2022年11月 7日公開

読んで役立つ記事・コラム

うっかりコピペが招くリスクとは

執筆:マネジメントリーダーWEB編集部

仕事で資料を作成する際にコピー&ペースト(以下、コピペ)をしていませんか。手軽に必要な情報を流用できますが、用途によっては著作権侵害となる場合もあります。著作権のメリット・デメリットを理解しましょう。

1. 著作権とは

創作的に表現された表現物(文書、絵画、イラスト、写真、音楽、映像……など)に生じる知的財産権が著作権です。著作権は、著作者(作品を作った人)がその作品の用途(著作物)を決定する権利です。著作者は、創作した著作物によって収益を得る権利(著作財産権)を有します。また、著作物を世に広めるために、出版や演奏、CD/DVD、映画、放送などに加工する場合は、編集者や演奏者、監督、放送事業者など、さまざまな人々の手によって制作・伝達されます。この制作や伝達に関わった人々には著作隣接権が発生します。

知的財産権には、もう一つ産業財産権というものがあります。これは、ビジネスに直結しているので仕事上よく耳にする権利ではないでしょうか。技術の発明を保護する特許権や実用新案権、デザインを保護する意匠権、商品の名前やマークを保護する商標権などです。

著作権は創作した時点で権利が発生しますが、産業財産権は申請→審査→承認・登録というステップがあり、申請しても内容や類似申請などを厳しく審査されます。通常、商品開発の際には類似も含めて各種権利が登録されていないかを確認して登録申請を行います。

関連する法律として、不正競争防止法があります。これは人気商品にあやかった類似商品やネットの類似ドメイン名の不正使用禁止、企業秘密情報(ノウハウ、技術情報など)不正入手、利用の禁止、限定提供データの不正利用禁止などがあります。限定提供データとは、ビッグデータと呼ばれるものです。例えば、ニュースで「渋谷の人出は先週比○%」という情報を耳にすることがあるかと思いますが、このような携帯電話で計測した位置情報などが限定提供データに該当します。このようなデータを無断で事業展開に利用した場合は違法となります。

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2. 頻繁に改正される著作権法

著作権に関する法律は、インターネットやデジタル化の進展により頻繁に改正(省令レベルも含む)が行われています。例えば、2021年1月から施行された著作権法の改正では、ネット上の海賊版対策や著作権侵害コンテンツのダウンロード違法化、ライブ配信やスクリーンショットでの写り込み要件の緩和などが行われました。

写り込み要件は、コピペにも大きく関係します。例えば、写真やビデオを撮影する際に、室内であれば絵画、外であれば彫刻やモニュメントなどの著作物が背景に映る場合があります。これは厳密には著作権(複製権)の侵害となります。しかし、この改正によって、軽微で正当な範囲(利益の有無など)であれば適法となりました。スマートフォンによる撮影が一般的になるなど、映像コンテンツが急激に増えたことに対しての措置と思われます。

デジタルコンテンツは日々進化して、新しいサービスが次々と生まれています。そのため、著作権法の改正スピードも加速しています。改正の流れは、利用しやすいように規制緩和される傾向にありますが、反対に新たなコンテンツの保護規定も制定されることもあります。著作権法改正の動きについては注意が必要です。

参考

文化庁「著作権法及びプログラムの著作物に係る登録の特例に関する法律の一部を改正する法律の概要」(文化庁のWebサイト<PDF>が開きます)

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3. うっかりコピペを防ぐための方法

業務で多く利用する主な情報は以下のコンテンツではないでしょうか。

印刷物とデジタルデータと分けましたが、印刷物もPDF化されることが多くなりましたので、企業で利用するデータはほぼデジタル情報といっても過言ではないかもしれません。また、著作権は思想や感情の創作物を保護する法律となっていますので、企画書やマニュアルがそれに該当するのかはケース・バイ・ケースです。しかし、営業上の秘密など関連する法律が適用される可能性がありますので、これらの情報をコピペして使用する際は十分な注意が必要です。

