2023年 3月 6日公開

【連載終了】読んで役立つ記事・コラム

リスキリングで人材は採用から育成へ

執筆:マネジメントリーダーWEB編集部

業務効率化により軽減された労力を、不足している業務に充てるための人材育成を行うのがリスキリングです。リスキリングで社内人材の育成と活用を検討してみましょう。

1. リスキリングとは

リスキリング(Reskilling)とは、従業員に新たなスキルを習得してもらうための取り組みのことです。これまでの社内研修で行われてきたのは、現在携わっている業務に必要とされる能力や技能を向上させることが主な目的でしたが、リスキリングでは今後の企業活動で必要となってくる別の新たな業務に対応するための能力開発を行います。

また、新たなスキルを学ぶという意味では「リカレント教育」も同義です。ただ、リカレント教育は、従業員がスキル習得のために勤務先を離職したり休業したりして大学などの教育機関に通って学習するものですが、リスキリングは新しい事業や部署への配属を前提としているため、所属している企業内で、在職のまま教育を行うことになります。

リスキリングが注目されたのは、2020年に開催されたダボス会議(世界経済フォーラム年次総会)で、「DX時代(第4次産業革命)により、数年で8,000万件の仕事がなくなり、9,700万件の新たな仕事が生まれる。そのため、2030年までに世界の10億人をリスキリングする」と宣言されたことがきっかけでした。新たに発生するスキルはさまざまですが、一般的にリスキリングが意味するスキルはDXに対応するスキルとなります。

リスキリングが企業課題となる背景は「DXと少子高齢化」

2020年以降、働き方改革やDX推進の動きが加速しているといわれています。例えば、商品の販売では、店舗での対面販売からオンラインによるネット販売に移行しつつあります。言い換えると対面販売から無人販売への転換ということになります。そうすると、販売担当者は不要となり別の仕事に従事することになります。その一方で、オンライン販売を行うためのシステム開発や運用の担当者が新たに必要になってきます。

DX時代になると、企業活動の多くがオンラインやバーチャル化するため、IT技術者が大量に不足するといわれています。さらに、日本においては少子高齢化による働き手不足も深刻化しています。この解決策として注目されているのがリスキリングによる企業内部での人材育成です。

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2. リスキリングを導入するために必要なこと

リスキリングが従来のスキルアップと大きく異なるのが、新たな事業や業務に備えた人材を育成する点です。将来の組織変更やそれに伴う配置転換を前提として実施するため、企業の将来ビジョンと具体的な経営計画に基づいて人材配置を想定することが必要となります。

  • 中長期計画に沿った組織と人材配置
    いつまでに、どのようなスキルを持った人材が、何人必要なのかを具体的にする必要があります。その際に採用に頼らず、社内人材リソースを有効活用することを前提として検討します。
  • 必要となるスキルの具体化
    DXでは、AIやビッグデータを扱うスキルが必要となるといわれていますが、既存システムの改修やメンテナンスを行う人材不足も懸念されています。企業の将来ビジョンと現状を分析して、今後の事業展開で必要となる人材とスキルを明確にします。
  • リスキリング対象者の選定
    人事考課(評価)や本人の意向を基にリスキリングの対象者を選定します。事業展開によっては部署全体がリスキリングの対象となる場合もあります。ここでのポイントは、企業・従業員ともに「新たな発見や可能性」を見いだすことです。特に本人が希望していない場合は、新たな業務やそれに自分がやっていけるのかという大きな不安が伴うでしょう。無理強いするのではなく、新たな世界へのチャレンジを啓発し、企業が責任を持って能力開発のためのサポートを行うことを周知しましょう。
  • リスキリングプログラムの構築
    人材育成のための教育プログラムを構築します。新規業務のため、社内に講師として適切な人材がいない場合は外部の専門家を招きます。また、知識や能力開発だけではなく、経営層から将来ビジョンを伝え、企業人としての意識を高めていくことも重要です。新たなスキルを獲得すると同時に、従業員満足度を高めてモチベーションアップに寄与するような研修プログラムを検討しましょう。

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3. 高齢者雇用とリスキリング

リスキリングの効果を期待したいのが高齢者雇用です。高齢者はITに不適とのイメージもありますが、60代の世代は、現役時代にPCを活用していた世代なので基本的なITリテラシーを身につけている方は多いのです。

DX時代でテレワーク環境もさらに充実することを考えるとデータ分析やセキュリティ管理、システム運営業務での高齢者の活躍が期待できます。若手の社員が年を経て高齢化した際に、窓際族になるのではなく、リスキリングで新しい環境が用意されていることをアピールしていくことが、人材の流出を防ぎ、企業エンゲージメントを向上させる第一歩になるのではないでしょうか。

高齢者のリスキリングを成功させるポイントは、常に新しいことにチャレンジし、自分の可能性を見いだす機会の創出です。年を取ってから慌てることがないように、入社の段階からジョブローテーションを積極的に行いましょう。そして、長期的な視点で豊かな経験とスキルを持つ人材を育成し、活躍するステージを形成することがリスキリングの理想の展開となります。

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4. リスキリングと総務の役割

リスキリング自体は人材育成プログラムであるため、人事や研修担当者がメインとなる場合が多いと思います。しかし、リスキリングは企業全体の組織変更や配置転換を前提として行われるという性質上、経営層の意思を全社に浸透させることが必要となります。何より大切なのが新しい時代に立ち向かうための企業風土を形成することです。リスキリングを後押しするために、新しいことにチャレンジする人を応援する風土を作ることが総務部門の大きな役割となります。

DX時代では、高度な社内インフラを開発し運用するために総務部門もITスキルを持った担当者が必要になります。リスキリングで総務=ITエキスパートの集団となることが企業を骨太にする方法になるかもしれません。

経済産業省「経済産業省の取組(令和4年2月)」(経済産業省のWebサイト<PDF>が開きます)

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