2022年 6月 8日公開

読んで役立つ記事・コラム

進化したオフィス環境で業務効率アップ

執筆:マネジメントリーダーWEB編集部

働き方の多様化でオフィス環境はフリーアドレスからABWへ。
テレワークの浸透でフリーアドレスを導入する企業が増えています。働く場所は従業員が主体的に選択するABWの影響もありフリーアドレスは大きく進化しています。

1. テレワークの浸透で注目されるフリーアドレスとABW

フリーアドレスとは、企業内で社員が業務を行うデスクを共用化し、デスクを自由に選択して使用することです。日中は社外で活動する営業部門などで省スペース化=コスト削減を目的として導入が進みました。また、部署単位で配置していた固定席をシャッフルすることで、部署の垣根を越えたコミュニケーションの活性化も期待されました。しかし、当初はデスクだけでなく、社員が使用する電話やPCも有線で固定配線されていたため、フリーアドレスを導入するためには設備投資費用の問題などがあり導入するハードルはなかなか高いものでした。

しかし、ITやネットワークの技術が進化して、低コストでWi-Fiなどのインフラ整備が行えるようになり、フリーアドレスを導入する企業も徐々に増えてきました。

コロナ禍でフリーアドレスの導入を検討する企業が急増

そのフリーアドレスが、再び注目を集めています。コロナ禍による感染拡大防止のためにテレワークの導入が進み、オフィスに余剰スペースが発生したためです。同時に、モバイルで仕事ができるようにノートPC、スマートフォン、タブレットの貸与や書類のデジタル化も急速に進みフリーアドレス導入の障壁となっていた課題も徐々に解消されてきました。

従業員の意識も、テレワークを体験することで大きく意識が変化しています。与えられた(決められた)場所で仕事をするという受動的な意識が、仕事がしやすい環境を自分で選択するという能動的な意識に変わってきました。このような時代ニーズにより、多くの企業がフリーアドレスを導入して、オフィスの余剰部分の転用やテナント面積の縮小、移転を検討することとなりました。

ABWという新しい働き方の概念とフリーアドレス

フリーアドレスに関連した考え方として、最近話題のABW(Activity Based Working)をご紹介します。フリーアドレスは、オフィススペースの効率的活用を図るための手法ですが、ABWは従業員が業務効率の良いと思う環境やスタイルを自由に選択する働き方となります。

つまり、オフィスだけでなく社外のどこでも、業務内容や従業員のモチベーションに合った場所を自ら選択して働くというスタイルです。テレワークだけでなく、カフェやワーケーションと呼ばれるリゾートで仕事をすることもABWとなります。デスクを選ぶというだけにとどまらず、場所(環境)を選ぶということにまで広がります。

ABWの影響でフリーアドレスが進化

ABWの業務効率の上がる場所で仕事をするという考え方は、最新のフリーアドレスにも大きく影響しています。以前のフリーアドレスでは、デスクを共用化することで席数を〇〇%削減するという考え方でしたが、そこに業務形態に合わせたゾーニングという考え方が付加されるようになってきました。ゾーニングとは、業務内容によって「集中」「ディスカッション」「発想」など、必要とされる要素によってゾーンエリアを設定し、環境を整備することです。

例えば、「集中する」ゾーンではデスク周りをパーティションで囲う、または、防音の個室ブースを配置するなど、仕事に集中できるようなエリアとします。反対に「ディスカッション」のゾーンでは、メンバーが自由に会話できるように大きな机を複数人で使用するミニ会議室のような設備にします。発想力を高めたい時は、視覚的な刺激を強調するようなカラーリングを施したり、寝転がって考えることができるように畳の部屋にしたりするなど、想像力を高める環境を工夫します。

これらのゾーニングは、これまでも先端的なIT系企業などで取り入れられていましたが、今後多くの企業で導入されていくと思います。既にゾーニングを導入している企業では、テレワークを行う際に自宅だと気が散って仕事に集中できない時は、会社の集中ゾーンに行って仕事をする人も多いそうです。

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2. フリーアドレス導入のステップと注意するポイント

ここでは、ゾーニングも含めた最新のフリーアドレスを導入する際の方法と注意点をご紹介します。

事前調査

全社の勤務実態を調査します。特に社内で業務を行っている時間と人数は詳細に把握します。これにより、最低限必要な席数を算出しましょう。また、部署ごとに、フリーアドレス化した場合のシミュレーションを行います。フリーアドレスが容易にできる部門と、製造現場のようにフリーアドレスに適さない部門もあります。また、経理部門のように機密情報を扱う場合は、書類やシステムから離れて作業することが難しい場合もあります。

