2022年 9月 5日公開

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クラブ活動で従業員エンゲージメント向上

執筆:マネジメントリーダーWEB編集部

働き方改革が進み、多様な働き方が広まるにつれ懸念されるのが、企業と従業員の一体感の醸成です。共通の趣味や関心でつながるクラブ活動は企業と従業員、従業員同士の関係強化に貢献します。

1. 企業のクラブ活動とは

企業におけるクラブ活動は社員旅行や社内運動会などと同じように、福利厚生施策の一環として行われています。通常の業務では接することのない多様な部署の従業員同士が交流を持つことで幅広いコミュニケーションを取ることが可能になります。またこうしたクラブ活動は、業務と違って個人の興味や意思で参加しますので、共通の目的に向かって一体感が得やすいといわれています。

クラブ活動で期待される主なメリット

  • コミュニケーションの醸成
    業務以外での接点が生まれます。コミュニケーション機会だけでなく、仕事の時とは別の側面を知る場合もあるでしょう。
  • チームワークの形成
    活動を行う上で組織の序列とは別のチームワークや役割分担を行うことで、新たな人材の気づきや育成を行うことが可能になります。
  • リフレッシュによるストレス発散
    同じ趣味や関心を持つ仲間と余暇を過ごすことがリフレッシュやストレス発散の機会となります。
  • 健康増進(スポーツ系活動の場合)
    運動を伴う活動の場合はトレーニングなどで健康増進の効果が期待できます。
  • 活動を通して社外(地域や他社など)との交流機会が生まれる
    試合などのスポーツ活動やボランティア活動を通じて、地域社会の人々や取引先以外の企業との交流機会を持つことが可能となります。

このようにクラブ活動は企業に多くのメリットをもたらす可能性があります。普段の仕事以外の接点を持つことで新たな発想や取り組みにつながることもあるでしょう。仕事も余暇も充実させることで、業務効率や生産性を高める結果にもつながり得ます。その一方で、適切なマネジメントを施さないとトラブルが発生する場合もある点には注意しましょう。

クラブ活動で懸念されるデメリット

  • 多額の出費
    趣味と同じように、エスカレートしていくと多額の費用が掛かることがあります。スポーツ系の活動であれば、より高価な道具やウエアをそろえたり、著名なコーチ、トレーナーを招聘(しょうへい)したりすると費用がかさんできます。必要な範囲で会社からの補助などサポートを手厚くし、参加者に負担が掛からない運用を徹底しましょう。
  • 参加・不参加の格差
    クラブ活動を行っている人だけがメリットを感じるのでは、参加していない人の不満が高まることになります。スポーツなどのアウトドア系活動であれば試合の応援、インドア系の活動(音楽・料理・ゲームなど)であれば発表会などのイベントなど、活動に参加していない人でも楽しめる工夫をしましょう。普段は活動に参加していない同僚や家族がサポーターとして楽しめるように活動内容を可能な限り公開することをお勧めします。
  • 過度な活動
    企業のクラブ活動は「親睦」が基本です。試合など必要な場合を除いて参加を強制することは避けましょう。クラブ活動は、業務に比べてプライベートな側面が表に出やすい傾向にあります。そのため、活動以外にミーティングや飲み会を頻繁に行うと参加者の負担が大きくなり、かえって人間関係を不調にする場合もあります。福利厚生施策の一環であることを意識して、お互いに適切なコミュニケーションを取るように心がけましょう。

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2. 見直される「企業内クラブ活動」

昭和の高度経済成長期においては、企業と従業員が一体となって行動することが業容拡大に欠かせない要素でした。そのために社員旅行、忘年会・新年会、運動会などの福利厚生行事が盛んに行われていました。クラブ活動も盛んに行われ、競技によっては実業団チームとして、企業広報の一環でプロに匹敵する身体能力を備えた選手を社員として採用するケースもありました。

しかし近年は、価値観の多様化などでスポーツの世界でも実業団チームは減少傾向にあります。また、プライベートな余暇時間の重視や一般のスポーツクラブなどの普及により、企業内クラブも減少していました。

働き方の多様化と企業内クラブ活動

減少傾向の企業内クラブ活動でしたが、コロナ禍の発生した2020年以降は企業価値を高めるための福利厚生施策としての新たな企業内クラブ活動が注目を集めています。

大きな要因は、テレワークをはじめとした多様な働き方の浸透による価値観の変化です。これまでは、オフィスという物理的な空間で仕事をすることが当たり前でしたが、テレワークにより自宅やシェアオフィスなどオフィスを離れた場所でも業務が可能になりました。

