2021年 8月30日公開

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2021年版 使える助成金(人材開発関連)

執筆:マネジメントリーダーWEB編集部

社員の専門知識や技能の習得に役立つ助成金をご紹介。
企業が成長するためには、従業員のスキルアップが欠かせません。
しかし、研修には費用がかかります。そうしたジレンマを解決する一手として、助成金を活用した人材育成・開発を検討してみてはいかがでしょうか。

1. 人材開発支援助成金

人材開発支援助成金とは

「人材開発支援助成金」は、社員を段階的に育成する能力開発を効果的に促進するための制度です。業務に関連した専門的な知識や技能を習得させるための教育訓練などを計画して実施した場合に、訓練経費や訓練期間中の給与の一部が助成されます。
「人材開発支援助成金」のうち、多くの企業が利用できるコースとその対象や要件をピックアップしました。

特定訓練コース

労働生産性向上を目的とした訓練、若手社員を対象とした訓練、OJTとOff-JTを組み合わせた訓練など効果が高い訓練について助成金が支給されます。

対象の教育訓練は以下のとおりです。

1. 労働生産性向上訓練職業能力開発センターや職業能力開発大学校等で実施する職業訓練、厚生労働大臣が専門的・実践的な教育訓練として指定した専門実践教育訓練など。
2. 若年人材育成訓練入社後5年以内で35歳未満の若手社員を対象に、会社が実施する研修や専門機関が実施する研修・訓練でOff-JTにより(実業務とは別に)実施される訓練など。
3. 熟練技能育成・承継訓練熟練技能者(技能検定合格者など)の指導力強化や技能継承のための訓練(訓練指導員の育成)など。
4. グローバル人材育成訓練海外関連の業務に従事する社員に対しての訓練。海外の大学・大学院などの教育機関での研修も対象となります。
5. 特定分野認定実習併用職業訓練(注1)建設業・製造業・情報通信業に関する厚生労働大臣認定「実習併用職業訓練」(15歳以上45歳未満対象)。
例えば、情報通信分野のセキュリティやネットワーク構築などで、体系的、実践的トレーニングを通じて、所属企業のみならず業界を支える基幹的な人材育成を目指す研修が対象となります。そのため、訓練を行う事業者によって、企業単独型、企業連携型、事業主団体連携型の訓練に分類されます。
6. 認定実習併用職業訓練(注1)OJT付き訓練で、厚生労働大臣の認定を受けた「実習併用職業訓練(実践型人材養成システム)」。
7. 中高年齢者雇用型訓練※※令和3年4月1日付の改正で中高年齢者雇用型訓練の助成は終了しました。
  • (注1)5、6の訓練は事前に厚生労働大臣の認定手続きが必要となります。

一般訓練コース

特定訓練コース以外の訓練を企業もしくは企業が所属する業界団体が実施する場合に助成されます。Off-JTで実施され、実施時間が20時間以上、セルフ・キャリアドック(注2)を規定している必要があります。

  • (注2)定期的なキャリアコンサルティング。社員の能力向上について定期的にコンサルティングの機会を設けることです。労働協約、就業規則または事業内職業能力開発計画のいずれかに対象時期を明記して定める(明文化)必要があります。

教育訓練休暇付与コース

教育訓練を受けるために必要な有給休暇を与え、社員の能力向上に資することを促進する制度です。
以下の項目を満たしていることが条件となります。

  1. 3年間に5日以上取得が可能な有給教育訓練休暇制度を就業規則などに明記(全社員対象)
  2. 本制度を全社員に周知し、就業規則を管轄する労働基準監督署へ届け出る
  3. 1年ごとの期間内に1人以上に当該休暇を付与していること
  4. 業務命令でなく社員の自発的な受講であること
  5. 付与する休暇中に社員が受講する教育訓練は、事業主以外が行うものであること

