2023年 4月12日公開

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デジタル時代の健康診断と運用方法とは

執筆:マネジメントリーダーWEB編集部

インターネットの活用により対面で仕事をする機会が減少しています。移動がなくなり楽になる反面、運動不足になるリスクもあります。そこでデジタル時代の健康維持方法を考察してみました。

1. 企業の健康管理の基本は「健康診断」

企業は従業員が健全に働くことで、円滑に製品やサービスを提供することができます。企業・組織は従業員の健康を確保するために従業員に対して健康診断を実施することが義務付けられています(労働安全衛生法第66条)。

健康診断の対象者と受診期間

健康診断の受診が法律で義務付けられている従業員は、以下の通りです。

  • 常時雇用の従業員
  • 契約期間が1年以上の従業員
  • 週の労働時間が正社員の3/4以上の従業員

上記に該当しない場合でも、週の労働時間が正社員の1/2を超えて、3/4未満の従業員は、健康診断を実施することが望ましい(努力義務)とされています。

通常の業務を行っている事業所の場合、受診は1年以内に1回とされていますが(一般健康診断)、深夜業務や重量物の積み下ろし、高温・低温環境での業務など、肉体的負荷の大きな業務(特定業務)に従事している場合は、6カ月以内に1回となります。

また、有機溶剤、放射線、特定化学物質など、有害物を扱う業務に従事する従業員は、契約形態、契約期間に関係なく、全ての従業員が6カ月以内に1回、健康診断を受診しなければなりません(特殊健康診断)。

参考

厚生労働省「労働安全衛生法に基づく健康診断を実施しましょう~労働者の健康確保のために~」(厚生労働省のWebサイト<PDF>が開きます)

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2. 健康診断の流れ

一般健康診断のワークフローは以下のようになります。

健康診断の準備

従業員のデータベースを基に健康診断個人票を準備します。並行して、健康診断を行う医療機関を選定します。役員・事業所(部署)のスケジュールを確認して、医療機関の予約を行い社内告知します。

事業所に医療機関が訪問して集団検診を行う場合は、会議室や駐車場(レントゲン車など)といった検診場所を確保します。受診者が受診先の医療機関を選択する場合は、予約状況を確認して未受診の場合は検診を促します。受診率を向上させるために、日程や検診場所は複数の選択肢を設定することが推奨されています。

健康診断の実施

定期健康診断の実施は、前述したように一般健康診断の場合は1年以内に1回、特定業務や特殊健康診断の場合は6カ月以内に1回となります。また、1年以上の雇用契約となる従業員が入社する際は、健康診断を受診して診断書を提出することが義務付けられています。特定業務や特殊健康診断が必要な事業所への異動・配置転換の場合も健康診断を受診する必要があります。

受診結果の通知

受診結果は従業員本人に通知するとともに、健康診断個人票に結果を記載し保管します。また、従業員が50人以上の事業所の場合は、労働基準監督署へ受診結果を報告する義務があります。この場合の従業員数は、アルバイトや健康診断の対象外のパートタイム労働者も含んだ総数となります。健康診断対象者数だけではありませんのでご注意ください。

異常が認められる場合は、再検診や精密検査を促します。これ以降は、治療を前提に産業医など、企業が契約している医者、従業員が所属している部署の管理職、人事・総務部門の健康管理担当者が従業員本人と面談を行い治療のフォローアップを行います。

なお、健康診断結果などの健康情報の扱いは、労働安全衛生法の健康情報取り扱い規程に定められた「要配慮個人情報」となります。従業員の病歴により、職場差別や不利益が生じないように、情報の管理・運用には十分ご注意ください。企業・組織と従業員の信頼関係がなければ、生活指導などの適切な健康管理ができなくなります。

参考

厚生労働省「事業場における労働者の健康情報等の取扱規程を策定するための手引き」(厚生労働省のWebサイト<PDF>が開きます)

再検査、精密検査

健康診断で何らかの異常が認められた場合は再検査・精密検査となります。病気の予防、早期発見、早期治療の観点から、産業医や保健師と相談の上適切な健康指導を行います。

  • 経過観察:定期的な検診の実施と勤務環境、生活習慣のチェック・改善の指導を行います。
  • 病気が見つかった場合:従業員本人と産業医・保健師、健康管理担当者、所属長を交えて、治療支援、サポートのための相談を実施します(通院のための時短勤務やテレワークの実施など)。

労働環境の変更や休職期間の設定など、適切な治療を施すために必要なことを確認します。治療後は勤務復帰についての相談を行い、無理のない形で復帰することを目指します。

健康診断の費用

健康診断は法律で定められた義務となりますので、健康診断費用は企業が費用を負担することが原則となります。また、健康診断の受診にかかる時間の賃金については企業が負担することが望ましい(厚生労働省労働基準局長通達)とされています。健康診断で胃カメラなどのオプション検査を希望した場合や再検査や精密検査については、原則として受診者の負担となります。健康診断よりも精密な検査を行う人間ドックの受診は、一般健康診断に定められている法定項目の検査は企業負担、それ以外のオプション検査は従業員負担としている場合が多いようです。

