1. 「人生100年時代」に向けて、企業が取り組むべきこととは
高校や大学などを卒業するとともに就職、そして定年後は余生を楽しむ、という、これまでの一般的な働き方、生き方が変わりつつあります。仮に定年年齢が延長となったとしても、今までと同じ働き方をただ延長すればよいというわけではなさそうです。「人生100年時代」に向けて、今企業が取り組むべき課題について社会保険労務士の立場からまとめてみました。
高齢者雇用で、人手不足解消へ
高年齢者雇用安定法では、従来の65歳までの雇用確保(義務)に加え、2021年4月から70歳までの定年年齢の引き上げや、定年制の廃止などを高年齢者就業確保措置として講ずる努力義務を新設しました。現在はまだ努力義務規定ではあるものの、定年年齢を延長したり、65歳以降の継続雇用制度などを導入したりすることにより、今後の人手不足を解消しようという企業は今後増えると思われます。まずは、健康で働く意欲の高い高齢者を今まで積み重ねてきた経験を生かす形で活躍してもらえる場を作れないかなど、社内で検討してみてはいかがでしょうか。
従業員の育成を通じて、生産性向上や新規事業開拓へ
「AIによってなくなる仕事」という職業のリストが世間を騒がせたことはまだ記憶に新しいことと思います。10年から20年後にITの進歩が人間の労働を奪うと考えたときに、企業が今できることの一つには「従業員の育成」が挙げられます。業務の生産性を向上させるためにも、業界の将来性を見越して新規事業に乗り出すにしても、従業員一人一人がAIにとって代わられることのできない能力を有していることが重要です。最近では、インターネットでも体系的に質の高い学習が安価に受けられるなど、大人が学ぶ環境は以前より手に入りやすくなりました。「従業員の育成は、時間とお金といった体力のある企業にしかできない」「中小企業ではなかなか難しい」などと決めつけず、自社の将来に必要な人材を今からでも育てるという意識で取り組んでみてはいかがでしょうか。
健康管理がより一層重要に
「人生100年時代」を生きるうえで重要なことの一つが「健康」です。従業員に長く働いてもらうためにも、余暇を心から楽しんでもらうためにも、企業が従業員の健康管理に気を配ることは一層重要なこととなります。
- 長時間労働の制限(労働基準法)
長時間労働は、過労死や脳血管疾患、心疾患とも深く関係していると言われています。労働基準法では、「1日8時間、週40時間」を法定労働時間と定めており、これを超える場合は労使協定を締結して労働基準監督署へ届け出ることとなっています。なお、協定届を提出した場合であっても、一般的には、1カ月あたりの残業は45時間までとされていますので、これを超える月があるようであれば、残業抑制策を検討してみましょう。 - 健康診断の実施(労働安全衛生法)
「労働安全衛生法では、入社時健康診断や年1回の定期健康診断などを事業者に義務付けていますが、残念ながら健康診断で異常が見つかっても治療しなかったり、生活習慣を改めなかったりする従業員の方がいることも事実です。スポーツジムに通う費用を企業側が一部補助したり、健康経営の一環として、禁煙や食事、飲み物に気を付けるよう促したりするなど、健康を意識しやすい企業風土づくりを始めてみてはいかがでしょうか。
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2. 従業員の家族をどう幸せにできるか
マイホームを購入したとたんに転勤が決まったり、子供が生まれたばかりでも残業続きだったりと、今まで従業員が、会社の人事異動や指揮命令に従うのは当たり前のことでした。しかしながら今後は、結婚、出産、育児、介護などにより、その家族が従業員本人を必要としている時期は、本人と会社が話し合ったうえで、仕事ではなく、家族の都合を優先できる時期があっても良いのではないでしょうか。
働く場所、時間などについて、柔軟な働き方の選択肢を増やすことで、労務管理は間違いなく複雑になりますが、今のIT技術を駆使すれば乗り越えられるものは多くあるはずです。長く働きやすい職場環境整備が、結果として良い人材が集まる/離れない企業文化へとつながるのではないでしょうか。
- *本記事中に記載の肩書きや数値、社名、固有名詞、掲載の図版内容等は公開時点のものです。
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