2022年 5月11日公開

【連載終了】読んで役立つ記事・コラム

70歳定年延長と多様な働き方の推進

執筆:マネジメントリーダーWEB編集部

高齢者雇用のポイントはライフスタイルに合った働き方の提案!
2021年4月から、65歳から70歳までの就業機会を確保することが義務化されました。その一方で、終身雇用制度にとらわれない雇用形態を検討する企業も現れています。

1. 高齢者雇用安定法と定年延長の流れ

「高年齢者等の雇用の安定等に関する法律」(以下、高齢者雇用安定法)は、高齢化が進む中、中高年層の安定した雇用を確保するために1971年10月に施行されたものです。この法律では、事業者が定年制の延長や定年退職者の再雇用などの雇用機会を確保することが求められています。定年の年齢規定は1986年に60歳定年制の努力義務が定められ、その後の改正により定年が徐々に延長されてきました。

2021年4月の改正では、65歳までの雇用確保(義務)に加え、事業主が65歳から70歳までの就業機会を確保するための措置を導入する努力義務が新設されました(2022年4月1日施行)。就業機会の確保とは、以下のいずれかの措置を行うことになります。

就業機会確保のための措置

  1. 70歳までの定年引き上げ
  2. 定年制の廃止
  3. 70歳までの継続雇用制度(再雇用制度・勤務延長制度)の導入
  4. 70歳まで継続的に業務委託契約を締結する制度の導入
  5. 70歳まで継続的に以下の事業に従事できる制度の導入
  • 事業主が自ら実施する社会貢献事業
  • 事業主が委託、出資(資金提供)などをする団体が行う社会貢献事業

参考

厚生労働省「高年齢者雇用安定法 改正の概要 2021年3月版」(厚生労働省のWebサイト<PDF>が開きます)

定年制の延長は、平均寿命や自立して生活できる健康寿命の長寿化を基本に「高齢者自身の生活のため」「労働力確保のため」「社会保障制度(年金など)のため」といった要素により推進されてきました。

また、法律の制定当初は定年年齢の義務化が一律で求められていましたが、2004年以降は複数の雇用機会措置の導入義務化へ変化してきています。定年年齢の引き上げだけでなく、再雇用や勤務延長、フリーランスなどの業務委託契約など、雇用形態も多様化しています。

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2. 定年延長の企業課題

高度なIT技術や高速・広帯域のネットワークが浸透している現在では、仕事は会社で行うといった概念が変化しています。特に自宅で業務を行うテレワークの実施は、ワークライフバランスの実現と多様な働き方を促進する動きとなっています。

定年制度は、終身雇用制度を前提とした制度です。多様な働き方をする人が増えてくると、雇用形態もさまざまな形となり、定年という概念が薄れてくるかもしれません。定年延長に伴う企業の課題は以下のようになります。

  • 雇用形態の整備
    待遇・給与・勤務内容・勤務場所・勤務時間・健康管理などの福利厚生
  • 再就職のあっせん
    取引先、関連会社を含めた人材登用・活用を図る人材バンクとしての機能

これらの課題を戦略的に解決するためには、企業内に人材活用を促進するための選任の担当者・部署を設けることが必要となります。

人材活用部署の役割

  • 人材教育→人材活用→人材あっせんのマネジメント
  • 人材バンク機能

企業に新入社員として入社後、導入研修やOJTを通して人材教育を行いますが、身に着けたキャリアを客観的に評価し、そのキャリアを有効に活用する方法と、キャリアを生かして再就職を希望する場合に他社にあっせんするためのマネジメントを行います。また、業務に必要なスキルを持つ人材を獲得するために、フリーランスの業務委託や副業としてのテレワーク勤務など、多様な人材のデータベース化も視野に入れましょう。これらは、人材募集広告のほかに、社員からの紹介・推薦、一般対象のセミナー・ワークショップ参加者からの登録など、企業活動を通した人材獲得も検討してみましょう。企業の人脈ネットワークを広げること=企業の成長となれば一石二鳥の施策となります。

年金受給年齢との関係

雇用形態の整備で大きな課題となるのは給与です。単純な年功序列でいくと年齢とともに給与も増えていきます。しかし、実際にそのような給与体系を実施している企業は極めて少数です。その大きな理由は「年金の受給」です。実は法律で定める定年の年齢は年金の受給年齢とリンクしています。近年では少子高齢化に伴って年金の財源が悪化しているため、受給年齢の引き上げ、受給金額の引き下げなどが頻繁に検討されています。中長期的な人材戦略を立案する際は、年金の受給年齢が70歳になることを前提として検討することをお勧めします。

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3. 定年延長の今後について

これまでお伝えしてきたように、定年の延長は単に年齢を引き上げるだけでなく、労働力の確保、働き方の多様化促進、社会保障制度の動向などが課題となります。

定年制度は、中高年層の安定した雇用機会の確保を主眼として法整備が進んできました。定年の年齢が引き上げられることで、健康で働く意思があれば高齢でも活躍できる環境が整います。企業でも役員になると任期はありますが、定年はなくなります。また、商店や飲食店、農業・漁業はじめ世の中では70歳を過ぎても、技術や経験を生かして活躍している生涯現役の方たちも珍しくはありません。
これからは、企業で働く従業員の雇用も年齢を基準とするのではなく、それぞれの人生設計やワークライフバランスに沿って働き方を選択していく時代になると思われます。

高齢者を戦力として活用することが、これからの時代に企業が生き延びる重要なポイントとなってきます。そのためには、個々の希望やライフスタイルに対応した柔軟な雇用制度を構築していくことが求められます。定年延長を契機に従業員が生涯を通じて活躍できる企業を目指し、就労環境のさらなる改善を検討してみましょう。

参考

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4. 大塚商会が働き方改革の推進をサポートします

働き方改革の実現に向けて企業に求められるポイントを解説

労働人口の減少や生産性向上といった課題の解決のため、柔軟な働き方への対応が求められています。働き方改革は、政府が提唱する「一億総活躍社会の実現」に向けた施策であり、長時間労働の是正や柔軟な働き方、高齢者の就業促進など、9分野で方向性が明示されました。大塚商会では多様化する働き方に対応する具体的なご提案をしています。

  • *本記事中に記載の肩書きや数値、社名、固有名詞、掲載の図版内容等は公開時点のものです。

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