支給助成金額・助成率

人材開発支援助成金の受給対象となるのは企業の事業主となりますが、助成コースによって対象となる企業・団体が異なります。

支給対象

支給対象事業主は、雇用保険適用事業所の事業主でなければなりません。また、職業能力開発推進者の選任や訓練計画の提出などコース条件が規定されているので、申請前に詳細をご確認ください。
同様に、支給対象となる労働者の条件も、訓練期間中に申請事業主に雇用される雇用保険被保険者(有期契約労働者、短時間労働者および派遣労働者を除く)であることを前提に、コースごとに詳細が規定されています。

助成金額・助成率

[「特定訓練コース」および「一般訓練コース」の主な注意事項]

  • * 同一の事由(同一の訓練受講、経費、賃金等)に係る助成制度を複数利用する場合、併給できない場合があります。 詳細はそれぞれの助成制度を所管する都道府県労働局・自治体・団体などにお問い合わせください。
  • * 事業主団体等の場合は経費助成(45%)のみとなり、生産性要件や下記表による助成率引き上げはありません。 また、受講料収入がある場合は経費から差し引いた額が助成対象経費となります。
  • * 専門実践教育訓練、特定一般教育訓練または一般教育訓練給付指定講座のうち通信制等で指定された訓練、育児休業中の者に対する訓練等およびグローバル人材育成訓練のうち海外で実施する訓練等は経費助成のみとなります。

特定訓練コースのうち、以下の場合については、経費助成の助成率が次の表のとおりとなります。

  • 特定分野認定実習併用職業訓練の助成対象事業主
  • セルフ・キャリアドック制度(*)導入企業

  • * セルフ・キャリアドックとは、 雇用する全ての労働者を対象に、当該者のキャリア形成の節目(長くても10年を超えない間隔)において定期的に実施される、キャリアコンサルタントによるジョブ・カードを活用したキャリアコンサルティングのこと。キャリアコンサルタントは、職業能力開発促進法第30条の3に規定する国家資格取得者のことです。特定訓練コースの助成率の引上げの対象となるセルフ・キャリアドック制度は、具体的な実施の節目を定めていること、経費は全額 事業主負担であること、原則一対一で行われるものであることなどを就業規則等に規定して従業員に周知していることが必要です。また訓練に当たっては、国家資格取得者であるキャリアコンサルタントが行う必要があり、一般訓練コースの要件となっている定期的なキャリアコンサルティング(助言・指導)とは異なります。

[「教育訓練休暇付与コース」の主な注意事項]

  • * 有給による休暇取得に対する1人1日当たりの賃金助成額となり、最大150日分。企業全体の雇用する被保険者数が100人未満の企業は1人、同100人以上の企業は2人を支給対象者数の上限とします。無給による長期教育訓練休暇の取得については賃金助成の対象となりません。
  • * 教育訓練休暇制度の場合は制度導入・実施助成となります。

支給限度額

1. 賃金助成限度額(1人1訓練当たり)

Off-JT賃金助成特定訓練コース、一般訓練コースともに1,200時間が限度時間となります。ただし認定職業訓練、専門実践教育訓練については1,600時間が限度時間となります。
OJT実施助成特定分野認定実習併用職業訓練、認定実習併用職業訓練について680時間が限度時間となります。
  • * 上記に満たない場合でも、事前に厚生労働大臣の認定を受けた訓練計画のOJTカリキュラムの時間が上限となります。

2. 経費助成限度額(1人当たり)

  • (注1)特定訓練コースおよび育児休業中等の者に対する訓練については、10時間以上100時間未満。
  • (注2)育児休業中の者に対する訓練等は、企業規模に応じて、中小企業の場合は30万円、大企業の場合は20万円。
  • (注3)特定訓練コースにおいて、専門実践教育訓練または特定一般教育訓練給付指定講座により通信制等で実施する訓練等については、企業規模に応じて、中小企業の場合は50万円、大企業の場合は30万円とし、訓練時間に応じた 限度額は設けない。
  • (注4)一般訓練コースにおいて、一般教育訓練給付指定講座により通信制等で実施する訓練等については、企業規模に関係なく20万円とし、訓練時間に応じた限度額は設けない。