近年は、従業員の健康を維持・増進する観点から、人間ドックの検査や再検査など、法定の健康診断項目を超える場合でも企業負担とするケースが増える傾向となっています。加入している健康保険組合によっては、人間ドック受診に補助金を支給されるケースもあります。企業と従業員のどちらが負担するにせよ、できるだけ出費を抑えるようにさまざまな制度の利用を検討してみましょう。税金の扱いについても、人間ドックの検査は給与課税の対象外となります。ただし、対象者を限定したり、高額な人間ドックを利用したりする場合は、課税対象となる可能性がありますので注意が必要です(注)。

健康診断の費用負担については、あらかじめ社内ルールを定めて周知することをお勧めします。合わせて、健康管理にかかる費用の算出や従業員の福利厚生費用(法定福利、法定外福利)予算と効果の検証も行います。これらの結果(効果)が表れるまでには年単位の時間がかかりますので、できるだけ早期に取り組みましょう。

(注)国税庁「人間ドックの費用負担」2022年8月https://www.nta.go.jp/law/shitsugi/gensen/03/03.htm

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3. デジタル時代の健康診断とは

健康診断は企業が行う従業員の健康管理の象徴的な取り組みであり、従業員が健康で末永く働けることは企業にとっても大きなメリットをもたらします。そのため、企業が積極的に従業員の健康増進策を推進するケースが増えています。

デジタル化のメリットは、何といってもオンラインで手軽に情報の受発信ができることです。医療の世界でも遠隔医療などオンライン化が進んでいることもあって、診療機関に足を運ばなくても治療が可能になる時代になってきています。従業員の健康管理もオンライン化できれば、アドバイスもより手軽に行えるでしょう。従業員も専門家への相談がメールやスマートフォン、PCの画面を通じていつでもどこからでもできるようになってきました。

健康診断結果を指標として日常的な健康管理を行うことは、病気の予防と早期発見・早期治療につながり、企業の生産性が高めることへとつながっていきます。

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4. 従業員満足度を高めるために

従業員の健康管理施策は、企業から守られていることを実感し、企業に対してのロイヤリティや満足度を高める効果をもたらします。

健康で元気に定年まで働けることは、従業員やその家族にとっての理想の一つです。特に近年は少子高齢化の影響で定年の年齢が引き上げになる傾向にありますので、企業の健康管理はより重要性が高まっています。日本人に多いとされる三大死因(悪性新物質、心疾患、脳血管疾患)は、日常の生活習慣の影響が大きいといわれているからです。

また、従業員だけでなく同居する家族がいる場合は家族の協力も必要です。企業によっては、健康管理の対象を従業員と同居家族にしているケースもあります。ワークライフバランスを取ることが前提となりますが、テレワークの浸透で企業と家庭の関係も強くしていく必要があるかもしれません。

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5. DX時代の健康診断に向けて

健康診断結果を踏まえて、従業員の待遇改善や労務環境改善を行う場合は、健康投資の視点で検討してみましょう。従業員の疾病状況(予測含む)と改善目標を設定して、目標達成にかかる費用と得られる効果を計算します。離職による損失や新規採用のコストを算出すると従業員の健康管理の重要性が可視化できるかもしれません。また、デジタル化についてはIT関連の補助金も用意されていますので、企業インフラを整える一環として検討してみてはいかがでしょうか。

企業では、健康診断だけでなくメンタルヘルスチェックも義務化されています。デジタル化が進むと便利になると同時にメンタルの不調や運動不足による疾患が増えてくるとの予測もあるからです。来たるべきDX時代において、会社全体が健康に活動できるように、手厚い健康管理体制を構築することをお勧めします。

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6. 「健康」に働ける職場作りで生産性向上を実現

健康経営・健康管理支援 Universal 勤次郎 ヘルス×ライフ

経営者と社員が「健康」で働ける職場作り。それが「生産性向上=業績向上」の柱となり、「健康経営」でサポートする「働き方改革」になります。従業員の健康維保持・増進を行うことは、「コスト」ではなく、将来に向けた「投資」であると捉えることができます。「Universal 勤次郎 ヘルス×ライフ」は、心身・働き方・生活データを一元化・分析し、的確な健康増進施策が可能。健康課題の可視化を行い、社員の健康を増進し、労働生産性の向上を実現します。

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  • * 本記事中に記載の肩書や数値、社名、固有名詞、掲載の図版内容などは公開時点のものです。

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