1. 稟議書の役割とは
稟議書(りんぎしょ)は担当者に決裁権などの権限が及ばない事項について、上司など関係する複数の責任者に承認を求め、決裁を得るために使用されます。
例えば、業務を行うために高額な物品が必要になった場合、担当者は購入目的とメリット、購入予定日、金額など、承認可否の判断に必要な情報を稟議書に記載します。稟議書は所属部門の責任者・管理職をはじめ、購入に関係する部門の責任者複数に回覧され、各自が購入の可否を判断します。最終的には、決裁権限を持つ責任者(通常は代表取締役などの組織トップ)が提案された内容の可否を決定します。
日本の官公庁や企業などの組織で幅広く利用されている稟議書ですが、そのメリットとデメリットは以下のようになります。
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2. 稟議書を利用するメリット
省力化
本来であれば、起案内容は承認を得るために必要な責任者を招集し、起案者が内容を説明して会議形式で審査を行うものです。しかし、起案内容だけを審議するために出席者のスケジュールを調整して会議を行うことは手間がかかります。また稟議のたびに頻繁に招集することも困難です。そこで、稟議書の書面のみで審議することにより会議招集の手間を軽減します。
複数の責任者による判断
稟議書は起案者の所属部門の上長だけでなく、関係する複数の部署の責任者が起案内容を審査します。例えば、物品購入の場合は別の部署でも利用可能か、過去に類似の物品を購入していないか、経理部門の責任者は物品の減価償却など、資産計上の観点から判断を行います。同様に、契約に関する稟議では、法務部門が、人材採用の場合は人事部門が、というように専門部署をはじめとする多角的な視点で審査することで新たな方法が見つかったり、別の課題が発見されたりするなど、稟議内容がより効果の高い内容になることもあります。また、稟議内容の不備や問題点に気づくなどのリスクを未然に防ぐ場合もあります。
情報共有
稟議書の審査で複数の責任者が情報を共有することにより、許可の決裁が下りると同時に実施がスムーズに進む可能性が高まります。高額な物品購入の場合は、支払いの手続きに手間がかかる場合が多いのですが、リース手続きなど、経理部門が稟議段階で購入条件を検討している場合は購入が迅速に行えます。
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3. 稟議書のデメリット
承認時間・手間
稟議書の問題点として大きな課題となっているのが、承認・決裁までの時間と手間がかかることです。特にテレワークが浸透するにつれて「稟議書の押印のために出社する」「承認者が出社するまで承認が滞る」といった課題が浮き彫りになってきました。そのため、電子回覧などのデジタル化が急速に進んでいます。
責任が不明確
複数の責任者で判断する合議制のデメリットとなりますが、問題発生時に責任の所在があいまいになる可能性があります。単に承認印を押印するだけでなく、承認可否の理由を記述するなど、判断理由や懸念事項を明確に記録して承認の責任所在を分かるようにすることも必要です。特に承認する立場の人は、申請内容に懸念点があれば、申請者やその上司に確認し納得したうえで承認する習慣を身に着ける必要があります。
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4. 稟議書の書き方
簡潔に目的とメリットを記載することが基本です。稟議内容が一目瞭然となるようにポイントを絞って箇条書きにします。詳細については説明資料として添付します。
特に、何のために行うのかという「目的」と実施で得られる「効果」、実施に関わる「予算」は、過不足なく分かりやすく記載することが必要です。内容にリスクやデメリットが想定される場合、隠すのは厳禁です。予想されるリスクとその対処方法を明記します。客観的に思考することで、リスクが発生しても最小限の損失で抑えることが可能となります。責任者の理解や信頼にもつながりますので、メリットだけでなく想定されるリスクについても記載することをお勧めします。
- 予算:予算は承認判断するうえで重要なポイントとなりますので、できるだけ正確に記載しましょう
高額な物品購入の場合は、複数の購入先候補から見積りを取り(合い見積り)それぞれのメリット・デメリットを付記します。
稟議書を電子化して業務効率をアップ
稟議書は、書面で審査し承認印を押すことが基本となっていました。そのために、前述したように承認印を押印するためにかかる時間が長期化することも多々ありました。業務効率アップのためには迅速な経営判断と行動が必要ですが、紙ベースの稟議書はこれに逆行する要素となってしまいます。
社員の自発的なアイデアや提案を「旬」のうちに承認するためにも、「稟議書の電子化」を検討してみましょう。テレワーク中に押印のためだけに出社することもなくなり、迅速に承認の可否判断が行えます。副次的な効果として、「起案者が承認状況を把握できる、承認者から質問があればすぐにレスポンスできる」など、社内提案を活性化するメリットが生まれる可能性もあります。
電子化するメリットは、そのほかにペーパーレスによる省力化などがありますが、実務で役立つのは「検索機能」ではないでしょうか。類似の稟議申請を検索し、承認可否の結果や理由を知ることで稟議書の作成や承認の判断の参考になります。類似の稟議が承認されなかった案件については、その理由がクリアされているかが大きなポイントとなります。検索機能を活用することで、稟議の申請から承認までの時間と労力を軽減することが可能となります。
稟議書の電子化については、既存システムの連携や交通費や出張費用の申請・精算など、社内の伝票や書類の電子化と併せて検討します。そのうえで電子承認のルールを設定・周知して運用を図りましょう。自社オリジナルで稟議承認フローを開発して電子化すると多額の予算と時間がかかりますが、近年は既存のシステムも多数用意されています。自社の業態や他のシステムとの連携などといった拡張性も踏まえて検討してみてはいかがでしょうか。
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5. 申請・承認の電子化で、業務効率化をサポート
SMILE V / eValue V ワークフロー
社員が届け出る人事に関わる申請は、ワークフローを利用して確実に処理することができます。稟議(りんぎ)や届け出の申請、報告書の提出など、企業内で行われる申請・承認を電子化し、業務の効率化をサポート。申請フォームに承認ルートや運用ルールを埋め込んだ「簡単ルート管理」で「内部統制」に対応した業務プロセスの標準化を支援するワークフローシステムです。
グループウェア・電子申請・承認システム SMILE V / eValue V ワークフロー
- *本記事中に記載の肩書きや数値、社名、固有名詞、掲載の図版内容等は公開時点のものです。
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