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2014年11月 1日公開
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前回は、寸法公差を記入する際のルールや、2部品間の優先度を明確にするために寸法公差を使うことを紹介した。寸法公差の幅がおおむね0.1mm以上の場合は、基準寸法に対してプラスマイナス表記の均等振り分け公差や、プラスマイナスのどちらかに割り振った片側公差を使う場合が多い。しかし、公差の数値が100分台(0.01~0.09mm)や1,000分台(0.001~0.009mm)とかなり精度が高い場合は、寸法公差をどのように決め、表記すればよいだろうか?より精度の高い寸法公差が必要な場合に、公差域クラスの記号を使うことができる。
この公差域クラスの記号は、穴と軸の寸法公差を記号で表記する決め事である。公差域クラスの記号によって寸法公差が標準化されると、切削工具や材料、ゲージなどは世界的に共通化が図れるからである。
公差域クラスの記号は、次に示すような円筒軸と円筒穴以外に、溝幅や角柱幅にも使用することができる(画像1)。
画像1
公差域クラスの記号は、基準寸法(ノミナル寸法とも言う)に続けて、アルファベットと数値を組み合わせたもので表現する。
穴径(あるいは溝幅)に公差域クラスの記号を指示する場合、大文字のアルファベットを使用する(画像2)。
画像2
軸径(あるいは角幅)に公差域クラスの記号を指示する場合、小文字のアルファベットを使用する(画像3)。
画像3
それでは、公差域クラスの記号の意味について、解説しよう。
アルファベットは、寸法数値で示した基準寸法からの偏りを表している。下のイメージ図(画像4)より、穴径に「H」が指示される場合、基準寸法からプラス側に公差が存在し、「K」が指示される場合は、基準寸法に対してマイナス側に公差が存在することが分かる。穴と軸とでは、数値は同じ結果になるが、プラスマイナスが逆転するという特徴がある。
画像4
アルファベットに続く数値は、公差の幅を表している。この数値はIT公差等級表により決められるもので、数値が大きくなるほど公差の幅が大きくなる傾向があることが分かる。IT公差等級とは、ISOが規定する世界的に利用される公差の等級で、ITはInternational Toleranceの略である。
IT公差等級表の一部を次に示す(画像5)。横軸にあるIT公差等級の数値が大きくなるにつれて、下段に示した数値が大きくなっていることが分かる。なお、ランクA~Dの数値の単位はμm(マイクロメートル)である。
精度の高い寸法公差を設定する場合、どの程度の公差幅が経済的なのか、どの程度の公差幅だと加工が難しくなるのか、目安がないと設計が前へ進まない。このような場合にも、IT公差等級表を参考にすることができる。
画像5
穴の公差域クラスを表した表の一部を次に示す(画像6)。穴の場合、Jsが基準寸法に対して、公差がプラスマイナス均等に割り振られ、アルファベットのAに近くなるほど、公差の領域がプラス側に偏っていることが分かる。同様に、下記の表では省略しているが、JsよりZに近くなるほど公差の領域はマイナス側に偏ることになる。なお、この数値の単位はμmである。
画像6
それでは、穴の公差域クラスの表の読み取り方を確認しよう。例えば、「φ10H7」と図面に記載されている場合、どのくらいの寸法公差になるであろうか?上の表(画像6)の赤い枠の部分を確認することによって、寸法公差は「0~+15μm」であることが分かる。これをmmの単位に直して寸法表記すると次のようになる(画像7)。
画像7
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