2023年 7月 3日公開

読んで役立つ記事・コラム

生産効率を向上させるハイブリッドワーク

執筆:マネジメントリーダーWEB編集部

コロナ禍で浸透したテレワーク。従来のオフィスに出社する勤務形態と組み合わせることで効率的な働き方が可能になり、ワークライフバランスをさらに向上させる働き方となります。

1. ハイブリッドワークとは

コロナ禍で急速に浸透したテレワークですが、緊急事態宣言を受けて急きょ導入に踏み切った企業も多く存在しました。テレワークを導入してみると通勤労力の軽減やプライベート時間の充実などにより従業員満足度がアップすることが分かりましたが、一方で、コミュニケーション不足や勤怠管理・健康管理などの課題も明らかになりました。浮き彫りになった課題の多くは、出社形式のオフィスワークで解決できるため、テレワーク+オフィスワークの組み合わせによるハイブリッドワークが取り入れられるようになりました。

ハイブリッドワークは、テレワークを基本に置きつつ、出社してのオフィスワークを組み合わせた働き方です。出社日は従業員が業務の都合に合わせて選択する場合や週1日や月2日などを指定する場合など企業や業務内容によってさまざまです。ハイブリッドワークが企業に受け入れられている主な理由は、テレワークで不足する情報共有やコミュニケーションといった課題がオフィスワークを取り入れることで解決することです。

テレワークは、いつでも、どこでも仕事ができる便利な働き方ですが、通信という手段を用いるため送り手と受け手が決まっているため、情報格差が生じやすいといったデメリットがありました。
例えば、リアルなコミュニケーションでは、オフィスで課長と中堅社員がライバル企業の動向の話をしていると、周囲で聞いていた別の社員が話に参加することも可能です。また、周囲の社員も聞き耳を立てることで自然な情報共有ができます。オンライン会議では、最初にメンバー設定していなければ誰がどのような話をしているかが分からない場合もあります。メールのやり取りも同様です。このようなオンライン化による情報格差やコミュニケーションの阻害といった課題は、グループウェアの利用や運用ルールの改善で大部分が解決できます。しかし、コロナ禍による規制が緩和されると共に、対面コミュニケーションから生まれる偶発的なアイデアの創出や自然な一体感の醸成など従来のオフィスワークのメリットも見直されるようになりました。

そのため、対面コミュニケーションのメリットを生かしたオフィスワークを取り入れ、テレワークの利便性をさらに高めるハイブリッドワークを導入する企業が増えています。

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2. ハイブリッドワークで生産性が上がるのはなぜ?

柔軟な働き方による効率化

ハイブリッドワークのメリットとして一番大きな要素となるのが、オフィスや自宅、コワーキングスペース、カフェなど、業務内容によって勤務場所が選択できることです。企画のアイデアについてディスカッションするときはオフィスのミーティングルームにて対面で行い、企画書としてまとめるときは、自宅にこもって集中作業するなど、従業員が一番効率的に働ける環境を選択することで業務の質を高めて作業することが可能となります。

ワークライフバランスの実現

テレワークは通勤にかかる時間と労力が軽減されます。通勤時間の削減=プライベート時間の増大となります。テレワークによって子供の送り迎えや通院が楽にできるようになったり、トレーニングや習い事ができるようになったりした方も多いのではないでしょうか。

今、世界中でワークライフバランス向上が奨励されていますが、それはプライベートが充実することでストレスが軽減し、仕事に対しての集中力が高まるからです。「よく学び、よく遊べ」という言葉がありますが、まさにこれを実現するのがハイブリッドワークです。

かつては、ワークライフバランスを実践するために、有給休暇の取得や時短勤務を奨励する企業も多かったのですが、ハイブリッドワークでテレワークを行うと、単純に通勤時間分がプライベートな生活時間として活用できます。時給換算すると1日あたりそれほど多い負担ではありませんが、月単位、年単位で考えると大きな削減効果が見えてきます。

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3. ハイブリッドワークで効果を上げる方法

テレワークとオフィスワークを単純に組み合わせても思ったような成果は上がりません。特に出退勤管理などの運用面は複雑化します。そのため、ハイブリッドワークを前提とした業務フローの見直しとルール作りを基本に労務環境の整備を行います。