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2. 長期教育訓練休暇制度

長期教育訓練休暇制度は、事業主以外が行う教育訓練等を受けるために必要な有給・無給の長期にわたる休暇(労働基準法39条の規定による年次有給休暇を除きます)を被保険者(*)に与え、自発的職業能力開発を受ける機会の確保等を通じた職業能力開発および向上を促進する制度です。

  • * 長期教育訓練休暇制度の対象となる被保険者は、助成金を受けようとする事業主の適用事業所における被保険者であり、さらに長期教育訓練休暇制度導入・適用計画届の提出日の時点で、当該事業所における被保険者である期間が連続して1年以上であることが求められます。

長期教育訓練休暇制度の休暇取得に関するルール

長期教育訓練休暇制度においては、休暇取得開始日より1年の間に、所定労働日において30日以上の教育訓練休暇の取得が必要となります。これには以下のようなルールがあるのでご注意ください。

  • 30日以上の教育訓練休暇の取得の仕方については、10日以上連続して取得する必要があり、そのうち1回は30日以上連続して取得する必要があります。
  • 連続して取得した休暇期間ごとに、教育訓練の期間(教育訓練を開始した日から教育訓練を修了した日までの日数。一つの長期教育訓練休暇期間中に複数の教育訓練を受けた場合は、その通算した期間における日数とする。)および各種検定またはキャリアコンサルティングの実施日数(教育訓練と同日に実施された場合の日数を除き、各種検定またはキャリアコンサルティングが同日に実施された場合は重複計上しないものとする。)が、長期教育訓練休暇の取得日数の2分の1以上であることが必要です。
  • 休暇取得開始日および最終休暇取得日については、いずれも制度導入・適用計画期間内である必要があります。

<補足>

  • 30日以上の連続休暇を取得する前に、10日以上の連続休暇を取得しても構いません。
  • 30日以上の連続休暇の取得を最低1回以上と、残りの日数は10日以上の単位で連続休暇を取得することが必要です。

【参考】長期教育訓練休暇を取得する場合の具体例

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3. 人材開発支援助成金の申請について

申請に必要な要件

人材開発支援助成金の申請に当たっては、さまざまな要件をクリアする必要があります。
主な要件2点をご案内します。

1. 職業能力開発推進者の選任

社内で社員の能力開発を推進するキーパーソンが「職業能力開発推進者」です。
会社の職業能力開発計画の作成や能力開発について社員への相談・指導を行います。
推進者は事業所ごとに1名以上選任しなければなりません。ただし100人以下の事業所で適任者がいない場合などは、本社の推進者が兼務することが可能です。
また、推進者は能力開発の企画や研修・訓練の実施について権限を有する方が対象となります(研修担当課長、人事・総務担当課長など)。

2. 事業内職業能力開発計画の作成

人材開発支援助成金の申請には、職業能力開発促進法第11条により事業主が作成した人材育成方針を記載した計画書が必要です。また計画書の作成だけでなく、全社員への周知も必要となります。

計画書に記載する主な項目は、以下のとおりです。

  • 経営理念・経営方針に基づく人材育成の基本方針・目標
  • 昇進・昇格、人事考課等に関する事項
  • 職務に必要な職業能力に関する事項
  • 教育訓練システム・体系(図表で簡潔に分かりやすく)
  • 教育訓練対象となる業務・社員

事業所内職業能力開発計画は、労働組合(社員の代表)の意見を聞いて作成しなければなりません。

申請の基本となる、職業能力開発推進者の選任や事業内職業能力開発計画の作成については、各都道府県労働局にて相談や支援を行っているので、初めて申請する際は事前に相談してみてください。

助成対象となる教育訓練とは

特定訓練コース、一般訓練コースでは、助成金の対象となる社員や教育訓練内容について支給条件があります。

1. 対象となる社員

支給対象となる社員は、訓練実施計画に記載されていて、研修・訓練期間中に被保険者である必要があります。また、受講時間数が実訓練時間総数の8割以上であることが必要です。

2. 対象となる研修・訓練・職業能力検定、キャリアコンサルティング

(1)社内研修・訓練
対象となる研修・訓練に直接関係する職業訓練指導員免許や技能検定合格者、実務経験10年以上のベテラン社員が講師・指導員となっていることが求められます。
また社内講師の場合は、研修・訓練実施日の出退勤状況を確認できる方に限ります。

