2023年 3月17日公開

読んで役立つ記事・コラム

テレワーク時代の社宅・社員寮を考える

執筆:マネジメントリーダーWEB編集部

労務環境だけでなく、従業員の生活も支える社宅や社員寮は福利厚生の大きな柱となっています。働き方の多様化を見据えた住環境整備を検討してみてはいかがでしょうか。

1. 福利厚生制度としての社宅とは

企業が従業員およびその家族が居住するために用意した住居を社宅といいます(官公庁の場合は官舎)。企業が社宅制度を導入する目的は、従業員の待遇を向上させ安定した雇用を図るためです。業務によっては、非常時に即応する必要があるなどの理由で、職場と隣接して社宅が用意される場合もあります。また、転勤の多い企業では、転勤時に住居を探す手間や新生活の不安を軽減する要素もあります。

いずれにしても、従業員が社宅を利用することで一般的な住居賃貸にかかる費用が軽減されるといったメリットがあります。企業は社宅を持つことで、社宅の維持管理経費(自社保有の場合)や家賃補塡(ほてん)(賃貸の場合)の負担がかかりますが、従業員の居住環境をサポートすることで、長期的に安定して雇用できるメリットがあります。

社宅の種類

社宅制度については法律としての定義はありません。そのため、職場と住居が同一の建物内にある場合や、勤務場所から遠く離れた場所に設置されている場合など、建物の形態や規模も含めてさまざまな社宅があります。

1950年代から始まった高度成長期には、公営団地並みの大規模な社宅も多く建設されました。しかし、建物や設備の老朽化が進み、維持管理費用の高騰や建て替え費用の負担がかかるため、売却や転用されるケースも多くなっています。特に都市部ではまとまった広い用地の取得も困難なため、現在では賃貸物件を利用する「借り上げ社宅」が主流となっています。

借り上げ社宅は、賃貸物件を企業が借り上げて、従業員に提供するものです。集合住宅を一棟まとめて借り上げる場合もあれば、戸建てや集合住宅の一室を個別に借り上げる場合もあります。通勤の利便性が良い場所を選定するのが理想ですが、都市部の場合は賃貸料の関係から郊外の物件となる場合も少なくありません。

また、社宅には主に独身者を対象とした「社員寮」があります。以前は、同一の部屋に複数の従業員が住む社員寮も多くありましたが、現在では個室が主流となっています。独身者を対象とした場合は、学校の寮などと同じように食事を提供するケースもあります。また、企業向けに食事つきの社員寮を部屋単位で賃貸するサービスもあり、それを利用するケースもあるようです。また、シェアハウスを借り上げるなど、社員寮の多様化も進んでいます。

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2. 社宅の管理方法

社宅の管理方法は、自社保有社宅と借り上げ社宅では取り扱いが大きく異なります。

  1. 自社保有社宅の管理

    自社保有の場合は、不動産としての資産価値を有するため、社屋や工場などの施設管理と同じ扱いになります。社宅を管理する部署や担当者を自社の責任で配置し、建物や水道光熱設備を中心に定期的に巡回してメンテナンスを行います。

  2. 借り上げ社宅の管理

    借り上げ社宅の場合は、不動産管理会社や賃貸物件の所有者と連携しながら管理することとなります。基本としては、企業が法人賃貸契約を交わす際の条件に準じる形になります。住居の設備についてのメンテナンスが所有者 or 居住者のどちらが負担するのかなど、共益費の内容と併せて確認のうえ契約を交わします。

    住居設備に不具合が生じた場合は、居住する従業員→所属企業の総務部門(社宅管理担当者)→契約不動産会社(所有者)というルートで連絡する必要があるため、タイミングによっては若干対応が遅くなるケースも生じます。このような居住者の不利が想定される事柄については、事前に十分に周知しておくことが望まれます。

