2022年 4月18日公開

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いまさら聞けない、感染症と休みの日の取り扱いについて

著者:岩野 麻子(いわの あさこ)

新型コロナウイルス感染症に関連する休業が増えている。
「コロナに感染した従業員がいる」「従業員の子供が通う保育園がコロナで休園に」「濃厚接触者となった従業員がいる」……。このような場合に、従業員の休業中の給与はどのように取り扱えば良いのでしょうか。

1. 休業手当とは

事業主には、会社都合(使用者の責に帰すべき事由)で労働者を休業させる場合、休業期間中の賃金として「休業手当」を支払うことが義務付けられています(労働基準法第26条)。休業手当の金額は、平均賃金の100分の60以上と定められており、具体的な計算方法や金額は、賃金規定や休業協定書に定められています。
ここでいう会社都合とは、事業主の故意や過失だけでなく、業績悪化で休業してもらうなどの経営上や管理上の要因に起因するものを含むと考えられています。一方、天災事変のような不可抗力によるもので、経営者が最大の努力を尽くしたが企業努力だけでは回避できないような場合は休業手当の支払い義務は生じないとされています。
不可抗力による休業というためには、以下のいずれも満たす必要があります。

  1. その原因が事業の外部により発生した事故であること
  2. 事業主が通常の経営者としての最大の注意を尽くしてもなお避けることができない事故であること

そのため、「新型コロナウイルス感染症の影響」だけを理由にして、一律に休業手当の支払い義務がなくなるものではありません。

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2. 休業手当の支払いが必要な場合

以下のような場合には、休業手当の支払いについてどのように判断すれば良いのでしょうか。具体的な例を見ていきましょう。

従業員自身が感染した場合

原則として、会社都合ではないため、休業手当の支給は不要です。通常、感染者が健康保険の被保険者である場合は、傷病手当金を受給できる場合がありますが、医師、看護師、介護従事者などである従業員が感染した場合には、業務外で感染したことが明らかである場合を除き、労災保険給付の対象となります。

職場で感染者が出たため、ほかの従業員を休ませたとき

原則として、感染拡大を防ぐ目的で、会社の指示に基づきほかの従業員を休業させた場合には、会社都合の休業に当たるため、休業手当の支払いが必要です。なお、結果としてその月の売り上げが減少したことにより要件を満たすこととなった場合には、会社は雇用調整助成金などを申請できる可能性があります。

従業員が濃厚接触者となった場合

従業員の家族・友人などが感染し、本人が濃厚接触者となった場合で、本人から申し出があり欠勤となった場合は、原則として、休業手当の支給は不要です。ただし、昨今の状況を鑑みて、柔軟な年次有給休暇の取得や無給休暇としない対応などを検討しても良いでしょう。
一方で、家族が濃厚接触者となったが、本人は濃厚接触者に当たらない場合などで、本人の意思にかかわらず、会社が休業を指示した場合などは休業手当の支払いが必要です。

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3. 休業手当の計算方法

休業手当の額を算出するためには、まず平均賃金を求めます。

  1. 月給制の場合
    休業日前日の直近の給与締め切り日から、3カ月間さかのぼった賃金の総額(賞与や臨時のものは除く)をその期間の総日数(暦日)で割った金額
    3カ月間の賃金総額 ÷ 3カ月間の暦日数 = 1日分の平均賃金(銭未満は切り捨て)
  2. 日給制、時間給制などの場合(最低保障額)
    休業日前日の直近の給与締め切り日から、3カ月間さかのぼった賃金の総額を実際に労働した日数で割った金額の60%
    3カ月間の賃金総額 ÷ 3カ月間の実労働日数 × 0.6 = 1日分の平均賃金(銭未満は切り捨て)

就業規則や賃金規定、休業協定書で定める休業手当の金額が60%である場合
(1)と(2)を比較して大きい金額 × 0.6 = 1日分の休業手当額(円未満四捨五入)

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4. 就業規則もあらためて見直しを

従業員が新型コロナウイルス感染症にかかった場合や、その恐れがある場合の就業を禁止したり、同居する家族が伝染性の疾病にかかったりした場合などのルールについて、就業規則に記載があるでしょうか。休業手当に関する規定とともに、安全衛生に関するルールも漏れなく記載されているか、あらためて見直しておくと良いでしょう。

  • *本記事中に記載の肩書きや数値、社名、固有名詞、掲載の図版内容等は公開時点のものです。

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