コピペをする際の注意

1. 著作者の許諾を得る
著作者に連絡して、複製箇所と用途を伝え使用許諾を得ます。書籍や動画の場合は、製作した出版社や制作会社の許諾も必要になります(著作隣接権)。電話で許諾を得る場合もありますが、メールや文書などで許諾を得るほうがトラブル発生時の証拠となりますのでお勧めです。

2. ライセンス購入
写真やイラストなどを企業や商品の案内で、SNSを利用した告知を行う場合はライセンス(使用権)購入を行うことが一般的です。写真や音楽を用途に合わせて選択し、ダウンロードするサービスは数多くあります。用途に適した素材があるか、利用価格などで判断しましょう。予算がない場合はバリエーションや用途が限定されますが無料のサービスもありますので、検討してみてはいかがでしょうか。
イラスト、写真、音楽、動画などの創作物は、著作権管理が厳格に行われている場合が多いので(特に欧米の企業が管理しているコンテンツ)、不正なコピペをすると訴訟など、大きなトラブルになる可能性もあります。

3. 公開情報の利用
官公庁のホームページは、国民に周知を図る目的で運用されていますので許諾なしに使用することが可能です。ただし、出典の記載(当該ページ名称とURLの明示)は必ず行いましょう。また、グラフなどを加工した場合はその旨を記載してください。官公庁のコンテンツでもコンサルティング会社など外部委託で作成されたものは許諾が必要です。同様にロゴ、イラスト、写真なども製作者の著作隣接権が発生しているのでご注意ください。

詳細については、各官公庁のホームページをご確認ください。

参考

総務省「著作権について」(総務省のWebサイトが開きます)

厚生労働省「利用規約・リンク・著作権等」(厚生労働省のWebサイトが開きます)

経済産業省「利用規約」(経済産業省のWebサイトが開きます)

国税庁「国税庁ホームページ利用規約」(国税庁のWebサイトが開きます)

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4. コピペと情報セキュリティ

コピペは、必要な情報が一瞬のうちに正しく取得できるためとても便利な機能です。しかし、他人が作成した資料をコピペする場合は、著作権侵害となる可能性がありますので注意が必要です。特に社外へ公開する情報は、企業のコンプライアンス、信頼性に大きく影響しますので著作権を侵害していないかを慎重に確認することが必要です。

企業側の視点でコピペを考えると、自社の情報が安易に流出しないように情報セキュリティの徹底が求められます。VPNの使用やログ管理などのシステム強化を図るとともに、テレワークといった外部での業務を想定したセキュリティ研修などを行い、コピペリテラシー(マナー)の向上を図りましょう。

また、会社内では技術的なセキュリティを確立することはできても、従業員全世帯のセキュリティを技術的に確立することは困難です。教育研修で情報セキュリティ(著作権)の意識を啓発することでうっかりコピペやうっかりダウンロードのリスクを軽減しましょう。

著作権侵害トラブルの事例

ファイル共有ソフトの危険性

  1. 漫画を読むWebサイトにアクセス
  2. 閲覧するために指定されたファイル共有ソフトをインストール
  3. ダウンロードしたコンテンツが、ファイル共有ソフトの機能により同時に不特定多数にアップロードされる(利用者は気が付かない)
  4. 著作者から著作権侵害の賠償請求が届く

参考

独立行政法人 国民生活センター「まさか自分が著作権侵害?!-ファイル共有ソフトの安易な使用には危険がいっぱい!-」(国民生活センターのWebサイトが開きます)

総務省「国民のための情報セキュリティサイト 著作権侵害に注意」

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5. Adobe Stockなど、快適な制作環境を支援するサービス

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  • *本記事中に記載の肩書や数値、社名、固有名詞、掲載の図版内容などは公開時点のものです。

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