共に働く新入社員を迎え入れ、育成するためには周到な準備が必要
定期採用の新入社員は、企業の中枢を担う貴重な戦力として位置付けられています。入社行事はセレモニーとしても重要ですが、新人育成のための戦略的な視点で準備を行う必要があります。
・入社式(基本編)
定期採用の新入社員を迎え入れるための「入社式」を重要なセレモニーとして位置付け、厳粛に執り行う企業は多いのではないでしょうか。
一方で、最近では採用の多様化により中途採用者の割合が増えているため、入社式は導入研修のプログラムの一部として行い、式典要素を少なくする企業もあります。また会社の特徴を表すために、先輩と新入社員がお互いの靴を磨き合う「靴磨き入社式」や、全て英語で行うなどのユニークな入社式を実施する企業もあります。始めに基本的な入社式の運営方法をご紹介します。
・入社式の準備
入社式は通常、新年度が始まる4月1日(土日の場合は4月最初の平日)の午前中に行います。会社として定期採用した社員を正式に社員として迎える日であり、新入社員にとっては社会人としての初日となります。お互いに期待と不安で迎えるその日は、式は厳粛な中にも温かみのあるものにすることが大切です。
- 会場を決定する
会場は社内の会議室が基本となりますが、式の内容や参加者の人数によっては外部の貸し会議室やホテルの宴会場を借りることもあります。入社式終了後に役員や先輩社員と新入社員が共に会食する場合は、宴会場や飲食のケータリングを利用することも検討します。外部の会場を手配する場合は他社からの予約も同じ時期に集中するため、数カ月前に会場を確保することをお勧めします。
- 役員・管理職のスケジュール確認/あいさつなどの依頼
当日出席する役員や管理職のスケジュールを確認します。また、司会やあいさつを行う方にはその旨も併せて依頼します。
- 式次第の作成と会場レイアウトの検討
会場と出席者の調整が終わったら、次に式次第を作成します。式次第とは、式の順序のことです。基本的な入社式の式次第は、以下のような形となっています。
式自体は短時間に要領よく進行することが原則です。全体で30分程度にまとめることを目指してください。特にあいさつは訓示めいた話を長々とするのではなく、伝えたいポイントのみを簡潔に3分以内にまとめてもらうよう依頼しましょう。
会場レイアウトの基本は、正面に演壇と入社式看板、もしくは企業CI(ロゴ)、向かって右側に社長役員席、左側に司会者、幹部社員が並びます。式次第ではプロジェクターで投影し、式の前後で企業ビデオやビデオメッセージを流します。新入社員の後方に、社員や新入社員の家族席を設けます。
- 懇親会・会食
入社式終了後に歓迎パーティーや会食をすることもあります。新入社員は緊張し遠慮しがちになりますので、役員や上司・先輩社員は自ら話し掛けるようにしましょう。なるべく多くの方々と会話することを目的とする場合は、立食形式をお勧めします。
- 入社式の案内
式次第が決定したら、新入社員に案内状を手渡し、または送付します。通常は内定者の事前研修時に入社式の案内をしますが、その際に出席の際の注意点を周知します。注意点の例としては、以下のようなものが挙げられます。
- 服装について
- 自己紹介について
- 入社手続きに必要な書類や印鑑について
- 父母の同伴について(*)
- * 近年は新入社員の父母もステークホルダーの一員として、入社式の参加を認める傾向にあります。ただし会場のキャパシティーの問題や、研修の中で辞令交付を行う場合は、別室でモニターを視聴する形態を検討することやご遠慮いただく場合もあります。いずれにしても案内を配布する際にきちんと説明しましょう。
・入社式(応用編)
式典(セレモニー)としての入社式は前述したとおりですが、新入社員が入社したことを体感するために、イベント仕立ての入社式を行うケースも増えているようです。また、社員との交流を深めるために「第1部:式典/第2部:アトラクション」の2部構成にして、アトラクションでは会社や業務に関してのクイズ大会をするなど、さまざまな工夫を凝らした入社式を行う企業もあります。
・特色ある入社式を行うために
特色ある入社式を行うためには、経営者の意思が明確でなければなりません。そのうえで新入社員に対して企業メッセージを分かりやすく伝えるために、新入社員と世代の近い若手社員を中心に実施運営することが有効です。
- プロジェクトの立ち上げ
経営トップが主体となって、若手社員を中心に選抜した「入社式プロジェクト」を結成します。このプロジェクトメンバーが主体となって、企画立案を行い、式当日の役割分担を行い実行します。総務・人事部門は、プロジェクトで決定された内容に沿って予算管理や全社調整をします。
- 企画立案
入社式の目的を明確にします。例えば、社風の理解・体感や業務内容の理解、会社の未来を共感する、など新入社員に伝えたいメッセージを具現化する式とします。企画の段階では、目的が達成される内容となるのかを中心に実施可能か(無理はないか)、失敗のリスクがないかを徹底的に検証しましょう。例えば、「入社式アトラクションとして社外のグラウンドを借りて、部署対抗運動会をやろう!」という企画を立てた場合、雨が降ったらどうするのか、ケガが発生したらどうするのかなどのリスクを想定して対策を考えます。
企業活動が広域にわたる会社では、テレビ会議やWeb会議システムの利用も役立ちます。支店や営業所のスタッフ、海外勤務中の社員からのメッセージなどの放映や質疑応答を簡単に行うことができます。先輩社員や現場の都合が悪い場合や、回線の接続状態が不安定で、不具合が生じる可能性がある場合は、事前に動画メッセージを送ってもらい状況に応じて切り替えられるよう準備しておけば完璧です。
- 実施
プロジェクトメンバーが役割分担をし、それぞれのパートの責任者として運営に携わります。年度末の多忙な時期に準備を行うことになり、自分の業務と入社式準備を調整するのは大変ですが、どちらも重要な業務と捉え効率よくこなしましょう。
- 広報
特色ある入社式を行う場合、新聞やテレビなどでのPRを目的とする場合があります。その場合は、広報担当者とも連携して、マスコミ各社に取材依頼をするなど積極的な広報活動を行います。手間は掛かりますが実際にニュースで紹介されると、大きな注目を浴び、新入社員への印象も高まります。