情報銀行
2010年ごろに東京大学の柴崎 亮介教授が研究会で提唱した概念で、2016年ごろから本格的な議論が始まった。その背景にはGAFAなどの巨大企業による個人データの独占があり、EUが「個人情報を消費者に取り戻す」として個人データの管理を推進。その流れの中、日本では総務省が2018年6月に「情報信託機能の認定に係る指針ver1.0」を公表した。そこでは、「情報銀行(情報利用信用銀行)とは、個人とのデータ活用に関する契約等に基づき、PDS等のシステムを活用して個人のデータを管理するとともに、個人の指示又は予め指定した条件に基づき個人に代わり妥当性を判断の上、データを第三者(他の事業者)に提供する事業」とされている。
情報銀行は、具体的には、個人や個人の情報を有する情報提供事業者から預かった「情報」を匿名化したうえで、個人の同意に基づき企業に提供する。企業は、その情報を使って個人の利益につながるようなサービスなどを開発・提供し、情報の使用料やサービスによって、情報を預けた個人が利益を得るという仕組みである。
情報銀行で売ることができる個人情報は、情報銀行の定着に応じて、その幅が広がっていくと予想される。現状では、行動記録(位置情報データ)、健康診断データ、購買履歴、所得・家計収支、電力使用量などといわれている。
個人にとっては、個人データを自分自身で管理し、提供することによって、インセンティブが得られるというメリットがある。その反面、個人情報の流出というリスクもある。そのため、情報銀行を運営する機関には個人情報の厳格な管理・運用の責任がある。また、情報提供先に関する透明性を保証する必要もあり、金融機関と同レベルの信頼性が求められるなど、参入には非常に高いハードルがある。