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1 ArchiCADで柱や梁を作成すると
柱のサイズを変更したい場合、その柱を選択してダイアログボックスで柱の大きさを変更するというのが、前回紹介したArchiCADの操作の原則だ。例えば1本の柱を選択して、下の図のようなダイアログボックスを表示させ、その柱のサイズを変更できる。いたって普通の操作なのだが、実は構造設計ではこれでは困るのだ。
何が困るかというと、C1という符号のいくつもある柱のサイズを1本だけ変えられては困るのだ。
C1という符号のサイズが変更されたら、他のC1のサイズも変わってほしい。つまり同じC1という柱でサイズがバラバラでは困るのだ。同じ符号の柱や梁は同じサイズというのが構造設計の大原則だ。
ArchiCADでもしC1柱のサイズを変更する場合は、C1の柱をすべてフィルタ選択して変える。C1柱の全選択に失敗して選択もれがあったりすると大変だ。同じC1なのにサイズ違いがあるという、大原則から外れたモデルになってしまう。
ただし意匠設計用のツールとしては、ArchiCADのこの機能は問題ない。問題ないどころか便利な機能だ。柱ではありえないサイズの柱でも作ってしまうことができる。開口部を広げたいので、この柱を細くしようというようなオペレーションも「あり」だ。
2 Revitはデータベース
一方、構造モデル作成ツールとしてのRevitでの、柱や梁のサイズについての考え方は違う。 データベースとして柱や梁の情報を扱うと説明すると、分かりやすいだろうか?データベースとは次のような振る舞いをするということだ。
- 柱の符号と柱サイズの組み合わせが書かれたマスターテーブルを開いて、その中からC1を選び、そのサイズを変更するとモデル中のC1柱はすべてサイズが変わる。
- ある柱のサイズを変えたいときは、選択した柱のタイプをC1から、サイズの違うC2などに変更する。
これがデータベースとしての構造モデルだ。ただし柱のサイズをインスタンス・プロパティとして、ArchiCADのように選択して自由に変更するような使い方もできるが、構造設計ではそうはしない。
図の鉄筋コンクリート柱の場合、「コンクリート-長方形-柱」という「ファミリ」があり、そのファミリに柱幅と柱せいの異なる1C1、2C1などのタイプがある。構造モデルを作成するときは、いつもこのファミリとタイプ名を意識しておく必要がある。
表にすると次のようになる。
ファミリ-タイプとタイプパラメータの関係
ファミリ名 | タイプ名 | パラメータ |
---|
コンクリート-長方形-柱 | 1C1 | b = 600 |
h = 600 |
1C2 | b = 600 |
h = 600 |
2C1 | b = 600 |
h = 600 |
2C2 | b = 600 |
h = 600 |
3C1 | b = 600 |
h = 600 |
3C2 | b = 600 |
h = 600 |
Revitでタイプのパラメータを表示、ここで大きさを変えるとすべての3C1柱の大きさが変わる
タイプ名さえきちんと使い分けていれば、サイズはあとで決めるという方法も取れる。とりあえず柱も梁もあるサイズでタイプ名だけ決めて入力しておいて、あとから意匠との兼ね合いを考えながらそれぞれのタイプのサイズを決めていく。構造設計モデルを作るには、モデル全体がデータベースと考えて、ファミリ、タイプ、インスタンスをどう使うかという設計をしっかりしておくのがポイントだ。
既定のテンプレートを使うならRUG(Autodesk Revit ユーザ会)が出している「Revit Structure用構造ファミリ・テンプレート」を使うのがいいだろう。RUGホームページからダウンロードすることができる。データベースとして使えるしっかりした構成のテンプレートになっている。
3 Revit施工図ツールを使う
次に施工図モデルを取り上げる。施工図は意匠や構造より実際に建てられる建物により近づいたモデルだ。意匠や構造のモデルを3次元で作れるのだから、そのまま施工図モデルにすればいいだろうと思われるかもしれないが、なかなかそうはいかない。
ここではオートデスク社が出しているRevit用の「Revit施工図ツール」を取り上げて施工図モデルを考えてみよう。ただしこの「Revit施工図ツール」、サブスクリプション契約を結んでいるユーザでないとダウンロードできない。
余談ではあるが、オートデスク社はこのサブスクリプション契約による特典をどんどん増やしてきている。クラウドを使った構造解析や、クラウドレンダリングなども、サブスクリプションユーザ向けに提供されている。ユーザの間で賛否はあるが、サブスクリプション契約が「お得」になっていることは間違いない。
この「Revit施工図ツール」には「増し打ち」「開口部欠き込み」「施工図寸法」の3つのツールが「Revit施工図ツール」として用意されている。
それぞれの使い方を簡単に紹介して、施工図モデルを作ることの難しさの題材とさせてもらおう。
4 Revitで増し打ち
先に同じ符号の柱や梁は同じサイズだと書いた。だがこれは構造設計の場合で、現場で施工するときはそうはいかない。壁の仕上げのために、柱にもコンクリートを足す必要があったりする。これを「ふかす」と言い、ふかした部分を増し打ちコンクリートと言う。
「Revit施工図ツール」の「増し打ち」で柱や梁、壁を選択して増し打ちをおこなうことができる。
ここでは図のように壁の仕上げに合わすために、柱の2辺に50mmの増し打ちをおこなう。増し打ち前の柱、ダイアログボックスでの設定、増し打ち後の柱の平面図を次に示す。
増し打ち前の隅柱
増し打ち後の隅柱
増し打ちの設定
このツールが使いやすいかどうかは別にして、施工モデルを作成するということはこのように、仕上げなどを考慮して作業を積み重ねていくということだ。施工についての知識が要求される。誰でも簡単にできることではない。