2023年 9月19日公開

【連載終了】読んで役立つ記事・コラム

フリーランスの取引に関する新たな法律ができました~対応はお済みですか~

著者:岩野 麻子(いわの あさこ)

フリーランス・事業者間取引適正化等法が2023年5月12日に公布されました。この法律は、2024年秋ごろまでに施行予定で、フリーランスの方に業務を委託している事業者の方は、施行日までに書面などによる取引条件の明示といった、義務化される内容について対応が必要です。

1. フリーランス・事業者間取引適正化等法の目的

この法律は、「個人」たる受注事業者の取引上の弱い立場に着目し、発注事業者とフリーランスの業務委託に係る取引全般に共通する最低限の法律として制定されました。これにより事業所間の取引の適正化と、フリーランスの方の就業環境整備を図ることを目的としています。

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2. 対象となる業務委託とは

この法律の適用を受ける業務委託は、事業者間(BtoB)における委託取引が対象となります。

この法律の適用を受ける「業務委託」の例

取引の形態事業者間(BtoB)における委託取引
家族写真の撮影など、個人消費者を対象とする取引該当しない
(この法律の適用を受けない)
Web上での物販など、不特定多数との取引該当しない
(この法律の適用を受けない)
企業の宣材写真撮影など、従業員を使用する企業との取引該当する
(この法律の適用を受ける)

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3. 特定受託事業者(いわゆるフリーランス)とは

この法律の適用を受ける「特定受託事業者(以下、フリーランス)」とは、業務委託の相手方である個人事業者や、一人法人で従業員を使用しないものを指します。なお、本法律における「従業員」は、週労働20時間以上、かつ31日以上雇用見込みのある者を指します。フリーランスが労働基準法上の労働者に当たるパートタイマーなど、これを下回る勤務の者を雇用していたとしても、この法律では「従業員」に当たらず、本法律の適用を受けることとなります。

この法律が適用される「フリーランス」の例

被雇用者の勤務状況「従業員」の雇用フリーランスに該当するか?
週15時間、2カ月雇用見込み該当しない〇(フリーランスに該当)
週30時間、2週間雇用見込み該当しない〇(フリーランスに該当)
週30時間、2カ月雇用見込み該当する×(フリーランスに該当しない)

フリーランス・事業者間取引適正化等法の概要

フリーランス・事業者間取引適正化等法の概要は以下のとおりです。

項目順守事項発注事業者の種類(注1)
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1. 取引条件の明示書面などで「業務内容」「報酬額」「支払期日」などの取引条件を明示すること
2. 報酬の支払い発注した物品などを受け取った日から60日以内の報酬支払期日を設定し、期日内に報酬を支払うこと 
3. 禁止事項フリーランスに対し、法律に定める行為(責任がないにもかかわらず、成果物の受領〈じゅりょう〉を拒否・返品したり、報酬額を後で減額したりするなど)をしないこと  
4. 募集情報の的確表示フリーランスの募集広告に、虚偽の表示や誤解を与える表示をしない。また、内容を正確かつ最新のものに保つこと 
5. 育児などの両立に対する配慮フリーランスが育児や介護などと業務を両立できるよう、申し出に応じて必要な配慮をすること  
6. ハラスメント対策フリーランスへのハラスメント行為に関する相談対応のための体制整備などの措置を講じること 
7. 中途解除などの事前予告継続的業務委託を中途解除したり、更新しないこととしたりする場合は、原則として30日前までに予告すること  
  • (注1)発注事業者の種類 a=業務委託事業者(従業員なし)、b=特定業務委託事業者(従業員または役員がいる)、c=特定業務委託事業者で、フリーランスに継続的に発注

その他、下請け取引の公正化・下請け事業者の利益保護を定める下請法や、優越的地位の乱用などを定める独占禁止法も問題となる行為について規定しています。法令順守の観点から、こちらの法律も併せて確認しておくと良いでしょう。

フリーランスが「労働者」に当たると判断されることもある

フリーランスは、見かけ上は業務委託契約であっても、以下に該当する場合は、労働基準法上の労働者に当たる場合もあります。

  • 発注者からの仕事の依頼や、業務の指示があった際に拒否できない。
  • 業務の内容や進め方について具体的な指揮命令を受けている。
  • 勤務場所、勤務時間が指定され、管理されている。例えば、「遅刻すると報酬が減らされる」、報酬が「時間当たりいくら」と決められている。

など。

労働者性があると判断された場合には、労働基準法等が適用されることとなります。

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4. フリーランスが安心して働ける環境に

働き方の多様化に伴い、副業の解禁や高齢者の雇用拡大などの観点からも、フリーランスという働き方は今後も増えるものと思われます。被雇用者も、フリーランスも安心して働ける就業環境が整うとよいですね。

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