2012年12月

実務者のためのCAD読本

意匠図モデルを作成する【BIMアプリケーションの使いこなし ~適材適所の使いこなし~/第1回】

建築系CAD 講師:鈴木裕二

シリーズ記事

1.BIMアプリケーションを使いこなすとは?

今回から「BIM アプリケーションの使いこなし」をテーマとした連載を始める。BIMアプリケーションを、それまで使っていたCADのつもりで同じように使おうとしてもうまくいかないことが多い。「こんなこともできないの」とイライラしたり、「何から始めたらいいの」と当惑したりということになりかねない。身近にすぐれた先輩がいたり、会社としてのBIM使用ガイドラインがあったりすれば別だが、一人でBIMアプリケーションを使い始めるのはなかなか難しい。

そこで「BIM アプリケーションの使いこなし」をテーマに、こんなことを書こうと今決めている。ただし書き始めるとすぐ脱線してしまうことが多いのでご容赦されたい。

  1. 意匠図モデルを作成する

    意匠図モデルとはデザインモデルだ。建物の設計意図を表現できるデザインモデルを、BIMアプリケーションを使って作成する。ただし操作方法の入門ではなくBIMでの基本的な考え方を、主にArchiCAD を使って解説する。Revitとの違いも紹介したい。

  2. 構造、施工モデルを作成する

    構造、施工のモデルでは間違いがあってはいけないのはもちろんだが、あいまいな表現も許されない。ここでは Revit で構造、施工のモデルを作成してみる。

  3. IFC を使ってデータ互換

    IFC(Industry Foundation Classes)はBIMのDXFだ。どんな BIM アプリケーションでも IFC が共通フォーマットとしてデータのやりとりに使える。と言いたいところだが、なかなかそうはいかない。データのやりとりにコツも必要になる。

  4. ArchiCAD、Revit と AutoCAD の連携

    適材適所に BIM アプリケーションを使った例として、2D CAD を使った例を紹介する。BIM 時代にはもう2D CAD はいらないか? 答えは NO だ。うまく組み合わせて、単なる1+1=2以上の効果を生みたい。

  5. BIMアプリから解析へ(応用編)

    BIM アプリケーションを使った解析についての応用編だ。エネルギーの解析、熱流体解析、構造強度の解析、たくさんの例を紹介したい。

2.BIMアプリケーションと3D CADとは違う

静岡県の清水にある御穂神社本殿修復工事にあたり、コンピュータで本殿をモデリングするという依頼が舞い込んできた。

神社建築に詳しい人に聞いてみると、屋根の反りがポイントらしい。3Dモデリングに詳しい仲間に聞いてみると「ArchiCADでできるよ」「SketchUpならどんな形でも作れる」などさまざまだ。

最終的に筆者が選んだ道具はAutoCADだ。RevitやArchiCADでもできなくはないがちょっとややこしい。3次元の自由形状のいい作成ツールがなかった。SketchUpやAutoCADにはそれがあるので、複雑な形も作れる。AutoCADなら2次元の図面を利用して3次元のモデルにすることもできる。ということでAutoCADになった。

AutoCADでは3Dソリッドやサーフェスという要素を使ってモデルを作成した。木質のマテリアルが表面に貼ってあっても、それは「見映え」だけで、屋根も壁も金物も3Dソリッドだ。

それに対してBIMアプリケーションでは屋根は屋根、壁は壁というオブジェクトだ。
屋根を作る、壁を作るというコマンドやツールがそれぞれ用意され、それぞれ独自のプロパティ(属性、パラメータ)がある。

ここでは単純に壁作成コマンド(ツール)が用意されているアプリケーションをBIMアプリケーションと呼ぶ。つまりSketchUpとAutoCADはBIMアプリケーションの範疇からは外れ、単なる3D CADということになる。 勘違いされることが多いのだが、3D CADとしてBIMアプリケーションの方が万能かと言うとそうでもない。先の御穂神社本殿の屋根はBIMアプリケーションで、「屋根」として作成はできなかった。反りがある変形した入母屋屋根は、屋根としてのパラメータの調整では表現できないのだ。そういう場合は汎用の3D CADの方が「使える」のだ。

図1 SketchUpでモデリングした御穂神社本殿

図2 AutoCADでモデリングした御穂神社本殿

3.ArchiCADで壁(1)

図3はある「子育てセンター」の平面図だ。この建物をBIMアプリケーションで設計する手順を考えてみよう。

図3 「子育てセンター」平面図

最初の打ち合わせのための設計段階は壁と建具の配置から始まる。平面図の表示で壁ツールを使い、ここからここまでと指定して壁をかき、窓ツールで窓を配置する。オペレータの感覚では壁はここからここまでと指定するので「かく」で、窓はここと指示するので「配置する・置く」だ。
全く何の設定もなしで図4左側のような平面図が、数回のマウス操作で作られる。BIMアプリケーションらしく縮尺によってその表現が変わるようになっている。

そして[F3]キーで図4右側のような3次元表示に切り替わり、[F2]キーで2次元の平面図表示に戻る。なんと分かりやすい、「3」が3次元で「2」が2次元だ、と細かいことに感心してしまう。

図4 平面図で壁と窓を配置、三次元と重ねて表示

4.ArchiCADで壁(2)

どんな建物でも使えそうな壁厚200、高さ3000の壁に引き違いの窓がある建物が何の設定もなしで作られた。打ち合わせ用の図面としてはそれでいいのだが、もう少し詳細な設計になってくるとこれでは困る。

次の図5はこの建物の矩計図とその一部を拡大したものだ。

図5 矩計(かなばかり)図

この矩計図には細かく壁の仕様が記入してある。この壁をBIMアプリケーションでモデリングする。とても難しそうだが、そうでもない。「複合構造」のダイアログボックスで設定するだけだ。

いくつかの基本的な構造は用意されているのでそれらを変更して使う。今回はスチールハウスなので、2x4外断熱の壁を応用して作成した。

図6 「複合構造」で壁の設定

作成した建物モデルにこの壁を適用する。窓まわりは図7のように表現される。

ガクブチはどこへ行った? とか言いたいことも少しあるが、何もしないデフォルト状態でここまで表現できたのでよしとしよう。

図7 平面図での窓端部の表現(S=1/50)