2022年 1月 5日公開

【連載終了】読んで役立つ記事・コラム

電子契約書に移行する際の注意点

執筆:マネジメントリーダーWEB編集部

電子契約書に移行する際の方法と注意事項をまとめました。
2022年1月の電子帳簿保存法の改正施行で、税務署長への事前申請制度が廃止されるなど、電子契約書の要件が緩和されました。紙から電子契約書へ移行する際の注意点を解説します。

1. 電子契約書とは

契約書は、雇用契約・売買契約・賃借契約など、企業活動を行う際の約束事を明記した重要な書類です。契約書は、打ち合わせを行い合意した内容を書面に記載し作成します。その記載内容に間違いがないことを確認のうえ、契約者双方が調印し保管します。

紙で契約書を作成する場合は、プリントアウトした契約書を製本し、契約金額などの契約内容に応じた収入印紙を貼り付け、署名・押印します。

電子契約書を作成する場合は、作成した文書データをPDF化し、当事者が承認した証明として電子署名を行い、紙の契約書の割り印・契印に相当するタイムスタンプを付与します。収入印紙は電子契約書では不要となります。また、紙の契約書の場合は契約書を郵送、または持参する必要がありますが、電子契約書はメール送付などインターネットを通して瞬時にやりとりできます。このように、契約書を電子化することで大幅な経費と労力の削減が可能となります。

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2. 電子契約書を作成するには

テキストデータをPDFに変換するだけでは電子契約書として成立しません。契約者が内容を確認したことを証明し、改ざんを防止するために電子署名・タイムスタンプを付与することが必要です。電子契約書は大別すると、契約者の本人確認を行い認証局が発行する電子証明書を利用する「当事者型」と、契約している電子契約システムから送信される確認メールで認証を行う「立ち会い型」の2タイプがあります。

当事者型は、本人確認を厳格に行うため、不動産などの高額な売買契約に適しています。立ち会い型は、メールが受信できる環境であればどこでも認証できるため即時性と簡易性に優れています。タイムスタンプは主に改ざん防止で使用されるもので、作成・署名・修正・改変の日時を記録するものです。電子契約書の作成履歴を証明します。

これらは電子契約書作成のサービスを利用するのが一般的です。自社が頻繁に利用する契約案件に適したサービスを選択しましょう。

電子契約書の保管

締結した電子契約書は、自社のサーバーまたは契約している外部クラウドサーバーにセキュリティを担保したうえで保存します。

保存期間:契約書、注文書、領収書、見積書などの取引情報に係る書面は、7年間保存する義務があります(法人税法施行規則59条)。

保存要件:長期的に消去や改ざんのリスクを解消する方法で保存することが必要です(電子帳簿保存法10条)。

見読性(見読可能性、可視性とも)の確保

手書きの契約書をスキャンして作成する場合は、文字が認識できる解像度でスキャンしなければなりません。識別・判別できない文字があると契約書として認められない場合がありますのでご注意ください。また、契約書が閲覧できるPCと必要に応じて出力できるプリンターを備えることが必要です。

関係書類の整備

サーバーの仕様書、運用マニュアルが備えられていること。マニュアルの整備だけでなく、電子契約書の作成・保存方法についての研修を行い周知することをおすすめします。

検索性の確保

契約書の必要事項がいつでも検索して閲覧できる必要があります。

  • 年月日での検索が可能
  • 取引先別の検索が可能
  • 金額別、勘定科目別の検索が可能

上記に加えて、範囲指定や項目の組み合わせ指定で検索可能であることも必要です。また、帳簿や契約書の種類に対応した項目で検索できることも求められます。ただし、税務署が指定するダウンロード要請に対応している場合は範囲指定・項目の組み合わせ機能は不要です。

電子契約書は、紙の書類と異なり金庫やキャビネットが不要です。セキュリティやバックアップなど、安心して長期間保存できることが必須となります。電子契約書のメリットは、セキュリティに注意しながら必要に応じて閲覧できるようにすることで、契約書管理の可視化が実現し、企業全体の情報共有に役立つことです。保存だけでなく活用ルールを設定して契約ノウハウの向上に役立ててはいかがでしょうか。

参考

国税庁「電子帳簿保存法が改正されました」(2021年5月版)(国税庁のWebサイト<PDF>が開きます)

