、給与計算、出退勤などの労務管理もどんどん複雑になります。これにうまく対応していくためには以下のような方法が考えられます。
1.業務改善
- 業務のIT化(システムの導入含む)
- 規則・ルールの見直し
- 業務の簡素化
2.業務改革
- 組織・人員配置の見直し
- 業務のアウトソーシング(外注化)
- 業務のBPO(業務委託)
業務改善は部門内で対処できるため、管理職の判断ですぐに実行することが可能です。例えば、社内外の問い合わせなどで電話対応が増えて人員不足となる場合は、チャットボットを導入して労力の軽減を図るなど、IT化や業務フローの変更で解決できる場合もあります。しかし、業務改善だけでは解決できない課題も多々あるでしょう。業務効率の停滞や低下が慢性的に続く場合は、その原因を究明すること(課題の可視化)を行いましょう。
企業内で発生する慢性的な業務課題は、人員不足、施設の老朽化、低賃金など、複合的で簡単に解決することが難しい問題です。これを解決するためには、経営陣の強い意志と全社的な取り組みが必要であり、まさにこれが業務改革です。古い慣習を断ち切り新しいやり方となるため、従業員には習熟するまでの間は大きな負荷がかかります。そのため、改革のメリットを全従業員に対して十分に周知するとともに、綿密なスケジュールを立てて改革を行います。改革によって得られるメリットは大きいものがありますが、失敗して倒産の危機に陥ることもあります。そのため、改革の実行には経営者の強い意志と合わせて、慎重な検討と綿密な実施策が必要となります。
総務業務のBPO
総務業務の増大に対処する方法には、人員増以外に業務のアウトソーシングとBPOという二つの方法があります。業務のアウトソーシングは、自社で処理できない業務を外注することです。例えば、チラシを作成する際に、社内に専門的なスキルを持つデザイナーがいない場合は、デザインを外注するようなことです。印刷も社内に印刷設備がなければ印刷会社に外注することになります。このように、自社内に特定の業務処理に対応したスキルや設備がない場合はアウトソーシングして解決を図ります。
BPO(Business Process Outsourcing)は、自社の業務そのものを外部の企業に外注委託することです。アウトソーシングとの大きな違いは、アウトソーシングが業務の外注を意味するのに対して、BPOは業務プロセスそのものを外部委託することです。
例えば、上記のチラシ制作で例えると、どんなチラシを作ることが販促効果の向上につながるのか、配布のターゲットを決め、ターゲットに渡りやすい配布方法、販促効果を得るための配布部数など、企画・制作する全てのプロセスを外注することがBPOとなります。また、作るだけでなく制作後の効果検証も行う必要があるでしょう。このように組織の広報・宣伝としての機能・プロセスを含めて外部委託することが可能です。一般的に、単発的な業務処理はアウトソーシングで処理して、継続的な業務処理はBPOを検討する場合が多いようです。
総務などの事務系の部門で行われる主なBPOには以下のような業務があります。
- 受付業務(人材の募集・配置、教育・労務管理など)
- 問い合わせ業務(社内問い合わせ、コールセンター業務など)
- 給与計算(給与計算、振り込みなどの処理)
- セキュリティ管理(警備、ネットワーク・サーバー管理など)
BPOによって、直接的な人件費だけでなく教育や労務管理の負担も軽減されます。また、委託会社の専門ノウハウを利用することで、効率よく最新の業務体制を短期間で構築することも可能となります。ただし、BPOを行う場合は、自社の業務課題と期待効果を明確にしなければなりません。そのうえで、その解決にふさわしいパートナー企業の選定や予算化を図ります。また、業務管理の方法や情報流出などのトラブルシューティングをきめ細かく策定する必要もあります。
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4. 総務の主業務は全社的業務改革の推進
社会環境の変化や働き方の多様化に対応するためには、終身雇用とオフィスワークを前提とした従来の業務プロセスを根本から変える必要があります。つまり、全社的な業務改革を検討することにほぼ近しいことが望まれます。これを実行するための総務部門の大きな役割は、経営者と従業員の意思疎通を活性化し、改革に向けた機運を醸成していくことなのです。
ただやみくもに取り組みをスタートすると、具体的な経営計画の立案、各種規則の改定、社内外への周知など関連する業務が際限なく増大します。これを見据えて総務業務のBPOを含めた組織全体の省力化を検討しましょう。自社で100%解決するのではなく、外部の協力を得て効率よく改革を図ることをお勧めします。
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5. 大塚商会が情報システム室に! IT運用をまるごとアウトソース化
たよれーる らくらくオフィスシリーズ
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- *本記事中に記載の肩書や数値、社名、固有名詞、掲載の図版内容などは公開時点のものです。
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