環境を変えることで一時的な負荷がかかる場合も多々ありますので、フリーアドレス化する目的・意義とメリット・デメリットを客観的に予測する必要もあります。改装後のレイアウトやオフィス家具、内装デザインなど、従業員の希望を最大限取り入れて働きやすい環境を整えることが、フリーアドレスを定着させ効果を生み出す大きなポイントとなります。

導入で注意したいポイント

業務に必要な通信環境を整備します。セキュリティに十分配慮して、インターネットや複合機とのWi-Fi接続環境を構築します。また、電話回線からPHSやスマートフォンへの移行や問い合わせなどの対応についても方法やシステムを検討します。最近の傾向では、人的な電話取り次ぎを廃止し、AIによる自動応答システムを連携して担当者を絞り込んで対応する企業も増えています。

初期のフリーアドレスでは、自由に席を選択するというルールでも同じ場所に同じ人が座る例が多かったようです。導入後、しばらくすると席が固定化していたという話をよく耳にします。フリーアドレスのメリットの一つに、異なる部署の従業員がコミュニケーションを取ることで、今までになかったアイデアや発想が生まれたり、お互いに刺激を受けて組織全体が活性化したりすることがありますが、席の固定化はそのメリットを阻害することになります。また、固定化による席の取り合いなど、無用なトラブルも発生しかねません。これを防ぐために、出勤時に専用端末にIC社員証をタッチすると自動的に席が割り振られるシステムを導入する企業もあります。ゾーニングを利用している場合は、ゾーンごとの定員数の制約もありますので、事前に希望するゾーンと利用予定時間を入力して予約して利用する場合もあります。

これらの座席配置システムは、社内の座席指定だけでなくテレワークや外出先などの現在地情報を入力することで、誰がどこにいるかを瞬時に知ることができるようになります。そのため、勤務状況の把握や社内の連絡でとても便利な機能となります。また、コロナ禍においては罹患(りかん)した場合に付近で作業をしていた濃厚接触者の把握と連絡にも効果を発揮します。

ペーパーレス化=書類のデジタル化

フリーアドレス実施に向けた内装工事が始まる際には、引っ越しと同じようにデスク周りの整理をしなければなりません。その際に注意しなければいけないのが書類の整理です。引き出しやデスクの上にある書類や、ロッカーに保存している書類を整理します。ここでのポイントは「書類は全てデジタル化」です。契約書の原本などは機密書類・重要書類として保管しなければなりませんが、それ以外の書類はデジタル化して廃棄することが原則となります。通常、フリーアドレスでは個人が利用していたものは個々のロッカーで保管することになります。

まずは、個人ロッカーに収まる量に書類や荷物を整理する必要があるでしょう。さらに、将来的にABWを導入して自分の意志で勤務場所を選択していくこと想定すると、それらのロッカーも使わないワークスタイルとなります。事務用品は共同利用するなど、個人が専有で所持するものは業務上必要なものに限定することを徹底しましょう。

ルールの設定と周知

フリーアドレスやABWを導入する目的を明確にして、制度やルールを整備します。また、前述した電話応対や勤務場所の掲示、共用設備や備品の利用ルールなどを定め、周知を行います。社内問い合わせに対応したチャットボットを運用するなど、省力化することもポイントとなります。

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3. フリーアドレスの進化とABW

働き方改革が進展すると、フリーアドレスを導入する企業が増えABWに基づいて働くことが当たり前の社会となるかもしれません。自分の席を選ぶことが自発的・能動的に業務を行う第一歩となるのではないでしょうか。業務効率を向上させ、低成長社会でも確実に収益を出して存続していくためには、自発的に行動する従業員の育成が欠かせません。

フリーアドレスの導入は、年功序列型の終身雇用のイメージを大きく変える環境を創出します。フリーアドレスで見た目はカフェのように洗練された雰囲気のオフィスとなりますが、手を抜くと自分の席がなくなることを実感する厳しい環境にもなります。

最新のフリーアドレスの導入は、企業が完全にデジタル移行するための環境整備となります。DX時代に対応した企業全体の意識改革を推進し、能動的なアクションを起こす社員の育成を図るためにフリーアドレスそしてABWの導入を検討してみてはいかがでしょうか。

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4. 遠隔操作でPCを安全・快適に利用可能

リモート支援ツール

外出先や在宅勤務、社内でのフリーアドレスなど、PCをさまざまな場所から操作するためなら、快適さと安全性を両立させておきたいものです。大塚商会ではお客様のご予算・ご要望に合わせて最適なリモート支援ツールをご提案。「場所」による業務課題を解決します。

  • *本記事中に記載の肩書きや数値、社名、固有名詞、掲載の図版内容等は公開時点のものです。

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