電子契約書の注意点

コスト削減、業務効率向上に役立つ電子契約書ですが、導入に当たっては注意も必要です。

1. 取引先の合意
自社で電子契約を導入しても、相手方が対応していると限りません。電子契約に対応してもらえるように理解を促すことが必要となります。業務フローも変わるため、急な対応が難しいケースもあります。相手が電子契約に対応していない場合は従来どおり紙の契約書で締結となります。

2. 契約文書の変更
契約書で従来、使用しているひな形(テンプレート)を使用する場合は、記述している文章を変更しなければならない場合がありますのでご注意ください。

(例)

契約書文面の場合本契約書2通を作成し……
電子契約書の場合本電子契約書ファイルを作成し……

紙の場合は、同じ契約書を2通作成し契約者双方が署名・押印していましたが、電子契約書の場合は一つのファイルを双方が共有することとなります。また、契約書は契約書ファイルとします。同様に「書面→電磁的処置、電磁的記録」など、紙と電子媒体では表記が異なりますので従来の紙の書式は細かく見直す必要があります。自社が電子契約書の形態で保存し、相手方は紙の契約書で保存する場合は「書面と電磁的記録を作成し……」のように、紙・電子両方に対応する記述となります。

3. 業務フローの改定
文書管理規定において、紙の書類を管理するフローに加えて、電子書類を管理するフローが必要となります。作成・保管・閲覧などのルールを設定して周知を行いましょう。契約書をはじめ重要書類については、アクセス権限の設定ルールとログ管理などのセキュリティ対策も必要となります。

4. 電子契約書が認められていない契約書
電子帳簿保存法の改正が頻繁に行われ、DX(デジタルトランスフォーメーション)時代を見据えた書類のデジタル化が推奨されていますが、一部の契約については電子契約書が認められていないものがあります。今後、認められる可能性は高いと思いますが、契約書作成の際は電子契約書の可否をご確認ください。

電子契約書が認められていない主な契約(2021年11月現在)

  • 訪問販売契約、電話勧誘販売、連鎖販売、特定継続的役務提供、業務提供誘引販売取引における書面交付義務
  • 定期借地契約、定期建物賃貸借契約
  • 投資信託契約の約款

など

5. プリントアウト/スキャン
電子契約書のメリットの一つはペーパーレスによるコスト削減、環境対策です。不用意にプリントアウトしてデスクに広げっぱなしにするようなことは、情報流出の原因ともなりますので絶対に避けてください。プリントアウトのルールを設けて、出力から廃棄まできちんと管理しましょう。

過去に紙で作成した契約書をスキャンしてデジタル化する場合は、電子帳簿保存法施行規則が定めるスキャナー保存の要件を満たす必要がありますが、この要件は年々緩和されています。きちんと可視化できる解像度(*)でスキャンデータを作成しましょう。

なお、民事訴訟の場合は、紙の契約書の原本のみが証拠として認められています。そのため、訴訟が想定される契約書はスキャン後も原本を保存しておいてください。

  • * スキャン解像度:国税庁では、書類の真実性と可視性を確保するために一定水準以上(200dpi以上)で読み取ることを要件としています。

電子契約書の今後

ここまで解説したとおり、企業の文書全体がデジタル化の方向へ推移しています。電子契約書への移行もこの流れの中の一つです。紙から電子へという業務フローの変革は、全社的な視点で行うことが大切です。企業活動ではさまざまな契約が必要となります。電子化によりスピーディーに契約締結できることが、企業のフットワークの良さとなります。契約書の電子化は、企業内のほかの文書全体の電子化に大きく影響を与えることになるでしょう。セキュリティに十分な注意を払って、契約書の電子化にまい進してください。

参考

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3. 電子契約とは? 製造業における契約書類電子化のメリット

導入のポイントについて、わかりやすく解説します

新型コロナウイルスの影響によるテレワークへの対応などで、オンライン上で完結するペーパーレスや脱ハンコといった電子契約が企業に求められています。製造業界でも業務委託契約書や製造請負契約書、秘密保持契約書といった契約書類の「電子化」を目指し、大企業、中小企業問わず、社内文書の電子化への取り組みが始まっています。

電子契約とは? 製造業における契約書類電子化のメリット

  • *本記事中に記載の肩書きや数値、社名、固有名詞、掲載の図版内容等は公開時点のものです。

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