2023年 2月20日公開

【連載終了】読んで役立つ記事・コラム

中小企業の猶予期間がついに終了! 月60時間超の割増賃金率が引き上げられます

著者:岩野 麻子(いわの あさこ)

2023年4月から、中小企業も月60時間を超える時間外労働の割増賃金率が「50%以上」となります。就業規則の変更、給与計算ソフトや勤怠システムの設定変更、従業員への周知など、必要な対応はもうお済みでしょうか。

1. 労働基準法の改正概要

2010年4月1日に施行された改正労働基準法は、以下の項目について、中小企業は猶予期間が設けられていました。改正の内容の概要は以下の通りです。

使用者が、労働時間を延長し、または休日に労働させた場合においては、その時間またはその日の労働については、通常の労働時間または労働日の賃金の計算額の2割5分以上5割以下の範囲内で、それぞれ政令で定める率以上の率で計算した割増賃金を支払わなければならない。ただし、当該延長して労働させた時間が1カ月について60時間を超えた場合においては、その超えた時間の労働については、通常の労働時間の賃金の計算額の5割以上の率で計算した割増賃金を支払わなければならない(労働基準法第37条1項)。

出典元:厚生労働省「2023年4月1日から月60時間を超える時間外労働の割増賃金率が引き上げられます」
https://www.mhlw.go.jp/content/000930914.pdf

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2. 割増賃金率の整理

ひと月あたりの法定時間外労働が60時間を超えると、割増賃金率が25%から50%に変更となります。これが夜22時以降~翌朝5時の時間帯の場合、25%の深夜割り増しと合わせて75%の割増賃金率となります。

時間外・休日労働割増賃金率
法定時間外労働(月60時間以内)25%以上
法定時間外労働(月60時間超)50%以上
法定時間外労働+深夜(月60時間以内)50%以上
法定時間外労働+深夜(月60時間超)75%以上
法定休日労働35%以上

割増賃金に関する注意点

法定休日には法定時間外労働の概念がないため、割増賃金率に変更はありません。そのため、割増賃金計算に誤解が生じないよう、事業場の休日については就業規則などにより法定休日を特定しておくなど、法定休日と所定休日の区別を明確にしておくとよいでしょう。また、「1カ月あたり60時間超」の「1カ月」の起算日は、就業規則などに別段の定めがない場合は、原則として賃金計算期間の初日を起算日として取り扱います。

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3. 代替休暇の創設

代替休暇は、ひと月当たり60時間を超える法定時間外労働を行った労働者に対し、休息の機会を与え、労働者の健康を確保する目的で創設されました。これにより、労働者が代替休暇を取得したときは、新たに創設された差額部分の割増賃金を支払わなくてよいこととなります(労働基準法37条3項)。
代替休暇を創設するためには、「法定割増賃金率の引き上げ分の割増賃金の支払いに代え、有給の休暇を与える」ことについての労使協定の締結が必要です。

代替休暇創設の主な要件

 主な要件など具体例
取得単位1日または半日半日取得(4時間分)
付与期間法定時間外労働が60時間を超えた月の末日の翌日から2カ月以内4月の法定時間外労働が76時間の場合、6月末日までに取得する必要あり
付与できる時間数(1カ月の時間外労働時間数-60時間)×換算率(76時間-60時間)×0.25=4時間
※4時間分の代替休暇を取得可能。

代替休暇付与時の注意点

代替休暇を取得できるのは、50%の割増賃金率が適用される部分のうち、通常の割増賃金(25%の割増賃金率が適用される部分)を超える割増賃金部分(50%-25%=25%の部分)についてのみです。
従来の25%の割増賃金は、代替休暇を取得する場合であっても、従来通り支給が必要です。また、本人から代替休暇取得の意向があったにも関わらず、結果として代替休暇を2カ月以内に取得できなかった場合は、割増賃金の支払いが必要となります。

担っている役割や業務内容によっては、法定時間外労働の削減はもちろんのこと、代替休暇の取得も困難である場合もあるかと思います。とはいえ、50%以上の割増率は企業側にとってもなかなか負担が大きいものです。これを機に「1カ月あたりの法定時間外労働が45時間を超える場合は、上長の許可が必要」とするなど、60時間を超える時間外労働が発生しにくい仕組みづくりを検討してみてはいかがでしょうか。

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