2022年 6月 7日公開

読んで役立つ記事・コラム

1 on 1ミーティングで組織を活性化する

執筆:マネジメントリーダーWEB編集部

課題を知り解決方法を見いだすのが1 on 1ミーティング。
テレワークなどによるコミュニケーションロスを解決する方法として注目されているのが1 on 1ミーティングです。効果的な1 on 1ミーティングの実践で風通しの良い職場環境を作りましょう。

1. 1 on 1ミーティングとは

1 on 1ミーティングは、上司と部下が1対1で定期的に対話を行うことです。上司と部下の定期的な対話は、以前から人事考課の面談や業務上の指導・相談など、さまざまな場面で行われていました。また、仕事以外でも会社帰りに共に飲食するなどしてコミュニケーションを醸成することも多々ありました。しかし、テレワークの浸透やコロナ禍により、上司と部下が直接対話する機会が大幅に減少してきました。そこで問題となったのは、コミュニケーション不足による業務上やメンタル上の弊害です。意思疎通が滞ることで、業務の進行に不具合が発生したり、孤独感や閉塞(へいそく)感からメンタルヘルス系の疾病に罹患(りかん)しやすくなったりといった問題が指摘されてきました。

企業内のコミュニケーションは、コロナ禍で急速に変化しました。テレワークの導入だけでなく、出社しても、ソーシャルディスタンスや黙食の奨励など、感染拡大防止のための措置により、社内外で気軽に声を出して直接コミュニケーションを取ることが困難になったためです。

もう一つの側面は、価値観の多様化です。IT技術の進化は情報化社会を生み出しました。いまやネット上には無数の情報があふれています。その結果として、志向や考え方が個々によって異なることを自由に表明したり、お互いに受け入れたりするようになりました。少子高齢化といった社会現象も合わさって働き方の多様化が進んでいます。そうすると、一元的な「指示・命令」ではなく、部下の個性や志向を生かす「マネジメント」が必要になってきます。これらの課題を解決するための手段として1 on 1ミーティングが注目されています。1 on 1ミーティングは、これまでの上司と部下の「面談」という公式な形式と飲み会のような非公式な「会話」の中間的な位置づけで行われます。

1 on 1ミーティングのテーマは企業や部署の状況や課題によってさまざまです。定期的に開催することを原則として、開催頻度はあまり間隔が空かないように最低でも月1回は行うようにします。時間は集中力が途切れないようにするために30分程度としている場合が多いようです。ミーティング内容は、部下の個性や志向を理解することを主目的にカジュアルな雰囲気で行います。主役は部下です。そのため、上司が一方的に自説を話すのではなく、部下の話をじっくり聞くことがポイントとなります。

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2. 1 on 1ミーティングを実施するメリットとは

1 on 1ミーティングの目的は従業員が描くビジョンを理解することです。部下のビジョンを理解し、それを実現するために上司がサポートしていくことで、従業員の自立性と能動的なアクションが期待できます。

  1. 成長促進
    従業員が目指す方向性や姿を上司に話すことで、実現に必要なスキルや課題が具体化します。それを解決することで、よりレベルの高いスキルや経験が身につきます。
  2. イノベーション創出
    従業員のアイデアや発想を業務に取り込むことで、新たなマーケティング環境を創造することにつながります。低成長時代は、守りに徹することが事業の縮小リスクにつながる場合があります。新たなアイデアや発想で、事業鮮度を高めることが企業の存続・発展に欠かせない要素となっています。
  3. 従業員エンゲージメントの向上
    コミュニケーションの不足は、孤立感や閉塞感を高め、メンタル系の疾患や離職につながります。1 on 1ミーティングで、業務上の悩みや不安を聞き、その解決をサポートしていくことで信頼感が高まり、組織活性化による風通しの良い企業風土の実現や従業員エンゲージメントの向上による離職率の低下が促進されます。組織活性化は業務効率の向上に寄与し、離職率の低下はノウハウの流出防止、採用・教育などの人材コスト低減に貢献します。

1 on 1ミーティングの実施方法と注意点

1 on 1ミーティングを効果的に実施するには、いくつかのポイントをクリアすることが必要です。

1. 1 on 1ミーティング実施の目的・意義の理解
何のために1 on 1ミーティングを実施するのかを上司・従業員ともに理解する必要があります。実施の目的は、企業や部署の課題によっても異なりますが、共通する要素は以下のようになります。

  • 実施目的

現状把握・問題発見・課題設定のために上司・従業員で対話を行います。従業員の業務環境を業務内容、役割、メンバー、取引先、関連部署などの状況を従業員視点でヒアリングします。その中から問題点を整理し、課題解決の方法と優先順位を相談します。

2. 事前準備
何の準備もなくミーティングを行うと明確な成果は望めませんが、膨大な事前準備を課したりすることは逆効果ともなりかねません。大まかに現状を整理・把握した上でミーティングに臨みましょう。

  • 上司:対象となる従業員の勤務状況やスキル・経験、評価などの情報を客観的に整理し把握する。
  • 従業員:話したいテーマ・内容を決めて上司に報告。内容を整理し、良い点、悪い点、メリット・デメリットなど、話す内容を客観的に整理しておく。

話す内容は従業員が設定します。2回目以降は、ミーティングで出た内容に沿って設定します。業務上の課題は、業務と人間関係、自社と取引先などが複合的・複層的に入り組んでいます。事前に状況を整理してポイントを絞って対話することをお勧めします。