  3. 管理規定

    社宅(社員寮含む)の管理規定は、社宅の形態によってさまざまですが、以下の基本事項は明示しておく必要があります。

  • 入居資格(対象となる物件ごとに規定)
  • 従業員負担費用
  • 入退去の手続き方法
  • 光熱費の契約、負担(企業契約の場合は徴収時期・方法も含めて規定)
  • 居住に伴う順守事項(設備のメンテナンス、更新、廃棄物のルールなど)
  • 賃貸の場合は退去時の原状復帰やその費用

これらの規定は、マニュアル化して居住希望者に配布し、入居誓約書という形式で同意を得ることをお勧めします。

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3. テレワーク時代の社宅=サテライトオフィス化

働き方の多様化で、テレワークが普及してきました。しかし、社宅の設備が以前のままでは在宅勤務の効率が上がりません。テレワークに対応した社宅となるためには以下の改善が必要です。

  • 通信環境の改善
  • 在宅勤務の作業スペース確保

特に、リモート会議などを実施するためには高速・大容量の通信回線確保が課題となります。集合住宅を借り上げている場合は、回線設備が容易に変更できない場合もあります。その場合は、モバイル通信などを利用するなど、使い勝手の良い代替え手段を確保する必要があるでしょう。

また、家族と生活し手狭となっている住居スペースに新たに業務スペースを設けることは極めて困難かもしれません。会議の参加や電話などの会話が情報漏えいにつながるリスクもあります。反対に仕事中に家族の発する生活音が打ち合わせ相手や取引先に聞かれる可能性もあります。

このように、在宅勤務を行う設備やスペースについては、課題解決に時間と費用がかかる可能性があります。ただ、個人の住宅に会社の意向を反映させるのは困難ですが、社宅や社員寮という企業が管理する居住スペースであれば、リモートワークを前提とした社宅の構築も可能となるのです。

例えば、通常出社と在宅勤務が混在するハイブリッドワークの場合は、賃貸料が比較的安い郊外に社宅を設置し、費用が軽減する分を在宅勤務のための設備やスペースに投資することも可能となります。また、複数の社宅をまとめて、社宅棟内もしくは近隣に簡易なサテライトオフィスを設置するという方法もあるでしょう。

通常のテレワークでは、孤独感などコミュニケーションの問題を生じる場合がありますが、複数名が働くサテライトオフィスの場合は、オフィスに近い環境での勤務となるので、孤独を感じることは軽減します。

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4. これからの社宅の在り方を考える

社宅は、従業員の生活の場を企業がサポートするという大きな福利厚生事業です。多様な働き方が進むなか、企業と従業員の一体感の醸成が大きな課題となっています。

前述のように、社宅制度は従業員が仕事だけでなく、生活も含めてサポートを受けていることを実感できる大きな要因となります。テレワークや多様な働き方を前提とした有機的な社宅(社員寮)を検討してみてはいかがでしょうか。

社宅は住環境の補助を前提として生まれた制度ですが、これからはワークライフバランスやワーケーションといった新たな働き方を実現する制度としても検討してみましょう。最近では、オフィス移転などに係る助成制度を用意する自治体も増えていますので、このような制度を利用してみるのも良いかもしれません。

社宅制度というと旧態然としたイメージがあります。しかし、発想を変えると「仕事+生活」を総合的にサポートする福利厚生が、従業員エンゲージメントや企業の一体感を醸成する大きな目玉施策となる可能性があります。

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5. 社宅を活用して家庭と仕事の両立、多様な働き方を実現

働き方改革を実現するソリューション

企業が社会・経済環境の変化へ迅速に対応し存続していくためには「働き方改革」の推進が不可欠です。テレワークや多様な働き方を前提とした有機的な社宅(社員寮)を活用すれば、従業員が安心して家庭と仕事の両立やライフイベントに対応した労働環境を構築することができます。大塚商会では、社員が時間と場所の制約にとらわれない柔軟な働き方を推進するソリューションやサービスをご提供しています。

  • * 本記事中に記載の肩書や数値、社名、固有名詞、掲載の図版内容などは公開時点のものです。

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