2022年 2月14日公開

読んで役立つ記事・コラム

初めての総務第10回「企業法務の役割」

執筆:マネジメントリーダーWEB編集部

情報化時代の進展とともに、企業法務の重要性に注目が集まっています。
現代の企業活動はコンプライアンスを徹底することで成り立っているといっても過言ではありません。そのため、迅速で的確な法務業務の遂行が企業存続の鍵となっています。

1. 企業法務の役割

コンプライアンスは「法令順守」と訳されますが、法令だけでなく社会的な通念・規範・倫理も含んだルールに従って行動することを意味します。企業の不正や不祥事の発生は、社会的な信用の低下を招き、結果として業績を悪化させる重大なリスクにつながる可能性があります。法務担当者はこのようなことが起きないように、コンプライアンスに関するルールを作成して事前にチェックを行うことが大きな役割だといえるでしょう。また、万が一トラブルが発生した場合は、企業の損失を最小限に抑えるべく対処することも非常に重要です。

ITインフラが整い情報化社会となった現在では、ささいなトラブルでも一瞬にして世界中に拡散してしまいます。そのようなことが起きないように、不正行為をしないという企業風土を確立して、細かなルールの作成と運用を継続していくことが企業法務の基本です。

目次へ戻る

2. 企業法務の二つの機能

法務実務には、紛争などのトラブルを回避するための予防的な機能と、企業活動を推進するための機能という二つの側面があります。

予防的な機能

業務として多いのが契約書の作成および契約内容の確認です。自社に不利益が生じない公正な契約となっているかを契約締結前に確認します。また、契約した取引でトラブルが発生した場合は、契約内容を基に交渉を行います。コンプライアンスが社会全体に浸透するにつれて、企業活動と契約行為はセットになりつつあります。そのため、迅速かつ正確な契約書のチェックが求められるようになりました。さらに、弁護士による人的なチェックに加え、AIによるチェックを利用するケースも増えています。AIによる法務チェックサービスを利用する場合は、これまでの契約案件を見直し、自社が行う契約内容に適したサービスを選択しましょう。

事業推進のための機能

新製品の発売や新たなサービスを行う場合、他社の特許に抵触しないかや、関係する法律が改正されていないかなどを確認します。また、自社で抱える特許や著作権などの知的財産を有効活用するために法的な側面から検討やアドバイスを行います。規制緩和などの法律改正では、改正により新たなマーケットが生まれたり、活性化したりすることがあるため、法改正の情報把握と改正内容の分析は企業の増収増益に貢献することとなります。

目次へ戻る

3. 企業活動に関係する法律

企業活動に大きく関係する主な法律は以下のとおりです。

人事・労務関係

  • 労働基準法、労働安全衛生法、労働契約法、労働者派遣法など

企業を形成する「人材」に関連する法律です。就業規則や雇用契約、従業員の健康管理などのルールはこれらの法律に従って策定します。

経営関係

  • 会社法、会社法施行規則など

役員の選任や取締役会、株主総会開催・運営に関係する企業の根幹を規定する法律です。経営に関わる法律となりますので、法律の改正には細心の注意が必要となります。

営業・販売関係

  • 不正競争防止法、景品表示法、消費者契約法、特定商取引法、下請法など

公正な取引を行うための法律です。過剰な販売行為などのトラブルが起こらないように法律に沿った取引ルールを作成し、運用します。また、扱う製品やサービスによって関係する法律が定められている場合がありますのでご注意ください。

製造関係

  • 製造物責任(PL)法、労働安全衛生法、環境関連の法律など

製造した製品に不具合が発生しないように、PL法などの法律に従った商品確認(耐性試験など)が必要となります。工場などの製造現場の就業環境や排出する煙や廃水については、人の健康や安全に影響しますので厳密に管理する必要があります。

知的財産関係

  • 特許法、著作権法、意匠法、商標法など

自社で開発した製品やサービスは、特許などの法律によってその権利を保護します。同時に他社の権利を侵害していないかも確認します。自社の持つノウハウをさまざまな形で利用するために、知財の保護と活用に積極的な企業が増加傾向にあります。

個人情報保護法や民事訴訟法など、上記以外にも企業活動に関わる法律は多岐にわたります。また、新しい法律の制定や改正も頻繁にありますので、法務担当者は幅広い視点ときめ細かな注意力を持って最新の情報収集を行うことが求められます。

目次へ戻る

4. 法務担当者に求められるスキル

法務担当者に必要なスキルは、幅広い法律の知識を持つことと調整能力です。また、コンプライアンスでは、法律的な知識だけでなく常識的なモラルを持って物事を判断することも必要となります。不正行為の発生は、ルールの形骸化などの要因があるといわれています。このような前兆を見逃さず改善することがトラブルの予防につながります。

社内では相談役/社外に対しては交渉役

企業法務の担当者は、社内の相談相手として機能することが求められます。特に経営者の側近として、判断が間違っていないか相談されることも多々あるでしょう。社内ルールの策定や改正では、関係部署との調整や規則周知のための研修を行うことも業務範囲です。

官公庁への届け出や訴訟対応など専門知識や資格を必要とする場合は、弁護士・司法書士・弁理士、税理士、社会保険労務士などの専門家に依頼します。案件によって得意・不得意がある場合があるので、幅広く専門家との人脈を維持しておくことが欠かせません。また、必要に応じて社外の方と交渉を行うこともあります。

このように、法律的な知識を持って高いコミュニケーション能力を発揮することが、法務担当者に求められるスキルとなります。これからの社会は欧米と同じような契約社会になると予想されており、企業法務は年々重要性が増していきます。企業の安全・安心な発展のために、法務担当者は大きな役割を果たしていくこととなるのではないでしょうか。

目次へ戻る

5. 企業の競争力を高める人材育成をサポート

eラーニング ASPコース

大塚商会は1982年に教育事業をスタートして以来、時代にマッチした人材育成支援サービスを提供しています。eラーニングASPコースでは、コンプライアンスやISMSに対応したセキュリティコースをはじめ、環境問題、情報技術、ビジネススキル、業務知識など、幅広くコースを取りそろえています。

  • *本記事中に記載の肩書きや数値、社名、固有名詞、掲載の図版内容等は公開時点のものです。

目次へ戻る