2023年 6月28日公開

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初めての管理職【第6回】コーチング

執筆:マネジメントリーダーWEB編集部

人材育成で注目されているコーチングは、部下の自立を促し「能動的な人材」の育成に効果があるとされています。部下の育成方法とコーチングについて解説します。

1. 管理職と部下の育成

管理職は部署を経営目標どおりに運営することが使命となります。この部署運営の原動力となるのが実際に職務を担う従業員たちです。つまり、この従業員たちが最高のパフォーマンスを発揮して業務を遂行できるようにするのが管理職の主たる業務と言えます。

部署の運営にとって理想的なのは、能動的に行動して結果を出す人材が豊富に存在することです。この状態だと各業務が活性化し、管理職はリーダーシップを発揮して自部署の取りまとめに専念することが可能となります。反対に受動的な人材が多くなると、指示と結果の確認に追われる日々となり、部署全体の雰囲気もギスギスしてきます。このようなことにならないように、管理職になったら、中長期的な視点で人材育成をしっかりと行っていきましょう。

主な人材育成の方法

主な人材育成方法は、以下の4点となります。

  1. コーチング

    能動的な人材を育成する方法として広く取り入れられている教育手法です。特徴的なのは1対1で行い、相手と対等な立場でコミュニケーションを行うことです。管理職の役割は適切な質問を投げかけ、相手のやる気を引き出すことです。従業員を問い詰めたり追い詰めたりすることは逆効果となる場合がありますので気をつけましょう。

  2. ティーチング

    1対1だけでなく、1対多数で行います。スクール形式で行う場合が多く、一般的な企業研修のスタイルとなります。知識や経験、ノウハウなど、業務に必要な情報を伝授することになります。

  3. カウンセリング

    教育的な要素よりも心理的な側面が大きくなります。仕事以外の人間関係も含めて従業員が抱える悩みを解決することです。

  4. トレーニング

    未経験の業務に従事する従業員に対して実施訓練を施し、業務可能とするものです。技能の訓練だけでなく、OJTとして実践的に行われる場合がほとんどです。

人材育成は、主にこの四つの教育手法を組み合わせながら行われます。通常、ティーチング・トレーニングは研修として対象となる従業員を集めて実施されます。特に新入社員に対しては最初にティーチングにより基本的な業務知識を習得させ、その後、現業部署に配置して実務トレーニング(OJT)を行います。

管理職が行うのは主にコーチングとなります。カウンセリングはメンタル疾患に関係する場合もありますので、心理的な相談については専門のカウンセラーや産業医と相談のうえ、対応されることをお勧めします。

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2. 効果的にコーチングを行うためには

前述したように、コーチングは従業員が自律的・能動的に活動を行うことを支援するための育成法です。つまり、対象となる従業員が、現在、担当している業務にコーチング実施側も精通していることが前提となります。そのうえで、従業員が考える課題解決や目標を理解し、達成に向けた取り組みを支援します。

コーチング実施のポイントは以下のとおりです。

  1. 対等な立場と信頼関係の構築

    コーチングで必要なのは上司・部下の関係ではなく、対等でお互いに共感できる信頼関係の醸成です。これは、日常的なコミュニケーションと定期的に行う1 on 1ミーティングで培います。従業員が主体的に考えて行動するためには「任せる」ことが必要です。そのために、従業員の考える将来ビジョンをしっかりと理解・共有していきましょう。

  2. 従業員の答えを引き出す質問力

    従業員が何を目指しているのかを把握しそれをサポートしていきます。そのためには、従業員の目標や課題解決テーマを聞き出す質問力がポイントになります。管理職は多くを語らずに従業員の考えを尊重し、聞き役に徹しましょう。

  3. 課題解決のヒントを与える

    従業員のビジョンがまだ明確でない場合は、ヒントを提供して考え方の整理を促します。ただし、無理に答えを聞き出すことや、自分の考えを押し付けることがないようにご注意ください。

参考

1 on 1ミーティングで組織を活性化する

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3. コーチング実施の注意点

コーチングは業務の習熟と信頼関係に基づいて実施します。コーチングにより、従業員が自発的に活動できるようになれば権限委譲にもつながります。しかし、人の成長と信頼関係を築くためには中長期的な視点で取り組む必要があります。事業活動においては、緊急に解決しなければならない課題も発生しますが、短時間に人材育成を行う場合にはティーチングとトレーニングを検討します。

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4. コーチングの対象者

コーチングは現状から次のステップを目指す従業員に効果を発揮します。まだ業務に慣れていない場合は現状の課題解決を優先します。コーチングの対象者は、問題意識を持ち改善のために何かを目指す従業員です。さらに、コーチングを始めるタイミングや雰囲気作りも大切です。例えば、自ら動くことがなかった従業員でも、能動的に活躍する従業員に刺激を受けて「自分も○○してみたい」と思う場合もあります。1 on 1ミーティングなどで従業員が前向きな考えに変化する兆候を見極めることが必要です。

自分の道は自分で切り開き、会社はそれを支援するという企業風土を形成することが、困難を乗り越え持続可能な企業として発展する第一歩となります。管理職として自発的な行動ができる人材を育成できるように、コーチングスキルを身につけ実践してみてはいかがでしょうか。

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5. 企業の競争力を高める人材育成をサポート

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  • * 本記事中に記載の肩書や数値、社名、固有名詞、掲載の図版内容などは公開時点のものです。

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