2018年11月

専門家がアドバイス なるほど!経理・給与

「今さら聞けない年末調整の基礎」の巻

テキスト/梅原光彦 イラスト/今井ヨージ

今年も年末調整の季節がやってきました。毎年のことですが、年末調整に従業員の協力は不可欠です。扶養控除申告書などの提出期限を厳守してもらわないと、いつまでたっても終わりません。今回は平成30年度の改正ポイントも含め、年末調整を計画的に進めていくための手順や知識をご紹介します。

年末調整の準備

年末調整とは

年末調整とは、従業員が提出する扶養控除申告書等に基づき、所得税の税額計算を確定する作業をいいます。年末調整の基本についてはバックナンバー「年末調整で処理できる控除とできない控除」の巻を参照ください。

「年末調整で処理できる控除とできない控除」の巻

まずは準備から

年末調整は計画的に進めていくことが肝心です。どのタイミングで何をすべきか、まずは大まかにスケジュールを把握しておきましょう。

年末調整To doカレンダー

年末調整に必要な作業をスケジュールに落とし込みました。

1.国税庁から「扶養控除申告書・配偶者控除等申告書及び保険料控除申告書」を入手しましょう

国税庁のホームページからダウンロードするか、最寄りの税務署で入手しましょう。税務署によって時期は前後しますが、10月中には入手可能となります。また、給与ソフトから出力することも可能です。

平成30年分 給与所得者の保険料控除申告書(国税庁のWebサイト<PDF:343KB>が開きます)

2.従業員に「扶養控除申告書・配偶者控除等申告書及び保険料控除申告書」を配布しましょう

3.従業員から「扶養控除申告書・配偶者控除等申告書及び保険料控除申告書」を回収しましょう

4.予備日
控除証明書などの書類に不備がある場合が想定されるので、対応のための予備日を設定しておくといいでしょう。

5.12月支払給与分に加味して還付金または不足金を精算しましょう
12月中に計算が終わらない場合には1月の支払給与分で精算してください。

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添付書類の確認

年末調整で控除や計算を行うには各種の書類が必要です。従業員から受け取った添付書類は不備や不足がないかしっかりチェックしましょう。

1.生命保険料控除および損害保険料控除のはがき

保険会社の発送状況にもよりますが、一般的には10月中旬ごろ、従業員の住所地に届きます。従業員がこれを紛失した場合、再発行に2週間程度は必要と考えてください。新入社員など初めて年末調整を経験する従業員には、紛失しないようあらかじめ注意しておいた方がよいでしょう。

2.社会保険料控除証明書(国民年金のはがき)

新規採用された従業員で、入社前まで国民年金を支払っていた人、あるいは扶養者の国民年金を支払っていた人は、会社で天引きされている厚生年金等の社会保険料とは別に「社会保険料控除証明書」を添付することで社会保険料控除が受けられます。
社会保険料控除証明書は日本年金機構から10月下旬ごろ、被保険者(加入者)の住所地に届きます。こちらも紛失などで再発行をしてもらう場合、生命保険料等と同様に数週間かかるので注意が必要です。

3.前職の源泉徴収票

途中入社かつ、その年にほかの会社や団体で就業していた従業員については、前職の源泉徴収票を加味して計算し、年末調整をすることになります。このため従業員からは前職の源泉徴収票を提供してもらわなくてはいけません(注)。

  • (注)所得税法第226条により退職後1カ月以内に前職の会社から源泉徴収票の交付を受けることができます。

4.その他

従業員が住宅借入金等特別控除、勤労学生控除、国外居住親族の扶養控除の適用を受ける場合には、各種書類が必要となります。これら書類をチェックして、不足書類があれば従業員に提出を求めてください。

a.住宅借入金等特別控除を受ける場合……住宅借入金等特別控除額の計算明細書および借入金残高証明書
b.勤労学生控除を受ける場合……勤労学生に該当する旨を証する書類
c.平成30年分の源泉徴収において非居住者である親族に係る扶養控除、障害者控除または源泉控除対象配偶者の控除の適用を受ける場合……その親族に係る親族関係書類および送金関係書類

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平成30年度の注意点

年末調整は毎年同じ作業ですが、今年は新たな改正がありました。平成30年度の年末調整からは配偶者控除と配偶者特別控除について注意が必要です。

配偶者控除と配偶者特別控除の改正ポイント

1.合計所得金額1,000万円超は配偶者控除等が不適用に

給与所得者の合計所得金額が1,000万円超の場合、配偶者控除と配偶者特別控除の適用ができなくなりました。役員や部長職など高収入の役職者の年末調整に注意してください。

平成30年分の給与所得控除額は下表のとおりです。

給与の年間収入給与所得控除額
1,800,000円以下収入金額×40%
650,000円に満たない場合には650,000円
1,800,000円超3,600,000円以下

収入金額×30%+180,000円

3,600,000円超6,600,000円以下収入金額×20%+540,000円
6,600,000円超10,000,000円以下収入金額×10%+1,200,000円
10,000,000円超2,200,000円(上限)

なお、「合計所得金額」と「給与の年間収入」は意味合いが異なります。給与所得に限定するのであれば、以下の計算式となります。

給与の年間収入-給与所得控除額=合計所得金額

つまり――

  • 合計所得金額が1,000万円超とは、給与の年間収入1,220万円超となります
  • 合計所得金額が900万円以下とは、給与の年間収入1,120万円以下となります
  • 合計所得金額が85万円以下とは、給与の年間収入150万円以下となります

2.合計所得金額が900万円以下だと配偶者特別控除が受けられる場合も

給与所得者の合計所得金額が900万円以下の場合、配偶者の合計所得金額が85万円以下であれば、配偶者特別控除38万円を受けることが可能になりました。

具体的には配偶者控除等申告書の手順により「区分II」で控除額が計算されます。

提出書類の形式変更

改正に伴い、以下の提出書類の形式が変更されます。

a.給与所得者の扶養控除等(異動)申告書
b.従たる給与についての扶養控除等(異動)申告書
c.給与所得者の保険料控除申告書
d.給与所得者の配偶者控除等申告書
e.給与所得・退職所得に対する源泉徴収簿

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