ここで課題となっているのは、従業員が企業を信頼し高いロイヤリティを抱いて仕事を行うことです。言い換えると従業員エンゲージメントの向上、とも言えます。コロナ禍以前は、同じ職場で頻繁に共に飲食するなどして密接なコミュニケーションを図り、一体感を形成していました。しかし、感染拡大防止のために対面でコミュニケーションを取る機会が大幅に減少しています。これは特にチームで業務を行う必要がある業務を行っている企業では切実な課題となっていました。

そこで注目されたのがクラブ活動の活性化です。企業内のクラブ活動は、共通する趣味や嗜好(しこう)・関心を持つ人の集まりです。そのため仲間意識や一体感を醸成しやすい特性があるのです。

クラブ活動を通して従業員同士のコミュニケーションを深め、企業がクラブ活動を支援することにより従業員が企業に対してのロイヤリティを高め一体感を醸成することが期待できます。そのため、従来は一体感を高める必要がある従業員数の多い大手企業で活発に行われてきた企業内クラブ活動がベンチャー企業でも行われるようになっています。IT技術の進化や働き方の多様化がさらに促進する将来は、この傾向がさらに高まるものと思われます。

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3. クラブ活動の運営と総務部門の役割

企業内クラブ活動の運営の基本は以下の通りです。

  • クラブ活動の支援を行う経営姿勢の表明
    企業としてクラブ活動を行う従業員の支援を行い、活性化した企業風土づくりを行うことを表明します。
  • クラブ活動支援の具体化と環境の整備
    支援に必要な予算配分やメンバー募集告知、打ち合わせスペースの提供や活動報告用の社内SNSなど、クラブが成立するための支援環境整備。
  • クラブ設立・運営のルール策定
    1.設立ルール:設立目的、発起人、管理担当者、活動内容、想定予算、期待効果などを明文化します。
    設立申請に必要な要素をルール化します。
    2.運営ルール:部員管理、役割分担、活動頻度、活動報告、予算管理などの基本ルールを定めます。
    予算管理は税制上の扱い(経費処理)もありますので、会社負担(必要経費など)として認められる場合と、個人負担とする場合をあらかじめ明確にしておく必要があります。
  • 保険の整備
    活動内容に関連した保険を整備します。クラブ活動でのケガは労災の対象外となります。スポーツ安全保険(*)など、活動内容に適した保険を検討しましょう。
  • *スポーツ安全保険(公益財団法人スポーツ安全協会が運営するスポーツ団体保険)

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4. クラブ活動を支援する総務部門の役割

クラブ活動は福利厚生施策になりますので、総務・人事部門が管理することになります。注意ポイントは、実運営を部員にまるっきり任せてしまわないことです。報告書類をチェックするだけではクラブ活動は活性化しません。活動を盛り上げるための顧問やマネージャー的な役割でクラブを支援・育成していくことが必要です。

クラブ活動を活性化するためのアドバイスを行い、予算管理を中心に活動状況や参加者の動向を定期的に確認しましょう。活動内容については干渉しないのが原則ですが、人間関係やモチベーションについては注意深く見守るようにしましょう。クラブ活動が、新たな製品やサービス開発につながる場合もありますし、前述したように人材・能力の育成につながることもあります。クラブ活動=企業活動と捉えて、活発な企業風土を作ってください。

参考

一般社団法人 日本経済団体連合会「第64回 福利厚生費調査結果報告 2019年度(2019年4月~2020年3月)」(日本経済団体連合会のWebサイト<PDF>が開きます)

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5. クラブ活動の運用に業務アプリを活用

業務アプリ作成システム サイボウズ kintone(キントーン)

サイボウズのkintone(キントーン)は、気軽に使える「ファストシステム」をコンセプトにした業務アプリを作成するクラウドサービスです。メールや電話、Excelなどで行っているコミュニケーションをkintoneで一元管理できるため、活動記録、名簿、予算や備品の管理など、チーム内での情報共有が可能です。プログラミングは必要なく、多様なパーツを自由に組み合わせてフォームを作成できますので、チームのコミュニケーションに必要なアプリを簡単に作成できます。

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  • *本記事中に記載の肩書や数値、社名、固有名詞、掲載の図版内容などは公開時点のものです。

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