2022年12月19日公開

読んで役立つ記事・コラム

初めて人を雇うときにやるべき五つのこととは

著者:岩野 麻子(いわの あさこ)

「自分の力を試してみたい」「自由度の高い働き方をしたい」「世の中の役に立ちたい」などを理由に起業、開業される方は多くいます。ただ、「業界のことはわかるけど、自分で人を雇うのは初めて」という方がほとんどです。人を雇う際にスタートアップ企業から受ける、よくある質問をまとめました。

1. 人を採用するときの注意点とは

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良い人に来てもらいたいと、つい良い条件を出したくなってしまいますが、自社にとって無理のない労働条件を提示するようにしましょう。また、一方で、労働基準法に反する労働条件を記載することはできません。この後説明する「労働時間・給与額に関するルール」も参考にしてみてください。

採用面接

明確な選考基準がないと、面接を受けに来てくれた人みんなが良く見えてしまうこともあります。どんなスキルや経験を持っている人を採用したいのか、自社にはどんなマインドを持っている人がマッチするのかなど、質問したいことは事前にチェックシートなどにしておくと他の候補者との比較がしやすかったり、質問を聞き漏らしたりすることがないので便利です。

採用選考時の持参書類の一例

  • 履歴書、職務経歴書(事前に)
  • クリエイティブ系の業務の場合は、自分の過去の作品など
  • 適性検査、スキルチェックなどをする場合は筆記用具など

採用選考時のルールについては、こちらも参考にしてみてください。

参考

今と昔~変わる採用選考のルールとは

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2. 内定を出すときのポイント

最終選考の結果が決まったら、内定となった方に連絡をします。ぜひ一緒に働きたいと考えていることと併せて、入社後にお任せしたい業務内容や労働条件についても、内定を出すタイミングで伝えておくと良いでしょう。また、口頭だけでは、認識違いが後から生じることもあります。原則として労働条件は書面で明示することが義務づけられています(労働基準法第15条)。

内定時に送付する書類の一例

  • 内定通知書
  • 雇用契約書(内容を具備していれば、労働条件通知書を兼ねることも可)
  • 誓約書
  • 緊急連絡先の届出書
  • 扶養控除申告書 など

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3. 入社日当日に何の書類を提出してもらえばよいか

入社日当日は、新入社員にとって記憶に残る大切な1日となります。迎える側も余裕を持ち、歓迎ムードで緊張感を解きほぐしてあげましょう。書類については、以下を持参いただくとその後の手続きがスムーズです。

入社日当日の持参書類の一例

  • 押印済みの雇用契約書、誓約書など、内定時に事前に渡した書類
  • 住民票記載事項証明書
  • 職歴のある場合は、雇用保険被保険者証(コピー後返却)
  • 入社年に給与所得のあった場合は、源泉徴収票
  • 健康診断書(入社前に受診している場合など)
  • 年金手帳(コピー後返却)
  • マイナンバーカード、またはマイナンバー通知カードと本人確認書類(コピー後返却)
  • 通勤や業務で車を運転する場合は、運転免許証(入社時コピー後返却)
  • 在留カード(コピー後返却、外国籍社員のみ)
  • その他会社が指定するもの(卒業証明書、資格証明書など)

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4. 労働時間・給与に関するルール

法定労働時間とは

使用者は、原則として1日に8時間、1週間に40時間を超えて労働させてはいけません(法定労働時間)。また、労働時間が6時間を超える場合は45分以上、8時間を超える場合は1時間以上の休憩を与える必要があります。

法定労働時間を超える労働を時間外労働といいます。時間外労働をさせる場合は、「時間外・休日労働協定届(36協定)」を締結、届け出し、一定割合以上の割増賃金を支払う必要があります。

最低賃金

使用者が支払わなければならない賃金の最低限度は法律で定められています(最低賃金法)。たとえ従業員が同意したとしても、試用期間中であるからといって最低賃金を下回る賃金を支払うことはできません。また、最低賃金は毎年10月に更新されますので、毎年9月には、最低賃金を下回っている従業員がいないか定期的に確認するようにしましょう。

支払い方のルール

賃金が全額確実に従業員にわたるように支払い方にもルールがあります(労働基準法第24条)。

通貨払い原則は現金払い、従業員の同意を得たら銀行振り込みも可。
直接払い原則は本人に支払う。未成年者であっても、親に支払いはNG。
全額払い法令で定められているもの以外を控除するときは、労使協定が必要。
毎月1回以上定期払い月ごとに勤怠を締めて、支払うのが原則。給与の締め日、支払日をいつにするかは会社の自由。

給与の締め日と支払日があまりに近いと給与計算期間が短くなり、人数が増えたときに計算が間に合わなくなることも想定されます。末日締めなら翌月15日払いなどと、支払日まで一定の計算期間を設けておくと良いでしょう。

法定福利費を忘れずに

社会保険に加入する場合は、給与総額の15~16%程度の社会保険料を会社、および従業員がそれぞれ負担する必要があります。これらの費用も考慮したうえで、人件費にいくらかけることができるのか試算しておきましょう。

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5. 役所への手続きについて

ここまでできたら、あとは役所への手続きを行います(電子申請も可能)。なお、働く時間や雇用期間によって加入する保険、必要な手続きは異なります。忙しくて手続きや調べものをする時間が取れない場合は、社会保険労務士などの専門家に手続きを依頼しても良いかもしれません。

手続き名称主な窓口
労災保険の成立手続き労働基準監督署
雇用保険の設置、取得手続きハローワーク
健康保険の新規適用・取得手続き健康保険協会
厚生年金保険の新規適用・取得手続き年金事務所
時間外・休日労働の協定届(36協定)労働基準監督署

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