2023年 2月17日公開

読んで役立つ記事・コラム

快適な週休3日制を導入するには

著者:岩野 麻子(いわの あさこ)

週休3日制(週4日勤務)を導入する企業がじわじわ増えつつありますが、一方で「導入したもののうまくいかない」「意外とストレスがある」という声も耳にします。導入実績が少ないものの、働き手からは根強い人気のある週休3日制。うまく取り入れられれば、採用力の強化や社員満足度のアップにも効果はありそうです。

1. 制度導入の目的は明確に

あなたの会社で週休3日制を導入するとしたら、その目的は何でしょうか。「育児・介護離職を防ぎたい」「自由度の高い働き方で自社の魅力度をアップ」「売り上げの低迷が続いているため、人件費を削減したい」など、会社が週休3日制を導入したいと考える目的が違えば、同じ「週休3日制」でも制度は大きく異なります。

働き手のペルソナの明確化も重要

週休3日制を希望する典型的な働き手(働き手のペルソナ)を大きく3パターンに分けて整理しました。実際は個々人によってニーズは異なりますので、一例として参考にしてみてください。

働き手のペルソナワークライフバランス重視型自由度UP型副業との両立型
希望すること育児、介護その他、自分の時間、家族との時間を大切にしたい自由度の高い企業で働きたい他に副業があり、平日にその時間を捻出したい
在宅勤務希望する希望する人による
フレックスタイムライフとの両立ができるならどちらでもよい希望する副業との両立ができるならどちらでもよい
業務量減らしたい多少多くても良い人による
残業できないできるできる
給与業務量に応じて多少減っても良い稼ぎたいが、休めることも大事副業との収入の割合による

週休3日制の導入は、会社にとっての目的と、どのような働き手に向けたものなのかのマッチングにズレがあると、働き手にとって快適な制度とはなりません。導入目的の明確化とともに、社員にどのように働いてほしいと願ってのものなのかを必ず併せて検討するようにしましょう。

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2. 制度・労働条件について

週休3日制の導入目的や、働き手とのマッチングを検討したら、いよいよ制度設計を行います。導入目的や働き手のペルソナごとに、マッチしやすい制度案、労働条件案を検討してみました。

導入の目的育児・介護離職を防ぎたい自由度の高い働き方で企業の魅力付けを行いたい売り上げの低迷が続いているため、人件費を削減したい
働き手のペルソナワークライフバランス重視型自由度UP型副業との両立型
対象者対象者・希望者のみ原則として全員が対象原則として希望者のみ
労働時間
制度
週休2日制で短時間勤務、または週休3日制で通常勤務フレックスタイム制、職種によっては、専門業務型裁量労働制など1週間または1カ月単位の変形労働時間制(1日の所定労働時間が8時間を超える場合)
1日の所定労働時間短時間勤務なら6時間
週休3日制なら8時間
8.5時間~10時間8時間~10時間
週所定労働時間30時間~32時間程度34時間~40時間32時間~40時間
残業原則なしあり
固定残業制も可。ただし過重労働とならない仕組みが必要。
あり
ただし副業も含めて、過重労働とならない仕組みが必要。
給与通常の労働者の2割程度減少通常の労働者と同じ通常の労働者との比較による

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3. 週休3日制導入時の四つのポイント

週休3日制導入時に検討すべき四つのポイントをご説明します。

1. 働き方の選択肢があると良い

週休3日制を導入したものの、個人的な事情によりその勤務スタイルがマッチしない方もいます。勤務時間やその他の労働条件について、どこまでカスタマイズを認めるかは会社の自由ですが、勤務時間のパターンが多ければ多いほど、労働時間管理は複雑になり、労務担当者の負担は多くなります。

一方で、最近では、勤怠システムもさまざまな勤務形態に合わせて柔軟な設定することが可能になりつつあります。労務管理が効率よく行えそうで、実業務にも支障がないのであれば、働き方の選択肢がいくつかあると働き手の満足度はより高まりやすいといえるでしょう。

2. 元の給与水準を維持するか減額か検討する

週休3日制を導入しつつも、業務量はそのままとする場合、今まで週5日かかっていた業務を4日で終わらせる必要が出てきます。もともと残業もほぼなく、比較的余裕のある職場ならそれでも何とか業務を回すことができるかもしれませんが、多くの職場ではそのような余裕がないのが現状です。

選択肢の一つとして、業務量を減らし、それに応じて給与額も減らすシナリオが考えられます。これで無理なく週休3日制を導入しやすいと考えられますが、給与の減少については労働者へ説明し理解を得る必要があります。

もう一つの選択肢として、業務量は変えずに休日を1日増やした分、1日の労働時間を増やす場合、給与水準は維持しやすいですが、1日あたりの心身の負担が大きくなります。繁忙期以外は残業せずとも業務が回るよう、徹底的に生産性が向上するような取り組みを行ったり、週休3日を無理なく維持するために、時には必要に応じて業務量を調整したりする必要も出てきます。

3. 即応、即日短納期の案件は引き受けない

スマートフォンや在宅勤務の普及により、いつでもどこでも仕事ができる環境が整いつつありますが、その一方で、いつでもつながれること、即応を求められることが逆にストレスとなったり、業務の効率を下げてしまったりという面は否めません。

これは、時代のニーズと逆行するかもしれませんが、「常にメールや電話で即応することや、即日などの短納期での対応が求められる業務は受けない」など、思い切った決断も必要かもしれません。

週休3日制の導入で、スピードで同業他社に劣る場合は、ホスピタリティや専門性を磨くなど、別の面で顧客をつなぎ留める努力はより必要となります。「休みが1日多い分、皆で協力しながら、サービスの質を維持向上する取り組みをしよう」と前向きに考える組織風土があると良いでしょう。

4. 採用力を生かす

良い人材を確保することは、質の高いサービスを提供し続けるために不可欠だと言えます。週休3日制の導入が企業にもたらす大きなメリットの一つは採用力です。良い人材を確保することで、企業が目指すビジョンを共有し、望ましい組織風土が醸成されていけば、サービスの質もより向上しやすく、社内も働きやすくなるのではないでしょうか。

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