2022年12月14日公開

読んで役立つ記事・コラム

テレワーク時代の源泉徴収と年末調整

執筆:マネジメントリーダーWEB編集部

給与所得から源泉徴収された税金の年末調整作業は総務・人事・経理部門の大きな負荷となっています。税額控除の変更点と年末調整業務の軽減について解説します。

1. 源泉徴収と年末調整の仕組み

毎年11月を過ぎると、総務・人事・経理部門は、源泉徴収した税金の年末調整作業で慌ただしくなります。所得税は1年間の所得に対して課税されます。しかし、1年間の所得税を一括で支払うのは大きな負担となるため、概算の納税額をあらかじめ毎月の給与から源泉徴収し天引きしています。12月になると給与・賞与を合わせた年間の所得が確定しますので、概算で天引きしていた源泉徴収額と、確定した年収に対しての課税額の過不足を精算します。これが年末調整です。

年末調整を行った結果、過分に徴収されていた金額は還付されます。所得税は給与所得の合計から社会保険、生命保険や配偶者、扶養者など所得税から控除される項目(所得控除)を差し引いて計算します。さらに、住宅取得での購入資金を借り入れた場合は、条件を満たしていれば税額控除が適応されます。反対に所得合計金額が1,000万円を超えたり、配偶者の所得が配偶者控除の金額を上回ったりした場合などは不足分が徴収されます。

年末調整を行ったら年間所得の合計と税額を記載した「源泉徴収票」を作成・交付します。通常、従業員の場合は給与明細と一緒に配布し、執筆者、講演者などの個人スタッフや弁護士、司法書士、税理士、税理士、社会保険労務士などの外部専門家へは送付します。また、給与支払報告書などの法定調書も作成し、管轄の税務署、自治体へ提出します。

年末調整は控除内容が従業員個々に異なり、間違いを避けるために二重チェックを行う場合もあるなど、とても労力の掛かる業務となっています。また、税務控除の対象は改正が頻繁に行われますので、税制の改正についても注意が必要です。

参考

国税庁「年末調整の仕方 2022年版」(国税庁のWebサイト<PDF>が開きます)

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2. テレワークと源泉所得税の扱い

年末調整で気になるのは、働き方の多様化で増加しているテレワークに関連する所得税の扱いです。国税庁では2021年1月に「在宅勤務に係る費用負担に関するFAQ(源泉所得税関係)」を公表しています。このガイドラインによると、所得税の扱いは以下のようになっています。

  • テレワーク業務の費用について

テレワークで生じた光熱費、通信費などを実費精算する場合は、所得税として課税しない。
テレワーク手当てとして返還義務のない支給とする場合は所得として課税対象となる。

  • PCなどの事務用品の扱いについて

テレワークで使用するPCなどの事務用品を貸与する場合は、所得税として課税しない。
PCなどの事務用品を支給(所有権が従業員へ移転)する場合は、現物給与として課税対象となる。ただし、支給扱いとなっていてもセキュリティなどの関係で従業員が自由に処分できない、機材の入れ替えや退職など業務で使用しなくなった場合は返却しなければいけない場合は貸与としてみなすことも可能。

原則として、貸与(返還義務あり)の場合は所得税の対象外となり、支給(返還義務なし)の場合は所得税の対象となるようです。テレワークの生命線でもあるインターネットの利用料は、合理性が認められる費用を支給した場合は所得税の課税扱いはしないそうです。合理性とは客観的に使用が認められることで、在宅勤務日数など業務に費やした日数や時間を基に算出します。

出典元:国税庁:在宅勤務に係る費用負担等に関するFAQ(源泉所得税関係)を参考に作成
(https://www.nta.go.jp/publication/pamph/pdf/0020012-080.pdf)

参考

国税庁「在宅勤務に係る費用負担等に関するFAQ(源泉所得税関係) 2021年5月更新版」(国税庁のWebサイト<PDF>が開きます)

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3. 年末調整の電子化推進で余裕のある年末を迎える

前述したように、年末の総務・人事・経理部門は、年末調整業務に忙殺されていますが、年末調整を効率よく処理するために税務の電子申告など手続きのオンライン化が進んでいます。企業においても、年末調整書類の配布・回収をオンライン化し、従業員からの問い合わせ・相談をチャットボットに任せるなどの工夫で、年末調整の業務処理スピードが速まり正確性も向上すると思われます。

年末調整申告書の作成データは国税庁から提供されていますが、企業が利用している経理ソフトなどで作成することも可能です。保険会社や金融機関から従業員の控除証明書データが取得できれば、申告書の作成と申請の手間が軽減されます。

年末調整電子化のステップ

1. 電子化に向けた年末調整業務の分析(可視化)
役割分担、課題の明確化と原因の追究

2. 電子化実施のためのロードマップ作製(予算化)
実施効果の高いと想定される業務から電子化を推進
特にルーティンワーク業務は無人化を前提とした業務転換を図る

3. 実施項目の検証と微調整
想定効果と実施効果を検証。改善点の洗い出しを行う

1~3を繰り返し実行することで、精度・効果を高めていく。

DX化や働き方の多様化が進むことを想定すると、年末調整だけでなく企業活動の全てをオンライン上で行うことを前提として、総合的・段階的に計画性を持って対応していくことが望まれます。

慌ただしい年末ではなく余力を持った年末を過ごし、新たな年のスタートを切ってみてはいかがでしょうか。

参考

国税庁「年末調整手続の電子化に関するパンフレットについて」(国税庁のWebサイトが開きます)

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4. テレワークでも対応できる年末調整手続きの電子化

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年末調整手続きの際、従業員が作成する保険料控除申告書などの申告書は、控除証明書などのデータを活用して簡単に年末調整申告書の電子データを作成することができます。また、給与担当者も電子データで提出されることにより、在宅のまま出社する必要がなく年末調整の手続きを進めることができ、書面での年末調整の場合の書類保管コストも削減できます。大塚商会では、年末調整の「効率化のステップアップ」や「運用例」のご紹介と人事労務の電子化でもっと便利にできる情報を無料ガイドブックにまとめました。ぜひご活用ください。

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  • *本記事中に記載の肩書や数値、社名、固有名詞、掲載の図版内容などは公開時点のものです。

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