2022年12月 5日公開

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2025年のカウントダウンが始まった!

執筆:マネジメントリーダーWEB編集部

システムの老朽化などでDXが実現できないとした「2025年の崖」や、超高齢化社会となる「2025年問題」。変革期となる2025年に向けた取り組みについて解説します。

1. 2025年に何が起きるのか

数年前より、社会・経済的に大きな課題が生じる年として「2025年」が注目を集めています。経済産業省では、ITの既存システム(レガシーシステム)がブラックボックス化して、データの共有や活用に支障をきたして大きな経済損失が生じる事態を「2025年の崖」として警鐘を鳴らしています。また、少子高齢化が加速し超高齢化社会となる「2025年問題」では、労働人口の減少や要介護者の増加の可能性が指摘されています。

いずれも、企業の存続を左右する大きな課題となります。この課題に対処するために提唱されているのが「DX化」と「働き方改革」です。

課題1:2025年の崖と企業のDX化

2025年の崖を簡単にまとめると、老朽化したシステムを使い続けることで弊害が起きるということです。多くの企業では、1990年代から急速にIT化が進み、企業の各現場でそれぞれの業務処理に適したITシステムが導入されました。営業は顧客管理システム、製造では生産管理システム、総務・人事では労務管理システム、経理では経理システムや給与計算システムなどです。

これらのシステムの多くは特定の業務処理を目的に構築されているため、データの共有や連携が難しいというデメリットがあります。また、プログラムの改修を繰り返しているうちにシステムが複雑化・肥大化し、システム自体がブラックボックスとなってしまう場合もあります。そうなると新しい仕様への変更が困難となり、維持管理も多額の費用が掛かることになります。さらに懸念されるのがIT技術者の大幅な人員不足です。デジタルの一般的な普及と少子高齢化による労働力不足により、数十万人規模でIT技術者が不足する可能性が指摘されています。システムに不具合が生じても修復できないリスクも想定されます。

この状態を放置することで企業活動が硬直化し、即時性が求められるこれからの社会環境や経済活動に適応できなくなることが懸念されています。

経済産業省のレポートでは、企業がレガシーシステムを使用し続けると2025年以降最大で12兆円(年間)の経済損失が出ると予測しています。多額の経済損失=崖への転落という意味で「2025年の崖」というタイトル名のレポートを発表して大きな話題を呼びました。2025年としているのは、このレポートが作成された時点で、業務用で主流を占めているソフトウェアのサポート終了が2025年となっていたことが起因となっています。その後、サポート終了が2027年以降に延長されたため「2027年の崖」という場合もあるようです。

2025年に崖から転落することを回避する唯一の方法はDX(デジタルトランスフォーメーション)、つまり、デジタル企業へ変化することです。経済産業省ではDXを「ITシステムとビジネスを一体的に捉えて新たな価値創造に向けた企業戦略を描いていくこと」を第一に掲げています。

レガシーシステム

老朽化・肥大化したシステム

  • 業務ごとにシステム構築
  • 改修によりブラックボックス化
  • オンプレミス(自社内設置)が多い

DX型システム

デジタルとビジネスの一体化

  • 企業内の情報環境を全てデジタル化
  • 情報をオンライン共有し連携を図る
  • クラウド化でどこからでもアクセス

参考

経済産業省「DXレポート ~ITシステム「2025年の崖」の克服とDXの本格的な展開~」(経済産業省のWebサイト<PDF>が開きます)

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2. 2025年問題と働き方の多様化

2025年問題とは前述しているように、戦後のベビーブームで生まれた団塊の世代の人々が全て75歳以上の後期高齢者となることです。厚生労働省では、2025年に前期高齢者(65歳~74歳)と合わせて約3,500万人(全人口の30%)が65歳以上の高齢者になると推計しています。つまりわが国は、約3人に1人が65歳以上という高齢者大国になるのです。

2025年問題は、団塊の世代の高齢化と共に深刻化してきましたが、少子高齢化の傾向はここがピークなのではなく2025年以降も続きますので、さらに深刻な状況となることが懸念されます。社会全体が高齢化することで、介護や年金、医療負担の増加などが予想されますが、なにより大きな課題の一つは労働力不足です。

働き方改革は、過重労働を排除して健康で安心・安全に働くことで業務効率を向上させることを掲げていますが、その根底には少子高齢化に対応した労働力不足の解消があります。国がIT技術の利用で、テレワークなどの多様な働き方を推奨しているのもそのためです。

2025年問題は、定年の延長だけでなく、終身雇用制の見直しといった就業形態を大きく変化させる課題です。雇用形態や時間・場所にとらわれない働き方をすることで1人の人間が複数の企業の仕事をすることも可能になります。副業の解禁はこの流れに沿ったものとなります。

