1. 企業の意識の持ち方は大きく変化している
今では信じられないかもしれませんが、かつて多くの企業では採用選考時に以下のようなことが行われていました。
- 企業独自の応募用紙(いわゆる社用紙)に「スリーサイズ」「購読雑誌」「支持政党」「家族の職業・収入・住宅の状況・宗教・既往歴」などの記載欄があった。
- 募集要項に、「女性は自宅通勤者、かつ通勤60分以内の者に限る」など、制限が設けられていた(「女性が一人住まいをしていると生活が不規則になり、企業イメージを損なうような問題を起こすおそれがある」「残業した場合に帰路が危険である」などの理由から)。
- 企業の調査人が、応募者の生活環境、家庭環境などの身元調査のために、応募者の自宅やその近所を調査したり、聞き込みなどをしたりすることがあった。
1973年に厚生労働省(旧労働省)、および文部科学省(旧文部省)が「全国統一応募用紙(高等学校卒業者の就職応募書類の様式の統一)の使用を通達したこともあり、その後、企業の採用選考は大幅に改善されることとなりました。
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2. 採用選考時に配慮すべき事項
厚生労働省では、原則として企業の採用の自由を保障しつつも、次の(1)~(11)を応募用紙などに記載させる、面接時において尋ねる、作文を課すなどによって把握することや、(12)~(14)を実施することは、就職差別につながるおそれがあるとしているため注意が必要です。
本人に責任のない事項の把握
- 本籍・出生地
- 家族について(職業・続柄・健康・地位・学歴・収入・資産など)
- 住宅状況(間取り・部屋数・住宅の種類・近隣の施設など)
- 生活環境、家庭環境など
本来自由であるべき事項(思想信条にかかわること)の把握
- 宗教
- 支持政党
- 人生観、生活信条など
- 尊敬する人物
- 思想
- 労働組合、学生運動など社会運動
- 購読新聞、雑誌、愛読書など
採用選考の方法
- 身元調査などの実施
- 不適切な内容を含む「社用紙(応募用紙)」の使用
- 合理的、客観的に必要性が認められない採用選考時の健康診断の実施など
- * 「厚生採用選考啓発リーフレット(厚生労働省令和3年2月版)」より抜粋
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3. 採用選考~困ったらこのように対応しよう~
もしあなたが企業の採用担当者だったら、以下のような場合はどのように対応しますか?
- 履歴書の性別欄が未記入である
未記入であることのみをもって採否を決めることは適切ではありません。業務の性質や、施設上の理由などで、どうしても把握が必要な場合には、面接などで理由を説明し確認するようにしましょう。 - 写真の貼付がない
応募者の中には、さまざまな事情から写真の貼付を望まない方もいます。写真が貼付されていないことや、容姿のみで採否を決めることは公正な採用選考の観点からは望ましくありません。必ず写真の貼付が必要な場合は、あらかじめ理由を示した上で、その旨を伝えておくと良いでしょう。 - 外国籍の応募者の対応
採用選考にあっては、単に国籍のみではなく、本人の適性と能力で判断されるべきであり、募集の段階で応募者の国籍を把握することは、国籍をもって採否を決定したと思わせてしまう懸念もあるため、適切ではありません。外国籍の方の採用選考にあたっては、面接時に在留資格などを口頭または書面で確認し、採用内定後に「在留カード」などの提示を求める、などといった配慮があると良いでしょう。
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4. 採用選考プロセスは定期的に見直しを
募集広告から採用内定に至るまでの各プロセスは定期的に見直しを行い、全体を通して問題がなかったか確認すると良いでしょう。また、求める人物像や必要なスキルを的確に評価できるよう、あらかじめ面接時のチェックシートまたヒアリングシートなどを作成しておくことをおすすめします。
採用(選考)基準
- あらかじめ採用選考基準を明確化されているか
- 適性・能力に基づいた採用基準となっているか
- 特定の人(女性・性的マイノリティーなど)をあらかじめ排除していないか
選考方法
- 求人条件に合致する全ての人が応募できるようになっているか
- 採用基準に適合した選考方法であるか
- 適性・能力を評価する選考方法であるか
- 応募者を客観的に評価する公平な選考方法であるか
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5. 履歴書の記載項目にも変化が
2021年3月に厚生労働省からリリースされた履歴書(様式例)は、性別欄は〔男・女〕の選択ではなく任意記載欄とされ、「通勤時間」「扶養家族数(配偶者を除く)」「配偶者」「配偶者の扶養義務」の各項目は削除されました。公正な採用選考という観点から、採用選考ルールも大きな変化点を迎えています。応募者の基本的人権を尊重しつつ、どうしても把握が必要な情報は、面接などで理由を説明するなどして、応募者本人の十分な納得の上で情報収集を行うようにしましょう。
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