2022年 8月10日公開

【連載終了】読んで役立つ記事・コラム

不確実性の時代とリスクマネジメント

執筆:マネジメントリーダーWEB編集部

働き方の多様化が浸透するとともに経営リスクも複雑化し、先の見通せない時代になってきました。不確実性の時代といわれる現在、リスクから企業を守るための方法を考察します。

1. リスクマネジメントの基本

不確実性の時代のマネジメントを語る前に、リスクマネジメントの基本を整理します。企業を取り巻く環境には、このように無数のリスクが存在します。

図でも示した通り、リスクは大別すると自然災害のように回避することが困難なリスクと人的原因など回避可能なリスクの2通りあります。

  • リスクマネジメント:リスクを回避するための行動
  • クライシスマネジメント:発生したリスクを低減するための行動

さらに従来の企業リスクの定義は、以下の4通りに分類されています。

リスク回避リスクを発生させないように抑える
情報セキュリティであれば、情報漏えいやハッキングなどのリスクを回避するために強固なセキュリティ体制・システムを構築し、厳格な運用を行うことです。
リスク低減リスクが発生してもその影響を低く抑え、素早く回復する
耐震・防火設備の設置や非常電源などのシステムのバックアップ体制、安否確認システムの運用など、罹災(りさい)時に被害を最小限に食い止め、人と設備の復旧をサポートする体制です。
リスク移転保険など、自社だけで全てのリスクを負わないように損失を分散しておく
保険では災害で発生した損失を補塡(ほてん)します。通常の取引では「契約」が相当します。双方の企業間で、契約不履行の場合の損失負担割合などを定めます。
リスク受容リスクの存在を受け入れる
例えば、コロナウイルスの感染防止対策の場合、感染リスクの認識はあっても、予防のために毎日PCR検査を必須とする企業は医療機関などごく一部だけです。ただし、社内に感染者が発生した場合は、感染確率と社内外への影響度が高まりますので、厳重な対処をすることになります。

リスクを完全に避けて、企業活動を行うことはできません。そのため、リスクを発生させない、万が一発生してもリスクによる損失を最小限にとどめることが経営マネジメントの基本となります。

リスクマネジメントの流れ

企業活動で直面するリスクは、社会的に大きな影響をおよぼすものから、担当者個人の不祥事など、規模も内容も千差万別です。これらの無数のリスクを予想し対処することは困難です。しかし、リスクに対する基本的な備えをしていくことで、リスクに気づきやすく、すぐに対処できる体制を構築することが可能となります。

リスクマネジメントは、事業継続の根幹となる手法となります。従業員とその家族、企業を支えるステークホルダー全てにリスクマネジメント対応についての理解を得ることが重要なポイントです。リスクマネジメントを適切に実施し、企業および従業員を守ることが周囲の信頼獲得につながります。

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2. 不確実性の時代とリスクマネジメント

2020年からのコロナウイルスによる世界的なパンデミック(世界的大流行)以降、将来の予想が困難な状況を「不確実性の時代」あるいは「VUCA(ブーカ)」と呼ぶようになりました。

VUCA=予測困難で想定外のことが突然発生する時代

  • Volatility(変動性)
  • Uncertainty(不確実性)
  • Complexity(複雑性)
  • Ambiguity(曖昧性)

例えば、コロナ禍というリスクについては、インフルエンザなどの感染症によるパンデミックを予想し対策を考えていた企業は多いと思います。しかし、外出禁止措置によるテレワークに対応していた企業は少数でした。また、国際的に原材料の生産や流通量の低下など、需要と供給のバランスが崩れるなど、経済的な打撃も大きくなっています。このように広域かつ長期的な影響まで予測することは困難です。世界の誰もが初めて経験するリスクでした。

これからのリスクマネジメント

このように一歩先が不透明な時代においてリスクマネジメントを行うためには、以下の要素が重要となります。

  • リスクに対しての備え
    企業活動=リスクの発生と認識して、常にリスクに敏感になり素早く対処する必要があります。
    社内:平時から全従業員がリスクを認識し、回避するためのコンプライアンス(法令順守)教育をはじめ、ルールの周知徹底を実践します。
    社外:技術の進化と外部環境の変化の兆しをとらえるために、社外のネットワーク(コミュニケーション)を強化することがリスクの発見と対処に効果を発揮します。
  • リスクの可視化
    リスク発生の原因はマイナス要素だけではなく、プラス要素でも起こります。例えば、製品が爆発的な売り上げとなり、一時的な混乱やクレームが発生することもあります。その対応を間違えるとせっかく商品がヒットしたのに損失となることもあります。

あらゆるリスクについて、発生確率と影響度(金額算定)をすることで、具体的な損失額を把握しておくと、対処するための予算措置を素早く行うことができます。例えば、「大地震が起きるから……」だけの単純な予測だけで裏付けや根拠がないと「気のせい」「思い込み」などと受け取られ、理解や共感を得ることが困難です。数値化することで説得力と危機感が高まります。

  • 経営トップの素早い判断
    企業のIT化・DX化の進展により、情報伝達スピードは急速に速まっています。新しい動きが次々を生まれていく中で、経営者は正しい情報の取捨選択を素早く行い、臨機応変に対処していくことが求められます。そのために専門家やブレーンを組織し、客観的な意見を求めることも必要です。

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3. リスクマネジメントの実践で収益を得る

リスクの回避や低減することがリスクマネジメントとお伝えしてきましたが、最新のリスクマネジメントは収益を得る手法として活用されているのです。社会的に大きな影響を持つリスクの発生は、新たな需要を生み出す場合もあります。

例えば、パンデミックでは衛生に配慮した商品を開発し、販売する企業が続出しています。この流れで大きなテーマとなっているのが「SDGs」です。この活動は、温暖化による気候変動を阻止し、持続可能な社会を作ることが目的です。つまり、地球環境破壊という課題に即したリスク対策なのです。単にリスクを回避・低減するだけでなく、この活動を大きくするためにCo2削減など、持続可能な環境作りに対応した新商品やサービスの開発・販売も視野に入れていることが新しい特徴になります。

つまり、「リスクマネジメント=事業開発・収益拡大の機会」となっているのです。

これまでのリスクマネジメントは損失を出さない、軽減することが目的でしたが、これからはもう一歩踏み出して、新たな収益を生みだす事業創出機会ととらえてみてはいかがでしょうか。

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4. 災害、不祥事、IT障害などに備える経営管理支援サービス

事業継続計画(BCP)策定支援サービス

災害、伝染病流行、風評、不祥事、IT障害などからビジネスを維持するための経営管理として、BCMS(Business Continuity Management System:事業継続管理システム)が注目されています。大塚商会では、BCP(事業継続計画)の策定、BCM(事業継続管理)、BCMS(事業継続管理システム)などの構築と運用を支援するサービスをご提供します。BCMに関しては、国際的に利用されている英国規格BS25999を基に、各省庁のガイドラインなど日本固有の事業環境を考慮したコンサルティングサービスになっています。

事業継続計画(BCP)策定支援サービス

  • *本記事中に記載の肩書や数値、社名、固有名詞、掲載の図版内容などは公開時点のものです。

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