1. 深刻化する人材不足
少子高齢化による労働力不足により、業務が停滞あるいは拡大を断念する企業が増えています。2019年に内閣府が行った企業調査では「人手が不足している」または「やや不足している」と感じている人が全体の7割以上も占める結果となっています。
引用元:内閣府「企業における多様な人材の活躍 2019年7月」
(https://www5.cao.go.jp/keizai3/discussion-paper/dp191.pdf)
かなり以前から指摘されている、少子高齢化の問題がいよいよ現実化しているようです。これから先も社会全体の高齢化が進み、2025年には団塊の世代が全て75歳以上となる超高齢化社会を迎えることになります。高齢化社会では、労働力不足だけでなく医療費の増加や年金などさまざまな課題が生じてきます。その一方で、平均寿命が延びるとともに就労可能な「健康で元気な高齢者」も増えています。2020年の調査では、65歳以上の高齢者の就業者数は17年連続で増加し約906万人と過去最多を記録しています。
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2. 高齢者雇用安定法とは
高齢者の増加を踏まえて制定されたのが「高齢者雇用安定法」です。正式名称は「高年齢者等の雇用の安定等に関する法律」といい、原案は1971年に制定され、その後、名称変更や改正が行われ現在に至っています。2012年の改正では65歳までの定年の引き上げ、65歳までの継続雇用制度の導入、定年制の廃止などを盛り込んだ改正が行われています。さらに2021年4月から施行した改正では、70歳までの就業機会の確保が企業の努力義務となりました。
2021年施行の主な改正内容
- 70歳までの定年延長
- 70歳までの継続雇用制度の導入
- 定年制度の廃止
- 70歳まで継続的に業務委託契約を締結する制度の導入
- 70歳まで継続的に以下の事業に従事できる制度の導入
- 企業が行う社会貢献事業
- 企業が委託・出資などを行っている社会貢献事業
事業主は、上記いずれかを反映した制度の構築に努める必要があります(既に定年を70歳以上に定めている、もしくは定年制度を廃止している企業の事業主を除く)。
2021年施行の改正の特徴は、70歳までの定年延長(改正内容1~3)に加えて、業務委託や社会貢献事業への参加も含まれていることです。つまり、就職=雇用という形態だけでなく、業務委託をはじめとする柔軟な就業形態を念頭に置いていることです。
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3. 高齢者雇用の環境整備とは
高齢者が就労するための制度を導入するためには、高齢者が働きやすい環境を整えることが必要です。
・ 設備
バリアフリー、室内照明(明るさ)、空調など、高齢者だけでなく障害を抱えた方でも安全に就労できる整備を行います。
・ 制度
就労形態の見直しを行い契約形態、評価方法、賃金を明確化します。高齢者と一口に言っても、経験・スキルには大きな個人差があります。能力の見極めと適正な配置が行えるように面談などは慎重に行いましょう。同様に、体力や健康状態にも配慮する必要があります。特に残業や休日出社などの時間外労働については注意が必要です。過重労働にならないようにきめ細やかな労務管理を実施しましょう。
高齢者が活躍できる環境を整えるためのポイントは評価制度といわれています。つまり、再雇用だから賃金や待遇は据え置きとするのではなく、成果に応じてインセンティブを与える制度です。適正な評価と処遇をすることで、業務に対して能動的に取り組み、蓄積した経験や人脈をフルに発揮する可能性を高めます。現役時代と同じように活躍することで老化防止の効果も出てくるのではないでしょうか。
・ 教育
現役社員・高齢者双方にコミュニケーションを主とした教育・指導を行います。世代間のギャップが生じると双方にモチベーションの低下など、業務効率を妨げる結果が生じます。現役世代も時間がたてば高齢者側になることを前提にお互いの理解・教育を行います。
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4. 高齢者ワークシェアとは
1. 高齢者同士のワークシェア
高齢者の働き方に対しての意欲は、個人が抱える経済状況はじめ、健康、家族介護、ボランティア活動、余暇活動などによりさまざまです。特に勤務形態についてはフルタイム勤務だけでなく、通院や介護に合わせて時短勤務や週〇日のみの勤務など、個人の事情に応じたシフトが組めることが理想です。
例えば、1人がフルタイムで働くのではなく、Aさん午前、Bさん午後と勤務時間をシェアすることも検討してみましょう。これにより、高齢者同士だけでなく、既存社員が通院や育児・介護などで時短勤務や休職が必要となった場合に高齢者がサポート要員としてワークシェアを行うことも可能となります。現役従業員も気兼ねなく柔軟な勤務ができ、職場の魅力アップや離職防止にもつながる制度となります。
2. 現役従業員+高齢者のワークシェア
かつてマスコミなどの業界には「遊軍制度」なるものがあり、そこには「遊軍記者」が存在していました(現在でもあるところがあるかもしれません)。これは、地震などの大きな災害や大事件が起きた際に、取材担当者を瞬時に増員するため、軍隊の仕組みを取り入れた制度です。この遊軍記者になるためには、どんな取材でもこなせる経験とスキルを持っていることが条件となります。企業でも急な繁忙状態や突然の感染症罹患(りかん)者増加、災害対応などで人員を増強しなければならない局面があります。高齢者は蓄積している経験やスキルを持つ方が多いので、普段はルーティンワークをこなしながら、いざというときは応援要員として必要な部署に派遣することも可能かもしれません。
これ以外にも、従業員の対応が手薄になる時間帯や場所を補完するケースも考えられます。就業形態もオフィス・店舗・工場などのリアル勤務だけでなく、テレワークも含めて時間と場所にとらわれない柔軟な形態と組み合わせを検討してみましょう。これは、高齢者雇用だけでなく、働き方の多様化にもつながる仕組みとなります。
高齢者世代の比率は今後もますます高まっていきます。高齢者を戦力として活用を図ることは、企業が安定して発展するための大きな課題となります。「今は現役世代でも、いずれは高齢者となる」ことを前提に高齢者雇用やワークシェアリングを検討していきましょう。
なお、高齢者雇用に関しては、助成金などの支援制度もありますので、これらの利用もご検討ください。
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5. 働き方への柔軟な対応で労働人口減少の課題解決
働き方改革
労働人口減少や過重労働などさまざまな問題を解決するため、働き方への柔軟な対応が求められています。政府が提唱する「一億総活躍社会の実現」に向け、働き方改革は最大のチャレンジであり、企業は今後ますます、多様な働き方への対応が具体的に求められます。長時間労働の是正や柔軟な働き方、高齢者の就業促進を推進し、生産性向上に向けた取り組みを合わせて行うことで、企業力向上にもつながります。大塚商会では、多様化する働き方を具体的にご提案します。
働き方改革
- * 本記事中に記載の肩書や数値、社名、固有名詞、掲載の図版内容などは公開時点のものです。
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