しかし、テレワークを導入した企業では実感していると思いますが、単に在宅勤務にしただけでは業務効率は向上しません。業務を適切にマネジメントするシステムがなければ、仕事の指示や評価などの管理も曖昧になり、コミュニケーション不足といった問題が浮き彫りになるだけとなります。また、対面や紙の書類に対応しなければならない業務があれば出社して対応する必要があります。

2025年問題に対処するためには、企業の就労環境を根本から見直し改革していく必要があります。現在の業務内容・就労形態を見直して、省力化・柔軟な組織を構築することで、大きな環境の変化に左右されない骨太な企業となることです。

参考

厚生労働省「今後の高齢化の進展 ~2025年の超高齢社会像~(2006年版)」(厚生労働省のWebサイト<PDF>が開きます)

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3. 2025年に向けたBX(ビジネストランスフォーメーション)を目指す

上述のように、2025年は社会・経済環境の大きな転換点となることが予測されています。これに対応するためには、デジタル環境を前提としたビジネスを展開する企業に変身することです。DXのXは「トランスフォーメーション:変換、変質、変化」という意味ですが、これを実現するためには企業自体が改革しデジタル企業として変化=トランスフォームする必要があります。アナログからデジタルへの転換、そしてDX化を前提としたビジネストランスフォーメーション=BXです。

BXを実現するためには、経営者の強い意志とそれを反映した中長期の戦略が必要です。BXは言い換えると企業の再構築といった大改革になります。2025年以降の環境変化に耐える企業となるためには、全部門・全社員が一丸となって業務を見直し、新しいシステムを横断的に構築しなければなりません。そこで必要となるのは、デジタルをフルに活用し新たな事業やサービスを生み出す企業風土づくりです。これを形成することにより無駄な業務を廃し、リフレッシュされたIT技術やAIを利用した省力化や無人化、それらによる生産性の向上と持続可能な企業活動が可能となります。

BXを実現するための具体的な展開は、経営者のビジョンを明確にして、それを反映した経営戦略を全ての従業員に周知するところから始まります。会社の目指す目的、効果と雇用形態などの労務環境変化についても詳しく説明し、理解を得ることが重要です。

企業活動がデジタル化するという前提で業務の見直しを行います。これは各事業部で詳細に検討したものを全社的視点で判断する必要があります。客観的な判断を行うために、必要度、デジタル化の難易度、省力化の難易度、統廃合した場合の影響度などを数値化して可視化することをお勧めします。

業務の見直しにより廃止される業務、アウトソーシングする業務、新たに必要となる業務を仕分けして新しい環境に対応した組織を構築します。これは常勤者、テレワーカー、社外専門家(フリーランス、副業者含む)など、雇用形態や労務管理方法も検討する必要があります。

従業員の働き方に大きく関わりますので、十分な周知と理解を得ることがポイントとなります。特に従来の業務に慣れ親しんでいる場合は、新しい組織や業務に対しての抵抗感や反発は大きくなりますので、その対策も準備しておかないとこの段階で計画がとん挫する可能性もあります。

企業のBXは、第二創業というべき改革となりますので、多大な労力と予算、時間が必要になります。また、2025年の崖や問題はデジタル化や少子高齢化と視点は異なりますが、デジタルを前提とした省力化と生産性の向上させることで課題解決するという目的は共通です。また、2025年はあくまでも大きな通過点というだけで、そこが最終ゴールや一過性の現象ではありません。2025年以降も変化は続くのです。

これからの変化に対応した持続する企業となるために、早急にBXに取り組みデジタル環境に適合した企業に変化することをお勧めします。2025年へのカウントダウンは、すでに始まっています。

参考

経済産業省「デジタルガバナンス・コード2.0(2022年9月版)」(経済産業省のWebサイト<PDF>が開きます)

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4. DXの推進がもたらす効果と働きやすさ

大塚商会が考える「DXオフィスとその活用」

昨今の日本では、企業がデータやデジタル技術を活用し、製品やサービス、ビジネスモデルを変革していくDXが推進されています。DXの推進は、企業が将来にわたって競争力を維持し続けるために必要な経営課題の一つです。大塚商会は本社ビルに「DXオフィス」を開設し、お客様の生産性向上に必要なオフィスのDXをさまざまな形で具現化しています。お客様のDX推進のヒントになるようにノウハウ、導入ツールなどを詳しく解説します。

大塚商会が考える「DXオフィスとその活用」

  • * 本記事中に記載の肩書や数値、社名、固有名詞、掲載の図版内容などは公開時点のものです。

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