2022年10月19日公開

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育児・介護休業法が大改正!パパ育休を取得しやすくする五つのポイント

著者:岩野 麻子(いわの あさこ)

男性の育児休業と聞いて「いやいや、うちの会社はまだ無理」などと思っていませんか? 育児・介護休業法が2022年の4月から10月にかけて段階的に大幅改正されたことにより、今後、男性社員からの育児休業の申し出が増加する可能性があります。もう対応はお済みですか?

1. 男性の育児休業取得率が増加している

厚生労働省によると、女性の育児休業取得率は8割台で推移しています。一方、男性はまだまだ低い水準ではあるものの、上昇傾向が見られています(2021年度:13.97%)。政府はこれを2025年までに30%に引き上げることを目標としています。

  • (注)2011年度の[ ]内の割合は、岩手県、宮城県および福島県を除く全国の結果。

出典元:厚生労働省「『令和3年度雇用均等基本調査』の結果概要」(22ページ)

男性の育児休業期間は短い傾向

さらに、男性の育児休業期間は女性と比べ大幅に短いことも注目すべき点です。2020年4月1日から2021年3月31日までの1年間に育児休業を終了し、復職した女性の育児休業期間は「1年~1年6カ月未満」が34.0%と最も高いですが、男性は「5日~2週間未満」が26.5%と最も高くなっています。

  • (注)「育児休業後復職者」は、調査前年度1年間に育児休業を終了し、復職した者をいう。

出典元:厚生労働省「『令和3年度雇用均等基本調査』の結果概要」(23ページ)

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2. 今後の男性の育児休業における「あるべき姿」とは

男性が育児休業を取得するか否かは、本人や家族の価値観により判断されるべきものであるため、必ず取得するべき、といったものではありません。一方で、育児休業を取得したいと考えているにもかかわらず周りの目を気にして、結局取得を申し出ることができなかったという方も多いようです。
今回の法改正で対象となる社員には、育児休業制度を正しく周知し休業取得の意向を確認することが企業側に義務付けられました。これに加えて、上司や同僚にも制度を理解してもらうことで、取得希望を伝えやすい職場の雰囲気を作っておくことは重要だと感じます。

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3. パパ育休を取得しやすくする五つのポイント

今回の法改正を踏まえて、育児休業を取得しやすくするポイント、また育児休業を取得する際に併せて検討しておきたいポイントについてご説明します。

1. 育児休業中の社会保障制度について知る

育児休業を取得する際に、育児休業中の経済的な不安を口にする方は多くいますが、一方で育児休業中に利用できる制度が複雑であることから、制度の詳細を知らない方も多くいます。育児休業中は、要件に当てはまれば男性社員も雇用保険の育児休業給付や、社会保険料の免除制度を受けることができます。その場合、保険料の免除分も合わせれば、人によっては手取り収入の約8割が保障された状態で育児に専念することができます。

2. 男性の育児休業取得が、将来の世帯収入の増加につながる可能性も

男性社員が育児休業を取得しない理由の一つとして「収入を減らしたくない」という声を、また、女性が妊娠・出産を機に退職する理由の一つとして「仕事と育児を両立する気力・体力がもたない」という声をよく聞きます。男性社員が育児休業を取得したことをきっかけに、その後も育児や家事に積極的に参加した場合、一時的に男性側の収入は減る可能性はありますが、長い目で見れば、女性は仕事を続けることができ、夫婦合算の結果として世帯収入の増加につながる可能性もあります。

3. 育児休業を取得する場合は、早めに申し出る

育児休業を取得する場合は、できるだけ早めに会社に申し出るようにしましょう。企業側は、育児休業取得者がいる場合、業務引き継ぎや人員確保の観点から、早めに準備を進める必要があるためです。休業中の業務については、早めに上司、同僚に引き継ぎをしたり、協力体制を築いておけたりすると、職場に残されるメンバーも安心して育児休業取得者を送り出すことができます。

4. 短い期間からスタートする

前述の通り、男性の育児休業の取得期間は「5日~2週間未満」が最も多くなっています。まずは1~2週間程度の育児休業の申し出を想定して、業務の割り振りや、休業時の顧客対応などを検討してみてはいかがでしょうか。また、今回の改正により、育児休業を分割取得することも可能になりました。これにより、繁忙期を避けた分割取得なども可能になるため、育児休業ブランクが短く済み、休業取得も復職も容易になるのではないでしょうか。

5. 休業中も短時間の就労が可能に

今までの育児休業は就労しないことが前提の制度でしたが、IT技術の進歩で多くの職種・職場でテレワークや在宅での業務が可能となる中で、育児休業も短時間の就労と育児を両立することも選択できる制度へと改正されました。育児休業取得中の就労には、取得者本人の同意があることが前提となりますが、同意があれば、育児休業をメインとしつつも、完全に仕事から離れる必要はなくなります。在宅勤務に加えて、フレックスタイム制など、時間に縛られない働き方を選択できる場合は、育児と就労をさらに両立しやすくなります。

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4. 上司や同僚の意識変革や職場の雰囲気づくりも重要

職場の上司、同僚の中には、男性の育児休業に対してまだ否定的な考えを持つ人がいることもあります。とはいえ、男性であることを理由に育児休業は認めない、育児休業を取得したことを理由に昇給させない、などの対応は、無意識の性差別やハラスメントに当たる可能性があり、注意が必要です。
育児休業だけでなく、介護休業や、持病による通院、その他の長期の休暇希望などは誰にでも起こりうることです。育児休業取得時に「お互いさまだから」「どうぞどうぞ」といえる職場の雰囲気づくりを目指しましょう。

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