2023年 3月 8日公開

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業務効率アップを推進する電子申請の活用

執筆:マネジメントリーダーWEB編集部

2020年4月から電子申請が義務化されてはや3年。官公庁や自治体の申請や届け出の多くがオンライン化されています。ここであらためて電子申請の詳細について解説します。

1. 行政手続きの簡素化と電子申請

企業の申請や届け出などの労力やコストを軽減するという働き方改革の一環として、これまでの用紙に記入する申請ではなく、オンラインによる電子申請を受理できるように行政手続きの簡素化が行われました。そして、大規模な法人など、特定の法人を対象に2020年4月より電子申請が義務化されています。その「特定の法人」とは以下の通りです。

  1. 資本金または出資金額が1億円を超える法人
  2. 保険業法による相互会社
  3. 投資法人(特定資産への投資・運用を目的として設立された法人)
  4. 特定目的会社(不動産などの資産を流動化する法律に基づき設立された法人)

資本金1億円以上の大規模な企業が義務化対象となっていますが、行政手続きが簡素化されるメリットは中小企業でも変わりません。また、インボイス制度の実施や電子帳簿保存法改正の宥恕(ゆうじょ)措置の終了など、通常の商取引でも電子化の流れが加速しており、今後は企業規模や義務化の有無に関係なく電子申請を利用する機会が増えてくると思われます。特に中小企業においては人手不足の懸念もありますので、電子申請の活用による申請・届け出の労力軽減は大きなメリットになるのではないでしょうか。

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2. 電子申請のメリット

では、電子申請によってどれだけの効果が得られるのでしょう。

コスト削減

2018年に公開された内閣府の行政手続きコストの試算によると、手続きの簡素化によるコスト削減効果は日本全体で年間約7,700万時間、金額換算で1,958億円/年(削減率22.2%)となっています。

出典元:内閣府:行政手続コスト削減に向けて(見直し結果と今後の方針)P.3を参考に作成
(https://www8.cao.go.jp/kisei-kaikaku/suishin/publication/cost/180424hontai.pdf)

作業時間だけでなく、申請のための往復の交通費や郵送費なども含めると、大幅なコスト削減効果が期待されます。

常時申請可能

通常は平日の日中時間帯となっている申請受付時間に関わらず、365日24時間申請することが可能になります。

個人情報の保護

社会保険関連の書類は、盗難や置き忘れなどで個人情報が流出するリスクがありましたが、セキュリティ対策を徹底することで情報流出のリスクは軽減されます。

手数料の電子納付

電子申請の場合は、申請手数料がインターネットバンキング、モバイルバンキングなどによる電子納付が可能です。さらに会計ソフトと連動している場合は、費用処理の手間も軽減されます。

外部API対応ソフトとの連携

API(Application Programming Interface)対応ソフトとは、インターネット上で異なるソフトウェアやプログラムの連携が可能となるソフトウェアのことです。これにより、官公庁の申請システムと企業の会計や労務管理システムと連携して全ての作業がWeb上で完結することになります。社内システム側を整備する必要がありますが、大幅な作業時間短縮と労務の軽減につながります。

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3. 電子申請のデメリット

業務効率アップを推進する上では欠かせない電子申請ですが、その申請を円滑に行うためには幾つかの注意点もあります。

電子申請対応の準備

前述しているように、電子申請の効果は、社内の会計・労務管理システムと連動することで大きなメリットを得ることができます。しかし、システムの整備連携には時間と費用が掛かりますし、運用する担当者の教育・習熟期間も必要です。申請手続きのルールや承認権限、個人情報などの情報保護規定、電子帳簿保存法に対応したデータの保存・保管ルールなども整備する必要があります。

申請内容のチェック体制確立

窓口で申請する際は、記載内容の記入漏れや単純な間違いがその場で確認され、修正した上で申請することが可能でした。しかし、電子申請の場合は空欄や間違った記載があってもいったん受理され、後日差し戻されるケースがあります。申請締め切り間際の場合は、間に合わない危険性もありますので注意が必要です(申請システムによっては空欄や誤記入があると送信前にアラートが出て修正しないと次のステップに進めないものもあります)。

電子申請に未対応のケース

電子申請義務化によって、官公庁や自治体では電子申請システムの整備を急ピッチで進めています。通常の企業で申請や届け出の頻度が高いとされる通常の税務関係や、社会保険関係の手続きは電子申請が可能となっています。しかし、申請手順が複雑であったり、申請需要が少なかったり、記載内容が定型化しにくいなどの場合は電子申請ができないケースもあります。

行政手続きの電子化状況をまとめたデジタル庁の「オンライン化を実施する行政手続の一覧等」によると、これからデジタル化対応する申請手続きが多くあることが分かります。ただし、2022年が整備目標となっている手続きもあるため、既に電子申請が可能となっている場合もあると思われます。電子申請を検討する場合は、受付窓口となる官公庁・自治体に確認してみることをお勧めします。

また、届け出の頻度が高い健康保険組合の電子申請は、企業が所属している健康保険組合によって受付状況が異なりますので、これも事前に確認してください。

参考

デジタル庁「オンライン化を実施する行政手続の一覧等」(デジタル庁のWebサイト<PDF>が開きます)

厚生労働省「健康保険組合における電子申請環境の受付体制状況について」(厚生労働省のWebサイト<PDF>が開きます)

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4. 電子申請に対応した社内インフラの整備

今の世の中は、生活の面においても電子化が進んでいます。マイナンバーカードで住民票などの書類がコンビニエンスストアでいつでも取得できる自治体も増えていますし、そのほかにも電子マネーによるキャッシュレス化やセルフレジの普及など、生活全般のデジタル化が加速しています。

企業活動においてもDXというデジタル化の波が押し寄せています。もし、デジタル化に未対応でどのように対応してよいのか分からない場合、官公庁の電子申請システムはインフラ整備の指標となってくると思われます。自社のデジタル対応の準備がまだ整っていない場合は、最低限官公庁の電子申請に対応したシステムを用意すれば間違いないということになります。

これまで解説してきたように、電子申請に対応するメリットは、中堅・中小企業でも大きいのです。業務効率アップを推進し生産性の向上や収益の拡大を図る手段として、電子申請対応をきっかけに社内のDX化を検討してみてはいかがでしょうか。ただ、社内インフラの整備と習熟には時間が掛かります。中小企業に対しての電子申請義務化を待って整備に取り掛かるのではなく、できるだけ早期に整備を進めて業務効率アップのメリットを享受されることをお勧めします。

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5. 電子帳簿保存法対応も安心の統合型グループウェア

統合型グループウェア eValue V 2nd Edition

「eValue V」シリーズは企業のグループワークに必要な機能を網羅した統合型グループウェアです。改正電子帳簿保存法へ対応しており、「SMILE V」と連携することでオフィス業務をまるごと支援できます。また、大塚商会では、電帳法の「国税関係書類のスキャナー保存」と「電子取引データ保存」を実施するにあたり、企業の適正なデータ保存を行うために必要な社内規定のサンプルをご提供しています。

  • * 本記事中に記載の肩書や数値、社名、固有名詞、掲載の図版内容などは公開時点のものです。

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