出退勤のルール作り

  • リアル出社とテレワーク勤務のルールを定めます。
    勤怠管理:グループウェア、社内SNSの活用、PCのログ管理など従業員がどこで業務を行っているのかが分かるような仕組みづくりを行います。

  • 出社日の設定
    フレックス勤務にコアタイムがあるように、コア出勤日を定めて全員がコミュニケーションを取れる日と時間帯を設けてみてはいかがでしょうか。経営幹部の話や重要事項の伝達などは部内の質疑応答も含めてこの日中に消化することをお勧めします。

  • 業務の棚卸しとイノベーション
    ハイブリッド勤務が円滑に進まない要因として、テレワーク勤務が難しい部署・職種があることです。販売店や工場などはテレワークが困難とされてきましたが、近年は無人化なども進んでいます。また、業務を分析すると現場にいなければならない業務と事務処理的など現場にいなくても遂行可能な業務もあります。省力化を前提とした技術革新を行いながら勤務形態の見直しを図ります。テレワークとオフィスワークの2極分化は情報格差の原因となり、社内分離のリスクが生じますのでご注意ください。

  • オフィスの役割を見直す
    テレワークの浸透により出社する従業員が減少するため、席の配置やフリーアドレスを検討する企業が増えています。中には事務所の賃貸料を削減するために郊外に移転する企業もあります。以前はオフィス=業務を行うスペースでしたが、これからはオフィス=コミュニケーションの場としての機能が重視されます。

    席の減少によって空いたスペースをカフェ風に改装して従業員同士がくつろいで会話できるような「マグネットスペース(自然に人が集まる場所)」を設置する企業も増えています。対面コミュニケーションを活性化するためのオフィス作りを検討してみてはいかがでしょうか。

  • 緊急対応の備え
    突発的なトラブル発生に備えて、緊急対応のルールを整備しておきましょう。顧客からの急な呼び出し、事故・トラブル対応など、テレワーク中でも即座に現場に駆け付け対応できるような連絡網や対応手順をルール化し、運用管理を行います。

    地震や気候変動による自然災害やコロナ禍のようなパンデミック(世界的大流行)などのリスクや事故・事件などもいつ発生するか分かりません。出退勤管理と同様に従業員の勤務場所がバラバラになることで、安否確認が困難になる危険性があります。伝言サービスなど非常事態の連絡方法などもルール化して周知します。

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4. ハイブリッドワークの今後

ハイブリッド勤務は柔軟な働き方として、さらに浸透していくと思われます。テレワーク導入当初は業務処理や評価方法が確立されず、業務効率が下がった企業もありましたが、その課題もテレワークの習熟と共に解消されつつあります。

ハイブリッドワークの特徴は、業務を行う時間と場所がライフスタイルに合わせて柔軟に選択できることです。企業によっては勤務時間中に家事や介護・育児などを行うことができる分断勤務制度を設ける場合もあります。これにより従業員満足度などの企業エンゲージメントが向上し、企業に対しての貢献意欲が高まり生産性向上・業績アップが期待できます。

ハイブリッドワークは、DX化というインフラ整備のうえに成り立つ勤務スタイルです。ハード的なシステム面だけでなく働き方といった従業員視点でのDX推進を検討してみてはいかがでしょうか。

参考

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5. 最適なテレワーク活用方法を見直すタイミングは今

新しい営業スタイルの提案~大塚商会がテレワークをして気づいた成果と課題の対策~

新型コロナウイルス感染症は、企業のテレワーク導入率を高める大きなきっかけとなりました。大塚商会においても緊急事態宣言を受け、自社のテレワーク導入を本格的に推進したところ、見えてきたメリットや課題、その解決方法があります。急場しのぎのテレワークから、今、最適なテレワーク活用方法を実施するための業務改革・デジタル変革の転換期に入っています。大塚商会が自社の経験に基づき、テレワークを定着させ、コロナ対策で終わらない働き方改革の手法をご紹介します。

新しい営業スタイルの提案~大塚商会がテレワークをして気づいた成果と課題の対策~

  • * 本記事中に記載の肩書や数値、社名、固有名詞、掲載の図版内容などは公開時点のものです。

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