2023年 9月27日公開

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事業承継と経営人材の確保・育成

執筆:マネジメントリーダーWEB編集部

事業承継ができないため、廃業に至る中小企業の増加が止まりません。特に後継者の確保・育成は大きな課題となっています。経営人材の確保・育成に必要な要素を解説します。

1. 中小企業の後継者不足と廃業危機

中小企業経営者は高齢化を迎え、事業からの引退に伴う「後継者不足」が大きな社会課題となっています。このため、国としても相続税の軽減やM&Aの推進など、さまざまな事業承継関連策を打ち出しています。

経済産業省(中小企業庁)が2016年に行った経営人材の育成についての調査では、経営人材候補育成の取り組みをしている企業でも半数を超える52.9%の経営者が不安と回答しています。法人経営者のうち約3割が、個人事業者の約7割が廃業を予定しています。その理由として「子供に継ぐ意志がない」「子供がいない」「後継者が見つからない」といった後継者不足を理由としている経営者が、合計で全体の約3割となる28.6%を占めています。

一口に廃業といっても、良好な業績を維持している企業をはじめ、特化した技術やノウハウを持った企業も多くあり、従業員や取引先なども含めた損失は大きいものがあります。このような状況を打破するために、マッチングによるM&Aによる事業承継が推奨されていますが、お互いの経営方針や社風の理解に時間を要することも多いようです。

中小企業庁「事業承継に関する現状と課題について 平成28年11月28日」(中小企業庁のWebサイト<PDF>が開きます)

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2. 経営人材の育成方法

経営者となるために必要なスキルは以下のようになります。

  • 経営理念を考え、信念として持ち続ける継続力
  • 経営理念を実行するための方法論を考える経営企画力
  • 経営理念を実行し結果を出す行動力
  • 取引先や従業員などのステークホルダーをけん引する統率力
  • 部下から慕われ、周囲から信頼される人望、信用力

理想とされる経営者を分析すると上記のようなスキルが必要と思われますが、このスキルを全て兼ね備えた人材はなかなか少数ですし、教育で短期間に育成するのも難しいことです。そのため、次世代を担う経営人材の育成に当たっては長期的視点と全社的な周知・理解のもとに進めていく必要があります。

経営人材の育成ステップ

  1. 自社の経営ビジョンと経営ビジョンを実現する人材像を明確にする
    →自社にふさわしい経営者像を客観的に表現
  2. 経営者像の具体化
    →技術・ノウハウ・アイデア・社会貢献など、一番重視されるスキルを中心に、自社の経営者として必要とされるスキルを具体的に提示
  3. 人材の発掘・選定
    →「社内プロジェクトや新事業でリーダーシップを発揮し、結果を出す従業員」など、どのような力を発揮する人材を求めているのかを明確化
  4. 自社にないスキルは社外から登用するなど、多様な人材が活躍できる環境の創出

高度成長時代には、社員⇒課長⇒部長⇒取締役⇒社長というような「出世階段」と言われるルートがありました。また、経営者として育成するために、まずは総合的に全社を見渡せる総務部門に配属するという企業もありました。現在では、管理職の次に執行役員として社員としての身分で経営的な業務を行い、経営人材としてのスキルを磨くケースも増えています。また、執行役員の登用も対象となるのは自社のプロパーだけでなく、社外からの人材を登用するケースが増えています。

DX時代になることで、社内情報の多くは可視化が可能となるため、社外の人材でも容易に社内状況を理解することが可能となります。また、後継者対策と同時に課題となっている女性役員の登用や、ネットワークの進化に伴うグローバル化も併せて検討してみてはいかがでしょうか。

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3. 経営人材育成支援施策

中小企業の事業承継をサポートするためにさまざまな施策があります。
主な支援策は以下のとおりです。

  • 事業承継の相談窓口
    国のM&A支援機関「事業引継ぎ支援センター」
    全国の窓口で後継者の選定・育成やM&Aマッチング支援などを行っています。

上記以外にも、税制の優遇措置や金融支援や経営者育成支援(中小企業大学校)などがあります。補助金など時期や、予算措置により変動する施策もありますので、詳細や申請方法は、上記相談窓口へお問い合わせください。

参考

事業引継ぎ支援センター「事業引継ぎ支援センター(トップページ)」(事業引継ぎ支援センターのWebサイトが開きます)

中小企業庁「『事業承継ガイドライン』対応 中小企業・小規模事業者向け 経営者のための事業承継マニュアル 2017年3月版」(中小企業庁のWebサイト<PDF>が開きます)

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4. 事業承継に特化した専門コンサルティングによる相談窓口

事業承継コンサルティング - 事業承継センター

「何を準備して、どのように進めていったらよいか分からない」「後継者がいない、もしくは育っていない/後継者への事業承継のタイミングが分からない」「株式の譲渡、代表権の移譲、連帯保証人の移転などについてアドバイスがほしい」などといったお困りごとはありませんか? 中小・零細企業の事業承継に特化した専門コンサルタントがお困りごとをお伺いします。行政・自治体から事業承継支援事業を受託しているほか、さまざまな金融機関とも提携しているため、さまざまなご相談に対応が可能です。30年、50年、100年企業を目指すために事業承継センターをぜひご活用ください。

  • * 本記事中に記載の肩書や数値、社名、固有名詞、掲載の図版内容などは公開時点のものです。

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