1. 社会保険の適用拡大とは
そもそも社会保険は、原則として(1)法人役員(2)フルタイムで働く方(3)パート・アルバイトなどであって「同じ会社の正社員の週所定労働時間のおおむね4分の3(一般的には週の所定労働時間が30時間)以上」働く方が対象となります。
これに加えて「年金制度の機能強化のための国民年金法等の一部を改正する法律(年金制度改正法)」により、年金制度の持続向上を図る目的で、一定規模以上の事業所では、週所定労働時間が20時間以上30時間未満のパート・アルバイトの方にも段階的に社会保険の適用を拡大することとなっています。
出典元:厚生労働省「厚生労働省からのお知らせ 従業員数500人以下の事業主のみなさまへ」
(https://www.mhlw.go.jp/tekiyoukakudai/pdf/chirashi_jigyonushi.pdf)
ここでいう従業員数は、「厚生年金保険の適用対象者数(フルタイムの従業員数+週所定労働時間がフルタイムの4分の3以上の従業員数の合計)」を指しますのでご注意ください。
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2. 社内準備の4ステップ
1. 加入対象者を把握する
パート、アルバイトの方のうち、以下の全てに当てはまる場合は、社会保険への加入が必要となります。
勤務先 | 厚生年金保険の適用対象者数が101人以上である (2024年10月からは51人以上) |
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週所定労働時間 | 週20時間以上30時間未満 |
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月額賃金 | 88,000円以上 |
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雇用期間 | 2カ月を超えて雇用される見込みがある |
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その他 | 学生ではない |
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2. 保険料をシミュレーションする
社会保険料は、おおむね以下の通りとなります。
前提となる給与額の一例
年収 | 180万円(賞与なし) |
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月額給与(額面) | 15万円 |
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標準報酬月額 | 15万円(12等級) |
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保険料率
協会けんぽ・東京支部に加入(2022年3月分~2023年2月分)の場合
健康保険料率:9.81%(折半額4.905%)、厚生年金保険料率:18.3%(折半額9.15%)
介護保険料率(40歳以上の場合):1.64%(折半額0.82%)
保険料(本人の給与から控除する額)
健康保険料:150,000円×4.905%=7,357.5円
厚生年金保険料:150,000円×9.15%=13,725円
介護保険料(40歳以上の場合):150,000円×0.82%=1,230円
社会保険料合計:22.312.5円(本人が負担する1カ月分の社会保険料)
健康保険料率と厚生年金保険料率を合計すると、月額給与のおよそ14~15%(40歳以上の場合は、介護保険料を加え15~16%程度)となります。新たに社会保険の加入対象者となる方の月額給与を基に実際に毎月いくらの社会保険料となるのか、事前に試算しておくと良いでしょう。
また、会社は上記に加え、子ども・子育て拠出金(0.36%)も負担することとなります。会社が負担する社会保険料の総額(法定福利費)がどのくらい増額するかも併せて試算しておくことをお勧めします。
3. 社内に周知し、個人面談~説明会を実施する
新たに加入対象となるパート、アルバイトの方や、今後週20時間を超えて働く可能性のある方には、まずは社内イントラやメールなどで周知・説明を行っておくと良いでしょう。
対象となる方は、国民健康保険、国民年金を自身で支払う義務はなくなるものの、今後は給与から健康保険料、厚生年金保険料が控除されることとなるため、手取り額は少なくなります。福利厚生の充実というメリットがある反面、給与として手にする金額は減ってしまうことについては、しっかり理解をしていただく必要があります。
個人的な事情でどうしても社会保険に加入したくない場合などは、週の所定労働時間を20時間未満に減らすなど、労働条件そのものを変更する必要があります。給与総額にも影響してしまうため、今後の働き方や保険料負担など、早めに説明を行い、ご本人の理解を得ておくとその先がスムーズです。
厚生年金加入によるメリット・デメリット
| メリット | デメリット |
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本人 | - 年金が「2階建て」になり、
老齢・障害・遺族年金について 上乗せなどの給付が受けられる。 - 健康保険の傷病手当金、
出産手当金の対象者となる。 - 社会保険料は会社が半分を
折半して負担してくれる。
| - 社会保険料が給与から
控除されるため、 手取り額が少なくなる。
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会社 | - 「社保完備」で求人の
魅力がアップする。 - 従業員の福利厚生の
充実につながる。
| - 社会保険料の
会社負担分がある。 - 会社が行う
手続きが増える。
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4. 必要な手続きを行う
いよいよ時期が来たら、健康保険/厚生年金保険の資格取得手続きを行います。被扶養者がいる場合は、被扶養者異動届の提出も必要となります。また、給与計算時には、社会保険料の徴収を忘れずに行いましょう。通常は、当月分(10月分)を翌月(11月給与支給時)に徴収とする会社も多いです。自社の給与締め日、支払日をもとに、正しいタイミングで控除をスタートするようにしましょう。
なお、扶養の範囲で働いていたパート、アルバイトの方も、今後の働き方によっては自身の勤め先で社会保険に加入することができる可能性があります。社会保険適用対象者へは、労働時間の延長や、正社員への転換を提案する会社もあるようですので、正社員として活躍したい、今より長く働きたいという方は、これを機に、今後の働き方を勤め先に相談してみても良いかもしれません。
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