1. 企業と環境保全の取り組み
地球温暖化というリスクに対処するために、世界的規模で二酸化炭素の排出量削減などといった環境保全のための取り組みが行われています。2015年には国連サミットで2030年までに持続可能な社会の実現を目指すための国際目標=SDGsが全会一致で採択されています。
この地球環境の保全については、資源を利用して生産活動を行う企業が大きな役割を担っています。資源の無駄遣いを防ぎ、生産で消費するエネルギーを抑制し、CO2などの排出物を低減させる取り組みが世界中の企業で行われています。
日本でも官民が一体となったSDGs達成に向けた活動が展開されています。SDGsは地球規模で人類がより良い生活を行う環境を作ることを目標としており、環境だけでなく質の高い教育や、人種・男女差別のない平等な社会の実現、健康的な生活、防災など、17項目に及ぶ目標が設定されています。
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2. SDGs・エシカル・サステナブルの意味と違い
SDGsと同じような意味で「エシカル」、「サステナブル」という言葉を耳にすることも多いかと思います。
エシカル消費
SDGsは前述した通り「持続可能でよりよい社会を2030年までに実現する」という目標です。ここでは17のゴールと169のターゲットが構成されています。この目標を達成するための要件にエシカルがあります。
エシカル(ethical)は「倫理、道徳」という意味ですが、社会問題としては、消費者が単に自分の嗜好(しこう)だけでなく、社会問題の解決につながることを意識して消費活動を行うことを指します。エシカル消費は、SDGsの12番目の目標達成要件「つくる責任・つかう責任」に連動した活動になります。
「つくる責任・つかう責任」の主な達成要件
- 食品ロスの減少
- 産業廃棄物の削減・防止
- リサイクル・再生利用の推進
例えば、単にデザインが好みだから買うのではなく、その製品が廃棄されたガラスなどのリサイクル原料を使用している、使用した後は土(自然)に戻る素材で作られているなど、資源の枯渇や環境汚染に対応した製品であることに付加価値を見いだして購入(消費)することです。
サステナブル
1960年代から日本の高度成長期となり、大量生産・大量消費が行われました。その結果、大気汚染や河川の汚染などの環境問題が発生しました。さらにCO2の大量排出で温暖化が進み、気候変動による生態系の変化や豪雨などの自然災害が発生するようになっています。
大量生産を行うと、必然的に大量のエネルギーを消費します。石油・石炭・天然ガスなどの化石燃料は、あと数十年で枯渇してしまうとの指摘もあります。サステナブル(sustainable)は「持続する、維持する」という意味で、SDGsの目標である持続可能な社会につながります。持続可能とするためには、場当たり的な活動では達成できず、長期的な視野と計画に沿って行動することが求められます。
例えば、資材として木材が必要となった場合、無計画に伐採すると森林が減少するだけでなく、土砂崩れなどの災害を引き起こす原因にもなり、一度伐採すると次の木が育つまでに数十年待つことにもなります。周囲の環境に配慮しつつ、計画的に伐採と植林を行う必要があります。これらのサイクルを実行するためには、長い年月がかかります。サステナブルの実施に当たっては、明確な意思と受け継ぐ人を育成することが必要となるのです。
企業活動が社会課題の解決とどのようにリンクしてくのかを分析し、自社の存続につながるための課題を大局的・長期的なスタンスで検証してみることをお勧めします。
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3. アフターコロナ時代とエシカル消費
新型コロナウイルス感染症のパンデミック(世界的大流行)により、長期間にわたり世界的な規模でロックダウンや移動制限などの措置がとられ、飲食業をはじめとして大きな経済停滞が起こりました。日本でも、それまであまり普及していなかったテレワークなどの在宅勤務が推奨され、ステイホームにより、オンライン授業やオンラインイベントなどのネットワーク利用が急速に進みました。
2023年に入り、感染拡大防止のための規制は大幅に緩和されはじめ、経済活動が本格的に再稼働する状況になっています。しかし、新型コロナウイルスは完全になくなったわけではなく、ウイルスの変異や新たなウイルスによる新たなパンデミックが起きる可能性もあります。
このような状況で人々の意識に変化がみられるようになってきました。大きくは、前述したネットワーク利用による利便性の認識です。今、企業ではDXによる生産効率化が叫ばれていますが、コロナ禍によるステイホームで仕事や勉強、買い物などでネット利用の利便性を享受した方は多いと思われます。
コロナ禍のステイホームで、これまでの大量消費時代に培われていた慣習がなくなり、生活とデジタルが融合した時代になったと言われています。また、ウイルスに対しての不安から、環境保全を重視する意識も強くなっています。
エシカルは論理的、道徳的といった意味があると前述しましたが、新型コロナ感染拡大の規制が緩和されても大多数の人が自主的にマスクを着用している日本人は、特にエシカル的な民族なのかもしれません。
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4. エシカル消費に対応した企業活動とは
コロナ禍以降、環境保全やデジタル化への意識が高まり、環境に配慮した製品を生む出す企業を応援する土壌も形成されています。では、この変化に企業はどのように対応すれば良いのでしょうか。
エシカル消費推進の宣言
企業活動の方針としてエシカル消費に対応することを宣言します。過剰包装の撤廃や廃棄物の削減、輸送エネルギーの効率化や削減など、自社において効果の高い施策を検証します。消費者にエシカル消費に対応した製品・サービスをアピールするためにはエシカルマークを取得しましょう。
エシカルマークは以下のカテゴリーに分かれています。
- 地球環境保全に関連するもの
- 魚や動物に関するもの
- オーガニック製品
- 労働環境の整備、開発途上国支援
エシカル消費に対応している製品・サービスでも、消費者に伝わらなければ、単に値段が高いだけのものという印象しか与えません。第三者機関が客観的に認証した製品・サービスは信頼性が高くなります。ただし、認証機関が求める水準に達していることと、認証を受けた後は、認証基準を維持する努力を継続することが必要です。申請した原材料が実際は使われていなかったなどの問題が発覚すると大きく信頼を失います。
製品・サービスだけでなく、従業員への福利厚生でもエシカル消費ができます。
- 社員食堂での地産地消
- 地元野菜や特産品の社内販売
- 社内イベントでの地元特産品活用
など。
企業全体で、環境保全に対しての意識を啓発し、継続的に盛り上げていくことがポイントとなります。これがきっかけとなって、地域との交流が深まればさらに効果がアップするでしょう。
アフターコロナの時代に対応して、環境に配慮したエシカル企業としての魅力アップを検討してみてはいかがでしょうか。
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5. 企業にも求められる環境問題に対する社会的責任
ペーパーレスの意義と目的は? 企業における導入例を解説
国際連合が提唱する「SDGs(持続可能な開発目標)」をはじめ、企業にも環境問題に対する社会的責任が求められる機運が高まっています。その中でもペーパーレス化を推し進める動きは、国や政府による号令のもと、ビジネスシーンおいて強まってきており、今後ますますその潮流は加速すると考えられます。ペーパーレス化は紙の消費量減少に直結する取り組みであり、多くの企業で普及すれば環境破壊や地球温暖化といった問題の解決につながります。ペーパーレス化を推進する意義と目的を社会全体と個々の企業視点で解説し、具体的な取り組み事例を含めてご紹介します。
ペーパーレスの意義と目的は?企業における導入例を解説
- * 本記事中に記載の肩書や数値、社名、固有名詞、掲載の図版内容などは公開時点のものです。
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