2023年 3月22日公開

読んで役立つ記事・コラム

企業を災害から守る防災体制とは

執筆:マネジメントリーダーWEB編集部

2011年3月に発生した東日本大震災をはじめ、大災害の教訓をあらためて胸に刻み、会社を守る防災体制を点検しましょう。近年は、働き方の多様化で防災対象も拡大しています。

1. 防災体制の確立を目指して

地震や水害、竜巻などの自然災害や火災・事故などから従業員とその家族、社屋や工場などの企業設備、関係者、関係施設を守るのは企業活動を継続するうえで欠かせない要素です。さらに、企業活動を支える取引先や地域社会、消費者も防災活動の対象となります。

企業の防災体制を軸に対象を拡大

これまでの企業防災体制は、社屋や店舗・工場などの企業施設での防災を前提としていました。また、一定規模以上の施設や企業の場合は、消防法などの法律により防災体制を確立することが義務付けられています。

防災体制を構築する際に基本となるのは、従業員が防災活動を行う「自衛消防組織」の設置・運用です。また、防災の障害となることはないか、避難訓練の実施など初期対応ができているかを客観的に確認する「消防査察」への対応も欠かせません。この2点については、後ほど詳しく解説します。

2020年以降は、働き方改革が進み急速にテレワークなどの在宅勤務が増えています。また、自宅以外にサテライトオフィスなどのワークスペースを利用するケースも増加傾向にあります。こうした状況を踏まえて、テレワークなど社外での勤務時に被災することを想定して、防災体制を見直すことが急務となっています。

防災体制の見直しのポイントは以下の通りです。

  1. 防災対象の見直し
    • 企業施設・設備の確認(施設とそこで働く従業員・関係者の把握)
    • テレワーク勤務状況の確認(在宅勤務の場所、同居親族の把握)
    • 上記以外での勤務状況の確認(サテライトオフィス、コワーキングスペース、取引先への訪問頻度などを把握)
  2. 防災対策の周知
    • 安否確認ルールの徹底(確認手順、方法を周知)
    • 勤務場所(事業所、自宅、業務上頻繁に訪問する場所など)のハザードマップ、避難場所(移動ルート含む)を確認
    • 避難グッズ(ヘルメット、マスク、軍手、非常用電源、飲料水、食料、貴重品など)、備蓄品、非常持ち出し品の確認(保管場所含む)

どちらも企業内の対策をベースに対象を拡大していくことが基本となります。テレワーク勤務が浸透している場合はオフィスと自宅双方に防災対策を施すのが理想です。何よりも肝心なのは、従業員各自の防災意識を高めていくことです。社内に自衛消防組織や防災担当を定めている場合は、ローテーションの頻度を上げるなどして、なるべく多くの従業員が関わるような運営を行います。これらの活動を通して、防災の知識やスキルを波及させていくことで、徐々に社内外での防災体制が形成されていきます。

  1. 防災対策の確認
    • チェックリストの作成と配布・集計・評価の徹底
    • 定期的な防災訓練の実施

企業施設の場合は、消防査察や火災報知機の点検があります。従業員の住居などの生活環境については、チェックリストを配布して防災状況を確認しましょう。避難グッズは家族分を企業から配布するなど、できるだけ職場と同じ防災環境を整えることをお勧めします。

テレワーク時の防災訓練は、従業員だけでなく同居する家族がいる場合は一緒に行うことをお勧めします。特に、家具の転倒や落下による危険性の有無を確認したり、消火設備の確認や避難場所場に実際に行ってみたりするなど、いつ災害が起きても慌てずに行動できるように備えを整えましょう。安否確認は緊急連絡先(伝言ダイヤル)などの連絡手順を実際に使用して確認します。定期的な訓練だけでなく、災害を想定した抜き打ちの訓練も検討してみましょう。

参考

以下、過去に「役立つ! 総務マガジン」に掲載された記事を再編集したものです。

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2. 企業内防災に有効な「自衛消防組織」とは

消防法では、劇場や百貨店、学校など多くの人が集まる施設、階数や延べ面積などが一定の基準を超える建物を利用している事業主に対して、自衛消防組織(自衛消防隊)の設置を義務付けています(消防法第8条の2の5)。

対象施設

出典元:一般財団法人 日本消防設備安全センター「自衛消防組織の設置を要する防火対象物の範囲p.1」を参考に作成

続きはPDF版(ダウンロード)をご覧ください。

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3. 消防査察と対応のポイント

消防査察とは

屋内消火栓(スプリンクラー)の不適合などの消防法違反や耐火構造の不備などの法令違反は、火災をはじめ災害による被害を広げる原因となる可能性があります。そのため、コンプライアンス(法令順守)としての意味合いはもちろん、何より従業員の安全を確保するためにも、消防査察への適切な対応は大変重要です。

大規模な事業所になると毎年、そのほかの事業所でも数年ごとに、管轄の消防署による消防設備および防火施設に関する査察が行われます。査察実施の連絡は事前に行われる場合が多いのですが、通告なしに突然行われる場合もあります。火災をはじめ災害は突然起きますので、査察の有無にかかわらず日常的に災害対策が円滑に実施できるようにしておくのが理想です。

消防査察でチェックされるポイントは、消防関係の管理状況(防火管理者の選定、防火マニュアルなどの書類や防火管理体制、避難訓練などの実施状況)と、避難通路・避難口の確保や消防設備(スプリンクラーの可動範囲内での散水障害、熱感知器や煙感知器)の稼働状況を目視確認します。そのほかにも、消火器の適切な配置や屋内消火栓の扉の開閉障害・ホースノズルの確認などが行われます。

立ち入り検査の項目とポイント

消防立ち入り検査の実施で行われる項目と検査のポイントをご紹介します。

立ち入り検査項目

  • 防火管理について(管理者・管理体制)
  • 消防計画の有無
  • 消火・避難訓練の実施状況
  • 自主検査の実施状況
  • 共同防火管理協議事項
  • 避難設備構造の確認
  • 避難障害
  • 防火戸など閉鎖・作動障害
  • 防火区画など構造の確認
  • 消防用設備などの設置状況
  • 消防用設備などの機能・動作確認
  • 消防用設備などの点検状況
  • 危険物などの届け出・取り扱い
  • 火気使用設備(電気・ガス設備などの出火危険を伴う設備)の有無
  • 防火対象物点検結果報告との整合性(虚偽の報告/紛らわしい報告の有無)

検査のポイント

避難障害の有無

通路上、特に避難誘導灯が設置してある出入り口に向かっている通路上に、段ボール箱や備品などの通行障害物が置いてあり、それらを避けながらでないと出入り口に行けない場合、「避難障害」として改善を求められます。

避難階段や踊り場、避難階段に通じる扉付近に物が置いてある場合は、量の多少にかかわらず、全て除去するように指摘されます。実際に、避難経路を倉庫代わりにして商品や備品を置いていたために火災が起きた際に避難できずに犠牲者が発生した、という事例もあるのです。避難経路に物を置くことは絶対に避けましょう。

続きはPDF版(ダウンロード)をご覧ください。

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4. 総合力の大塚商会が提供するBCP対策サービス

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  • * 本記事中に記載の肩書や数値、社名、固有名詞、掲載の図版内容などは公開時点のものです。

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