(2)社外研修・訓練
社外の組織や施設で研修・訓練を受講する場合は、公共の職業能力開発施設のほかに、助成金の支給を受ける事業主以外の事業者・団体が設置・運営する施設、大学や教育水準を満たした各種学校などが対象となります。学びたい職業についての知識・技能・技術が習得でき、スキル向上に役立つ教育訓練を行うことが、客観的に証明できる施設・団体を利用することがポイントです。

<助成金の対象とならない教育訓練とは>

業務に直接関連しない内容のものは助成の対象となりませんのでご注意ください。
例えば、マナーや話し方講習の場合、基礎的なものは担当業務の種類を問わず社会人として共通して必要な講習となるため、助成されません。外国語会話も日常会話レベルの講習は対象外です。また、法令で講習の実施が義務付けられていて、会社としてもその講習を受講しなければ業務が遂行できない場合も原則対象外です(建設業、社会福祉・介護の技能講習は除く)。

このほかにも助成の対象とならない教育訓練は詳細に規定されていますので、申請を検討する際は、助成対象の詳細を所轄の労働局・ハローワークにお問い合わせください。

教育訓練の経費支給基準

特定訓練コース、一般訓練コースでは、研修などの教育訓練を行う場合、助成対象となる経費内訳について条件があります。主な条件は以下のとおりです。

(1)自社で企画し主催する場合

  • 社外講師への謝礼金(1時間当たり3万円が上限)
  • 社外講師の旅費(1訓練当たり国内招へい5万円、海外招へい15万円が上限。宿泊費は1万5,000円/日が上限)
  • 施設・設備のレンタル費
    教室やホテルの会場使用料、マイク・ビデオ・プロジェクターなどの使用料が対象となります(助成対象研修・訓練専用で使用したことが確認できるもの)。
  • 助成対象研修・訓練専用で使用する教材などの購入・作成費用。

(2)外部主催の場合
受講に際して必要となる入学料・受講料・教科書代等、あらかじめ受講案内等で定めている費用が対象となります。国や都道府県から補助金を受けている施設が行う訓練の受講料や受講生の旅費等は対象外となりますのでご注意ください。

(3)海外で実施する場合
海外の大学、大学院、教育訓練施設等での訓練に際して、必要となる入学料・受講料・教科書代(あらかじめ受講案内等で定められているものに限ります)、住居費(注1)、宿泊費、交通費(注2)。なお、海外の大学、大学院、教育訓練施設等が主催する訓練のみを対象とし、日本の訓練機関が単に海外で施設を借りて実施するものは原則対象外となります。

  • (注1)転居先の家賃のみを対象とし、引っ越し費用、敷金・礼金等の初期費用は除きます。
  • (注2)国内から海外への往復費用を含みます。

申請に当たって

人材開発支援助成金の活用は、企業の人材育成コストを軽減し従業員のスキルアップを実現するための有効な手段となります。また、これまでは現在の業務に直接関連する訓練のみが助成の対象となっていましたが、令和3年2月の改正で、企業が新たな分野に進出する計画がある場合、事業転換後に従事する予定の業務に直接関連する訓練も対象となりました。これにより、経営計画に沿った人材の開発・育成が行いやすくなりました。

また、新型コロナウイルス感染症の影響により、訓練などのスケジュールや内容に変化が生じた場合の措置もありますので、厚生労働省のホームページで最新情報や詳細をご確認ください。

参考

人材開発支援助成金の申請条件など詳細については、厚生労働省が発行している「人材開発支援助成金のご案内」をご参照ください。

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4. 社員育成・人材開発

社員育成・人材開発で企業のパフォーマンスを向上

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このほかにも助成の対象とならない教育訓練は詳細に規定されていますので、申請を検討する際は、助成対象の詳細を所轄の労働局・ハローワークにお問い合わせください。

  • *本記事中に記載の肩書きや数値、社名、固有名詞、掲載の図版内容等は公開時点のものです。

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