PoC
「Proof of Concept」の頭文字を取った略語で、「ピーオーシー」または「ポック」と読む。直訳すると「概念の実証」。新しい概念や理論、原理、アイデアなどの実証を目的とした、試作開発の前段階における検証やデモンストレーションのこと。
PoCは、事前に検討した理論やアイデアなどが課題解決に有効なのか、技術的に実現可能なのかなどを判断するために採用されるプロセスである。例えば、新規プロジェクトを立ち上げたり、新技術を導入したりするとき、議論のみで判断するのは困難かつリスクを伴う。そこで、規模を小さくした試作や実装を行い、検証することで、判断の精度を高める。プロトタイプと混同されやすいが、明確な結果を期待してひと通り全体を作り上げるプロトタイプの前段で、実現可能性を検証するのが「PoC」である。想定どおりの結果になった場合は「PoCを得た」「PoCを確保した」などと称される。
PoCは、医薬品開発や航空機開発など、先進的な科学技術の研究や開発で用いられてきたが、IT分野で「PoC」が注目されるようになったのは、IoTやAIなどの発展による。IoTやAIなどは新しい分野であり、前例のない施策や技術などを活用することが多いため、本格的にプロジェクトが始動して結果が得られないと損失が大きくなる。そのため、PoCを行い「プロジェクト開始の可否」や「最終的なゴール地点」を判断することが広く行われるようになった。
PoCは小規模で試験的に行うため、製品やシステムの開発リスクを抑えられるというメリットがあるが、PoCを何度も繰り返すうち、PoCを行うことが目的になり、コストや時間を浪費することもある。PoCを行う際は、実現性や具体性の観点を重視しつつ、費用対効果の確認も含めて進めることが重要である。
なお、ビジネス分野での似た用語として、コストや費用対効果、業務や事業に導入する価値があるかどうか、投資判断を検証するPoV(Proof of Value:価値の実証)がある。