3. ミーティングの進行
上司が問いかける形で進行します。前述した通り、従業員の話を聞くことがメインとなりますので従業員からの質問には、要点のみを簡潔に答えるようにします。従業員の個性によって、雄弁・無口などさまざまな雰囲気になることが想定され、上司には質問スキルが問われます。普段から円滑なコミュニケーションを醸成しておくことがなにより大事ですが、指示・命令ではなく共に歩むという姿勢でミーティングに臨むことも重要です。

従業員の設定するテーマに対して、上司はどのようなスタンスで答えればよいのでしょうか。例えば、業務上のトラブルでは、経験やスキルに基づいたアドバイス(ティーチング)が求められます。人間関係や新規事業への興味、キャリアの形成など従業員が抱える主なテーマと上司の回答スタンスを整理してみると以下のようになります。

ミーティングでは、上司が全て答えるのではなくどのようにサポートしていくかを示すことが大切です。そのうえで、次のミーティングステップ(テーマ)を設定します。

4. 事後
1 on 1ミーティングを有意義なものとするためには、ミーティングで課題を整理し課題解決のために行動を実践することです。トラブルなどの課題解決は迅速に対処する必要があります。また、将来像など、内容がまだ漠然としている場合は、できるだけ具体的にしてみます。例えば、新規分野の取り組みを行う場合は、マーケティング分析や関連資料の収集・識者のヒアリングなど事業提案に必要な情報収集を行うなどできる範囲でのサポートを行います。
このような具体的な行動につなげていくことが重要です。そのために、ミーティング内容の議事録を作成し、上司と部下だけでなく部署や関係する人などと広く情報共有することをお勧めします。

オンライン1 on 1ミーティング

1 on 1ミーティングは、テレワークなどで対面の実施が難しい場合はオンラインで行うことも可能です。実施の準備や進行内容は対面と同じですが、オンラインの物理的な特性に注意する必要があります。

  • カメラ機能をオンにする

対面と同じように、できるだけ相手の表情が分かるようにカメラ機能はオンにしましょう。相手が納得しているのか、意欲的なのかといった雰囲気は映像があることでより分かりやすくなります。

  • 相手が話し終えてから発言する

相手のコメントが言い終わる前に発言すると、音声が中断する形になります。対面で話しているときは、それほど気にならなくても否定的な印象となる場合もあります。特に上司側は部下の発言を遮る形にならないように注意しましょう。

  • 対面の機会を設ける

全てオンラインで行うのではなく、定期的に対面での1 on 1ミーティングを実施しましょう。カメラを通して得る情報は限定的になります。よりコミュニケーションを深めるためには直接会って対話することも必要です。3カ月に1度などの定期的な開催や、重要な節目となる時期での開催など、進捗(しんちょく)状況の確認のため、対面での1 on 1ミーティングの実施を検討しましょう。

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3. マネジメント時代の到来と1 on 1ミーティングの今後

1 on 1ミーティングはテレワークの普及とともに、急速に導入する企業が増えています。しかし、この新しい仕組みを単なる面談と勘違いして、雑談に終始してしまうケースも多々あります。日常的なコミュニケーション不足が課題であればそれでも良いかもしれませんが、1 on 1ミーティングの本来の効果は望めません。

いま日本ではDX時代に対応するために企業の働き方改革を推進しています。その背景にあるのは、経済成長の終焉(しゅうえん)によるイノベーションの必要性だといえます。経済成長をしている時代は、従業員は上司の命令に従って行動することが求められました。そのために終身雇用制度が重視され、一律に新卒で入社し、定年退職していくというライフスタイルが定着しました。しかし、経済が熟成している現在では、命令に従っているだけでは成長が望めない状況となっています。新しい取り組みや発想でイノベーションを起こすことが企業発展につながる時代となったのです。

イノベーションの時代に必要な人材とは命令に従う指示待ちの人間ではなく、自発・自律的に個性を生かしてイノベーションに取り組む人材です。管理職も、会社側の指示・命令を効率よく伝え、問題なくチーム各自が業務を行うための枠組みを維持管理するだけの「ルール・マネジメント」スタイルではもはや時代遅れといえます。多様な人材の持つパワーや個性を生かし、目的に向かって束ねていく「リーダー・マネジメント」力が問われるようになってきたのです。

このようなマネジメントを行う上で、従業員を主役として能動的なアクションを促すのが1 on 1ミーティングとされています。企業、そして従業員の意識が大きく変容する第一歩として1 on 1ミーティングの実践に取り組みましょう。

参考

内閣官房内閣人事局「霞が関働き方改革推進チーム 令和元年度「議論の成果」」(内閣官房のWebサイト<PDF>が開きます)

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4. チームや個人間でのチャット、ビデオ会議ができるコミュニケーションツール

Microsoft Teams

Microsoft Teamsはチームや個人間でのチャット、音声通話、ビデオ会議のほか、ファイルやWebページなどの共有が可能なコミュニケーションツールです。チャットや音声通話で1対1の会話ができるほか、チャットや音声通話ではうまくコミュニケーションが取れない場合や、画面を見ながら会話を進めたい場合は、ビデオ通話もできます。ビデオ通話中は、自分の背後の表示をぼかしたり、カスタマイズしたりすることができますので、在宅勤務時でもプライバシーが守られます。

Microsoft Teams

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